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黒猫は復讐の道を歩く  〜世界唯一の一文字能力者〜  作者: 冬月ゆず
第一章 日常と崩壊
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子猫 七歳の時①


 一年が経った。


 時雨は小学二年生となった。

 時雨の兄の結城は小学校を卒業して,中学校に通うことになったため,時雨はいとこの小学六年生になった一希と二人で学校に通うことになった。


 一つ学年が上がっていいことがあった。


 それは,クラス替えで,時雨をいじめるりょうが別のクラスになったことだ。


 基本的に,他のクラスに入ることは暗黙の了解で禁止されている。


 だから,時雨がうけるいじめの数がぐんと減ったのだ。


 外のグランドで遊ぶ時も,最近の遊びのブームがドッチボールのおかげか,りょうが時雨に近づく機会もかなり減った。


 一年生だった頃と比べて,時雨は学校を楽しく過ごすことができるようになったのだった。



 家に帰ってからは,よく父親が特訓をしてくれるようになっていた。

 けど,特訓といっても,ほとんどが体力作りだ。


 流石に,結城や一希のように,試合形式で実戦のようにさせてくれることはないが,体の動かし方のコツや柔軟など教えてくれている。


 とにかく今は体を動かすときに変な癖がつかないように,基本的なことや,少しでも体力がつくように指示されている。


 今は,母親は仕事で,結城と一希はまだ学校だ。

 だから今家にいるのは,時雨と父親だけだった。


 今日もいつもと同じように,二人とも庭で特訓をしている。


 「そうだ,時雨,だいぶ腕にも力ついてきたな。」




 そう言って,父さんは喜びをあらわにする。


 確かに,数日前より棒が振りやすくなったけど,どうしても兄ちゃんたちと比べてひ弱に感じてしまう。


 そのことを察した父さんが,


 「大丈夫だ。時雨は兄ちゃんたちが始めた年齢よりもだいぶ早く始めたんだから。焦らなくても必ず強くなれる。」


と,言っておれの頭をくしゃくしゃと撫でる。


 「う,うん。」


 やっぱり,兄ちゃんたちと比べて自信はないけど父さんがそう言ってくれたのは素直に嬉しかった。



 ピーン,ポーン



 すると急に,家のアラームが鳴ったらしい。


 アラームの後に,


 「神崎さーん。」


と,聞き慣れた声が聞こえた。


 「おう。庭だ,庭。」


 父さんが玄関にいるであろう人に向かって,自分のいる場所を伝える。


 やがて,人の駆けつけてくる足音がして,ある人物が庭に顔を出した。


 「せんばさん!」


 おれはその人の名前を呼んだ。


 せんばさんは,父さんがDCOで働いていた時の部下だ。

 少しはねている寝癖に眼鏡をかけた男性だ。

 よく,家に来て,父さんに相談したり,愚痴を聞いてもらったりしている。


 「あぁ,時雨くん,こんにちは。今日も特訓かい?まだ小さいのにすごいね。」


 「ちぃさくないもん!」


 俺はぷくーと,頬を膨らませて不満を訴える。

 けど,その俺の態度にせんばさんは,微笑ましげに「そうか,それはすまなかったね。」と言うだけだった。むー。


 そんな時,


 「そうだ,すごいだろー。時雨はすごいだろ。さすが俺の子だろー。」


と,父さんが笑顔で舟場さんに言う。


 「神崎さん,親バカの情けない顔になってますよ。」


 せんばさんが少し呆れて言うと父さんは


 「仕方ないだろう。俺の時雨がシアに似て可愛いのに,俺みたいになると言ってるのだから。」


 その言葉にせんばさんはさらに呆れる。

 ちなみに父さんのいうシアとは,俺の母さんの名前だ。

 アレクシアという名前だけど,父さんは愛称でシアと呼んでいる。


 「DCOの人や,訓練学校の人たちが見られたら呆れてしまいますよ。」


 「ふっ。褒め言葉だな。」


 「………。」


 せんばさんは言葉をなくしたようだ。


 「せんばさん,どうしたの?また,ぐち?」


 俺がそう言うと,せんばさんは「あぁ。」と,行った後,口を開いた。


 「いいえ。…今日は愚痴ではなくてですね。というより私がいつも愚痴を聞いてもらってるように受けられてません?」


 「気のせいだろ。」


 せんばさんの言葉を父さんがぶったぎる。


 せんばさんは「はぁ。」と軽くため息をつくと,父さんに向かって言い放った。


 「今日は最近騒ぎになっている異能犯罪者についての注意喚起とそのことについて少しお話を…。」




 

続きます。

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