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黒猫は復讐の道を歩く  〜世界唯一の一文字能力者〜  作者: 冬月ゆず
第一章 日常と崩壊
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子猫 学校②

前回の続きです。


「おい,がいじん。」


 そう時雨に声をかけたのは,時雨と同じクラスの「りょうくん」と呼ばれる男の子だった。


 彼だと分かると時雨は,


 (げっ)


と,思った。


 時雨は彼のことが嫌いだった。

 理由はわからないが時雨に何度も嫌がらせをしてくるからだ。


 「おい,がいじん,むしすんな。」


 「……。」


 彼の言う「がいじん」とは,外人のことで時雨の容姿からきている。


 時雨の髪は父親譲の黒色だ。そこはまわりと変わらない。


 問題は時雨の目だ。


 …青いのだ。


 時雨の目は外国人の母親譲りで,ライトブルーの瞳をしている。

 顔の形も母親に似たのか,父親のような男らしさがなく,初対面の人に「女の子だ」と,紹介すればほとんどの人が信じるだろう。


 母親は,可愛いより綺麗な容姿をしているから,将来は…とママ友や保護者の間では期待されているが,学校という環境の中では目立ってしまって,どうしてもいじめの対象になるのだ。


 いじめといっても,このりょうくんがひとり時雨にしてるだけで,他の子は全くいじめをしてない。


 でも,りょうくんだけといっても,時雨にとってはかなり嫌なことだった。


 悪口を言うのは序の口,筆箱を取ったり,鉛筆で机やノートに落書きをしたり,ひどいときは暴力を振るったりしてくるのだ。


 もちろん,まわりや先生が何度も止めてくれるが,いっこうに辞める気配がない。


 正直,関わりたくない相手だ。


 「がいじん,なんかいえよ。」


 「…がいじんって,いわないで。」


 外人は,外国人への蔑称として使われる。

 人に向かって言ってはいけない言葉だ。


 それに加え,今回は時雨だけまわりとは違うと言っているようなものだ。

 時雨の母親も下に見ているようで,すごく腹が立つ言い方だ。


 「うるさい‼︎」


 時雨が反抗したことに腹を立てたりょうくんが怒鳴る。


 「がいじんはどっかいけ!」


 「……やだ。おれはがいじんじゃない。」


 「っ。このっ‼︎」


 すると,りょうくんは時雨の頬を殴りつけた。


 「っ。」


 急に殴りかかられて,時雨はグランドへと尻餅をつく。

 殴られてじんじんと痛む左の頬を押さえて,りょうくんの方を見上げるように見る。


 「おまえなんか,こうしてやる‼︎」


 そう言うと,りょうは時雨の頭を殴り始めた。

手で庇おうとすると,手に当たり手も痛くなってしまう。


 それでも,時雨はやり返そうとは思わなかった。


 母親から暴力はたとえ仕返しでもしてはいけないと言われてるからだ。


 『いい?時雨。何があっても,暴力はダメよ。自分から振るってもダメだし,やり返そうとしてもダメ。暴力を振るった瞬間,負けだと思いなさい。暴力を振るわない限り,母さんも,父さんも,時雨のことを庇うことができるからね。』


 母親の言葉は時雨の中に深く残っている。


 たとえ,どんなに痛くても,やり返してはいけない。

 やり返して,暴力を振るえば,時雨も同じような人間だと言われてもおかしくないからだ。


 涙が出そうになるのを堪えてると,


 「やめろ‼︎」


と,声がした。




まだ続きます。

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