第八話-和解と謁見と-
その後、ソーマも準決勝で敗退。相手は武道が盛んな国の一番の使い手とかで、どんなにスピードを上げて手数を増やしても、全て見切られてしまったらしい。
その人とレオンの決勝は、過去最大の盛り上がりだったそうだ。レオンは盾も使って守りを固め、雷魔法で牽制しつつ自身の反応速度も強化していたらしい。
(やっぱり手抜きじゃねーかよ…)
相手も炎魔法を体に纏い一進一退の攻防…
「まだまだぜんぜん及ばなかったね…」
ひととおり話し終わると、ソーマがポツリと呟いた。いつもは「いいこ」を演じているソーマも、暴れたい時はあるのだ。こいつだって、レオンにぶつけたい感情のひとつもあったことだろう。
「ごめんな…」
自然と出てしまった。ソーマは立ち上がり、俺の頭をわしづかみにし「行くよ」と軽くくしゃっとした。表彰式はちゃんと出席しないと、な。
「3位、ソーマ、そしてカルム」
決定戦はなく3位は二人。戦う気力は既になかったので助かった。声援が上がり、ありがとうと客席に手を振る。ルティナはいない。アリシアとケイトにしっかりと手を振る。もうお説教は勘弁である。
降壇して直後「ソーマ殿!」と呼び止められる。準優勝した… たしか…
「某、ヴォードと申します。試合を見せていただきましたが、まだ若いのに素晴らしい。お二人は同郷とか。お時間よろしいだろうか?」
2m近くある巨体、アグラス様と同じかそれ以上の体躯で、子供のように目を輝かせ、低音ボイスで大声で語りかけてくる。純粋な武芸オタクなのだろう。天パ気味の黒い長髪を後ろでざっくり束ねていて、肌は日焼けで浅黒い。白い歯が一際美しく見える。
「ヴォードさん」
俺たちが気圧されていると、ヴォードの後ろからレオンが呼び止める。
「先ずは王との謁見ですよ。彼らも王と面会予定があるので、お話はその後でお願いしますね」
やや呆れ気味の顔で言った。やっぱりそういうタイプの人物らしい。「助かった」と小声で言うと、少しびっくりした顔をして近寄って来て、ホッとしたような笑顔で言った。
「少しは楽になったか?」
もはや怒りも悔しさもない。憑き物が取れたような気分だ。結局は、ただの八つ当たりだったのだ。その強さと優しさに甘えて、ずいぶん長い八つ当たりになってしまっていた。
「ちょっとはな」
少しだけ強がって言ってみた。ソーマが肩を叩く。レオンが背中を叩く。俺も真ん中に立ち、二人の背中を叩く。
あれから三年。やっと一歩進めた気がする。
「待たせたな」
ガルド王が言った。入賞したことで、王の間で王から直々にお褒めの言葉を頂けることになったのだ。本来は賞品の授与とスカウトのためである。
今年で55才だったか。先王の病死で若くして王となるも、直ぐに能力を開花させ国を強くしてきた傑物だ。武術大会を開くくらいに戦いも好きで、武芸の才能も高い。(アグラス様とタイマンはれるとかなんとか)
すっかり白髪をなった髪をそのまま肩甲骨辺りまで伸ばしている。髭は嫌いらしくきれいに剃っている。
「そちらが天界の使者で、そちらが救世主だな?」
見定めようとしているのか鋭い眼光だ。ごくりと唾を飲むと
「あぁ、すまん。最近、視力が落ちてきてな」
と笑いだす。こちらは笑うに笑えない。周りの従者たちは呆れ顔。もういい歳だというのにやんちゃは変わらないらしい。そこも人気のひとつではあるのだが。
「で、結論から先に言うとな、転移装置は動かせない!」
「はぁ!?」俺たち四人は同時に叫んだ




