第七話-カルムvsレオン-
二日酔いの俺に躊躇なく説教する三人。それは朝食中も続いた。俺は食べることが出来なかった。お説教のせいもあるが、二日酔いのせいか昨夜のことも胃に重くのし掛かっているようだった。だが、それは誰にも話せない。
【一日目】
予選はまったく問題なかった。グループ分けのメンバーも、ある程度調整があったのかもしれない。番狂わせはなく、下馬評通りに勝ち上がる。アリシアに、今夜は祝勝会と決勝トーナメントの必勝祈願の会だから必ず出席、と念を押される。それを聞きながら辺りを見回す。客席を見るかぎりルティナはいないようだった。二日酔いで暴れたせいか、まだ脳がふらつく。気持ちが悪い。そんな俺を気遣ってか怒ってか、夕食は禁酒命令が出てしまった。頭が冴えないまま、一日目が終了した。
【二日目】
「オッラーッ!!」
俺の全力の攻撃を、緩急つけて、フェイント入れても防がれる。隙を突いたはずの攻撃すらも、レオンは剣ひとつで捌いている。
トーナメント準決勝。俺はレオンと戦っている。順当に勝ち上がり、因縁にケリをつけるべく挑んだ試合だった。全部ぶつけて、勝てないまでもいい試合をして、イヤミのひとつでも言ってやろうと思っていた。
(クソ… クソがっ!!)
平常心で挑もうが、感情を乗せようが、俺の攻撃の質に大きな差はなく、ただただレオンとの実力に大きな差があった。
(盾も、魔法も使ってねーのに! それでもこれかよっ!)
「ガギンッ!」
こちらの渾身の突きを正面に構えた剣の刃で受け止めた。こちらの動きを、力の流れを完璧に読んでいなければ、そしてそれに合わせて動くという並外れた反射神経がなければ出来ない芸当だ。怯む俺の隙を突き、半身をずらし、棒に刃を滑らせて一撃を打ち込む。そこで試合は終了だった。真正面から袈裟に撃ち込まれ、そのまま地面に叩きつけられる。衝撃で体が痺れている。武器はどこかに飛んでいってしまった。完敗だ…
「盾も魔法も、使わなかったんじゃない。使えなかったんだ。小細工は入れず剣一本で集中して向かわねばやられると思ったからだ」
試合後、そう言って俺を評価していたらしい。しかし俺の耳には入らなかった。入れたくもなかった。
その後の試合も見ずに、俺は控室で空を眺めていた。




