わたしの記憶の1つ1つを、、、。
わたしの名前は、『シェキナー』
わたしの持っている記憶と交換してほしいという人たちが
私の前に、次々と現れたの、、、!
『ねえねえ? シェキナー! 僕のこのカバンと君の楽しい記憶を1つ
交換してくれないかな、、、?』
『えぇ!? わたしの“楽しい記憶?”』
『そうだよ! 全部とは言わない! たった一つでいいんだ? どうだい?』
『うーん? 確かに、貴方の持っているカバンは素敵だわ~! 他で見たこと
がないほど、綺麗なカバンなんだもの! たった一つ! わたしの楽しい記憶
でよければ、是非! 交換してもいいわ~!』
『えぇ!? 本当かい?』
『もちろんよ!』
『ありがとう、シェキナー!』
わたしは、たった一つ! わたしの【楽しい記憶】と彼のカバンを交換したの!
▽
またそれから数日後、、、。
『ねえ、シェキナー?』
『なーに?』
『私の着なくなったお洋服と貴女の悲しい記憶を1つ! 交換して
くれないかしら、、、?』
『わたしの、“悲しい記憶?”』
『そうよ~! ほら? 私が持ってきた服を見て、、、!』
『なんて! ステキなお洋服なの、、、? こんなにステキなお洋服と
わたしの悲しい記憶を1つと交換するぐらい、簡単な事だわ~!』
『ありがとう、シェキナー! 貴女はとてもいい人ね!』
『こちらこそ! ありがとう。』
▼
そこから、数日経った頃、、、。
『おーい! シェキナー!』
『今度は何かしら、、、?』
『俺の大事に取って置いた、最高級の肉と君の感動した記憶を1つ!
交換してくれないか、、、?』
『えぇ!? わたしの“感動した記憶?”』
『どうだい? この肉、凄いだろう~!』
『確かに、美味しそうな肉ね! こんな大きな肉は見た事がないわ~!』
『じゃあ、交換してくれるのかい、、、?』
『えぇ! いいわ~! わたしの感動した記憶を1つと交換しましょう~!』
『ありがとう、シェキナー!』
*
わたしは、こうして次々とあらゆるわたしの記憶の1つと誰かの何かを交換
していったの、、、!
・・・でも、そのうちね!
わたしの記憶が、どんどん失われていったわ、、、。
最後の1人の時には、、、?
気がつけば、、、。
わたしの記憶のすべてを交換していたのよ。
わたしは、記憶を何一つ持たなくなってしまったわ、、、!
記憶の無い、わたしに誰も見向きもしなくなったの、、、。
まるで、【記憶喪失】になったみたいに、、、。
わたしの記憶は、空っぽになってしまったの、、、!
交換する記憶がないから、誰もわたしを助けてくれる人もなくなったの。
『わたしは、、、誰? わたしは、、、どうしてここにいるの? わたしは?
何のために生きているのかな、、、?』
わたしが、ちやほやされていたのは、、、?
すべて! わたしの記憶のおかげ。
なくなってしまえば、、、?
誰の目にも止まらない、ただの女の子だわ。
わたしの、全ての記憶を失って気づいた事...。
【決して! 無くしてはいけないモノ。】だったのに、、、。
わたしは、その事に気づけなかったの。
あぁ~
わたしの、、、『大切な記憶。』
もう二度と、、、返ってこない記憶...。
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