表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールドリンク  作者: さばみそ
第二章-湖の街ルベリア-
13/95

第五話-和解と密談-

教会の応接室へと戻ると、そちらも話は終わっていたようで静かに座って帰りを待っていた。ケイトが椅子から降りてアリシアの前に立つ。お互いに覚悟を決めた顔。一瞬が沈黙の後にケイトが言った。


「あの、よろしくお願いします!」


深々と一礼するケイトに、予想外といった様子でアワアワするアリシア。あまりの慌てぶりに皆が笑う。

(ソーマが差し金だな)

俺も笑いながらアリシアの背中をポンと叩いてやる。ちょっとだけ流れた涙を拭いて握手した。先程とは違う笑顔で包まれた。


その夜、俺たちは夕食をご馳走になる。旅立つなら早い方がよさそうだと、明日には王都へ向かうことになっていた。ケイトの好物だというエビのフリッターがメインに並ぶ。この日は久しぶりに笑顔と涙でいっぱいの一日になった。



深夜、俺たちは状況の擦り合わせを行っていた。楽しい会食中にわざわざする内容ではなかったからだ。

「なるほどね。やっぱり正式な命令で動いていたわけではなかったんだ。でも、思っていたより深刻な状況になってる可能性が高いね…」

テーブルの上の小さなランプの光は、より深刻そうな雰囲気をかもし出す。

「で、そっちは? そもそも、教会はケイトがそうだと知っていた感じだったが…」

声が漏れぬよう響かぬよう配慮して話す。

「教会はね、救世主の魂を感知する魔法具を所有しているらしい。12年前に中央教会所有の魔法具が作動。その反応を辿りルベリアへとやって来たそうだ。その時の中央からの使者が現司教のハルミヤさん。」

救世主の生まれ変わりと教えられ育てられたケイト、救世主として教育を義務付けられたハルミヤ。互いに他人に押し付けられた擬似親子のような人生。しかし、二人の関係は本当の親子のように信頼し合っているようだった。

「いい人たち、なんだな…」

どんな運命でも、出会った人によって救いがある。彼女たちからもそれを感じ取ることが出来て心穏やかになる。

「ん? ということは、最低でも二つあるってことか? その魔法具は」

アリシアもなんらかの装置で知ったと言っていた。この分だと下層も所有していそうだ。中層では教会が秘密裏に『正しく』育てる方針を取っていたようだが、上層は存在の利用を考えるものもいた。下層はどうだろうか…

「いろいろ不安要素はあるけど、とりあえず向かうのは上だから大丈夫じゃないかな。ここの王様も政治利用するような人じゃないし。」

その通りだった。関係のないことで考え過ぎても仕方ない。夕食で進められた酒も効いてきたようで、眠気が出てきていた。あくびをひとつする。

問題は2つ、1つは追っ手だ(この国は飲酒は18才から認められているので問題ない)。ルティナだけならなんとかなるだろうが、なぜ彼女が追ってこれたのかも気になるところ。たまたま知ったのか、ロディエル側にも魔法具があるのか。どちらにしろ、ルティナが他の誰かに話していれば、追加がくる可能性は高い。

そして、もうひとつの問題は上への行き方だ。王が転送装置の起動を許可するか、装置は動くのか、そもそも現存しているのか… こちらの方は、それこそ考えても仕方ないことだった。当面は追っ手への対処が優先事項。増員があった場合も考慮して立ち回りの段取りをする。最悪の場合、命の奪い合いになる…

眠気が増してきた。覚悟を決め、俺たちは眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ