第二話-炎武家ヴォード-
ヴォード・ガンドゥス、35歳。2つほど先の大陸ウルカニス出身で修行の旅の途中。ウルカニスは中央に大きな火山を称える大陸で大きさはウィンダリアの1/3程度。火山の麓に村がひとつあり、そこでは火の魔法を纏って戦う武術『炎武』を使う武闘家たちが暮らしている。村長兼師匠が治め日々厳しい修行をしているという。ヴォードさんは、村のNo.2で将来の村長候補の一人らしい。力試しと、自分の力の意味を知るべく無理を通しての出立だったそうだ。
(いや~カッコよく言ってるけど、仕事放棄しての自分探しの旅とか、ちょっとないわ~)
と、こっそり思っていたが、俺たち二人よりもはるかに強いのは間違いない。かなり頼りになる。しかし…
「幹部候補生は断ったってことですか?」
優勝が現隊長だったので、準優勝者に繰り下げになったはずだ。俺たちに着いてくるということは、騎士団へ入団はしないということだ。
「いや、数多の武芸自慢が集まる大会だ。まさか入賞出来るとは思ってなくてな。純粋に力比べのつもりでの参加だったから…」
井の中の蛙、猿山の大将、そんな風に自分を戒めていたのだろう。しかし、彼のその井戸は広大で、山も雄大だった。しかし、自分の強さを知ってなお謙虚。いや、少なくとも二人以上は自分より上がいるのだ。
(油断大敵、か)
ルティナの顔が頭を過る…
「俺はいいと思うよ」
ソーマが言う。
「戦ったからわかる。この人は信用、いや信頼出来る人だと思う。それに、俺は上には行かないから…」
そうなのかと少し驚くヴォードと、やっぱりと悲しそうな顔をする女子二人。一瞬の静けさ。このまま静けさが続くと、どんどん沈んでしまいそうだった。俺はすぐに
「それじゃ決定だな。よろしく、ヴォードさん」
と声を出して、握手を求めた。皆、気持ちを切り替えて笑顔で握手と、あらためて自己紹介をする。ムードメーカーは柄じゃないが、気付ける人間が率先してやらねばチームが崩れる。自己犠牲なんて大層なもんじゃない。なんとなくイヤだという個人の気分で、世界の命運が… という天秤にかけるまでもない問答だ。
斯くして、新たな仲間を加えた俺たちは、テルムスの町へと向かうのであった。




