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黒猫は復讐の道を歩く  〜世界唯一の一文字能力者〜  作者: 冬月ゆず
第一章 日常と崩壊
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子猫 異変


 八月の前半。


 時雨たちは夏休みの真っ最中だった。


 特にこれといった難しい宿題もなく,自由研究もアサガオの観察日記と時雨の学年は決まっているため後は毎日コツコツとその課題をこなすだけになっていた。


 時雨の兄たちはそれぞれの課題の多さに嘆いていたが,家の方針で夏休みの中間地点までに終わらせることが決まっていてあと少しで終わるところにまできていた。


 そして今,時雨たち三人は家の庭で時雨の父親にいつものように特訓をつけてもらっている最中だった。


 今日は,いとこの一希の両親も家に来ていて,時雨の母・アレクシアと一緒に談笑しながら庭の四人を眺めていた。




 子供サイズの小さな木刀を振り回し,俺は父さんに向かって打ち込んだ。


 けど,やっぱり防がれてしまう。


 それでも,防がれたからといっても関係なく何度も打ち込む。


 「そう,その調子だ。時雨。たとえ相手に当たらなくても諦めずに打ち込め!」


 父さんはそうやって,どうすればいいかを言いながら俺の振るう木刀に対処する。


 数分してたあと,



 「よし,時雨はここまで。休憩として水分補給しなさい。次は一希。準備をしておきなさい。」


と,父さんが言った。


 俺は疲れて荒れている呼吸を落ち着かせながらふらふらと母さんたちの場所に向かった。


 

 母さんが「お疲れ様。はい,麦茶。」と,いって麦茶の入ったコップを渡してきた。


 俺はその麦茶をいっきに飲み干す。


 「ぷはぁ。」


 すると飲み干したタイミングで叔母さんが話しかけてきた。


 「時雨くん,お疲れ様。スイカ食べる?」


 「いる!」


 俺がそう言うと,「はい,どうぞ。」と,いって切り分けられたスイカの一切れを渡してくれた。


 しゃく


 一口食べてみる。

 すると,みずみずしい甘さが口いっぱいに広がった。

 口の中に入ってしまった種は母さんがあらかじめ用意していたゴミ袋の中にいれる。


 しゃくしゃく


 スイカを食べながら俺はかず兄が父さんと打ち合ってるのを眺めた。


 やっぱり俺より打ち出す速さが早い…。


 (やっぱ,かず兄,すごいな。)


 俺とは比べ物にならない速さと回数で何度も攻め込んでいる。


 少し悔しく感じながらスイカを食べ続け,食べ終わった頃にかず兄の番が終わった。


 汗を大量に流しながらこっちに来る。


 「あ,お茶〜。」


 かず兄がまるで砂漠の中水を求めるかのように手を伸ばしてきた。


 「かず兄,はい,むぎちゃ。」


 俺はそういって,かず兄にコップいっぱい入ったお茶を渡した。


 「お,時雨ありがと。」


 かず兄はそう言ってコップを受け取ると一気飲みして飲み干した。


 今度はゆぅ兄の番。


 コップを置いてスイカを食べ始めたかず兄と一緒にゆぅ兄と父さんが打ち合ってるのを眺める。


 しばらく二人のことを見ていると,父さんを呼ぶ声がした。


 「神崎さーん!」


 舟場さんだ。


 それによって,ゆぅ兄と父さんの打ち合いは一時中止。


 ゆぅ兄は少し不満そうだ,舟場さんが来たから仕方がない。


 しぶしぶやめて,お茶を飲みに来た。


 庭に舟場さんが来る。


 「あ,神崎さん。やっぱりここにいたんですね。」


 母さんたちに「こんにちは。突然すみません。」と,軽くお辞儀をして,父さんの前に来る。


 「おう。舟場。今日は出したんだ。」


 父さんが舟場さんにそうきくと,舟場さんは話し出した。


 「実は聞きたいことがあって…。」


 長い話を要約すると,俺たちの住むこの第八区でここ二ヶ月全く魔物が出てないらしい。

 それはあり得ないことだった。


 普通は一ヶ月に最低でも五匹は出てくる。


 それが,この地区だけゼロ。


 出ないことはいいことなのだが,その原因を知りたいらしい。


 「…と言うわけなのですが,何か心当たりはありませんか?」


 父さんはしばらく考えたあと,口を開いた。


 「…いや…。ないな。俺もこのことは初めてだ。」


 「そうですか。」


 「悪いな…。似たようなものがないかと必死に記憶の中探してみたんだかなかった。」


 「そうですよね…。」


 舟場さんは目を軽く伏せる。


 「…なぁ,舟場。」


 父さんが何かを感じたのか舟場さんに声をかける。


 「はい,何でしょう?」


 「…なんか嫌な予感がする。」


 「嫌な予感…ですか…?」


 せんばさんが首を傾げた。


 「あぁ。ただ,確証があるわけでもないし,あくまでも勘なんだが…。」


 「………。」


 舟場さんは目を見開いて父さんを見る。

 そのことに父さんはハッと気づいたような顔をして,


 「まぁ,あまり気にしないでくれ。ただそんな予感がするだけだ。」


と,煙に撒くように話を終わらせた。


 けど,その場の空気はいつもより暗いままだった。

せんばさん が 舟場さん と時雨のなかで変化。

時雨が舟場さんの名前の漢字を覚えました。

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