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第九十話 この声はずっと届かない②

「わーい! マスカットに戻ってきたよ!」


湖畔の街、マスカットに戻ってきていることを確認すると、花音は嬉しそうにはにかんだ。

プラネットは居住まいを正して、真剣な表情で告げる。


「マスター。『カーラ』のギルドマスターによるマスターへの干渉は、ここまでは及ばないようです」

「……あ、ああ。そうみたいだな」

「通常の電磁波と違って、光の魔術だと遠距離には対応できないみたいだな……」


顔を上げた望が言い繕うのを見て、徹は追随するように安堵の表情を浮かべた。

有達のギルド『キャスケット』がある、湖畔の街、マスカットの街並み自体は、今朝とさほど変わらない。

大勢の人で賑わい、プレイヤー達の行き来も激しかった。

モンスターの情報や、新しいクエストについての噂、ダンジョンで手に入れた武器の自慢、あるいは現実での話を持ち込み、会話に花を咲かせている。

だが、いまだに、明らかに異質なプレイヤー達が街中を行き交っていた。


「『特殊スキルの使い手の捜索と捕縛』のクエスト、一覧から消えていたな」

「もしかして、誰かがクエストを達成したのか!」

「いや、これは、クエストの提供元が、自発的に削除したみたいだ」


特殊スキルの使い手を狙うプレイヤー達の間で、クエストが破棄されたという噂が飛び交っている。

右手をかざした花音は、爛々とした瞳で周囲を見渡した。


「お兄ちゃん、本当にあのクエスト、破棄されたみたいだよ」

「そのようだな、妹よ」


花音の言い分に、有は少し逡巡してから答える。


「これで、少しは行動範囲を広げることができるかもしれないな」


望は目を閉じて、『創世のアクリア』の世界を想い描いた。

頭上に広がるのは、まだ見ぬダンジョンと未開の地。

望はただ、仮想の空に向かって手を伸ばす。


「ようやく、転送石の費用を貯めることができるクエストも受けられそうだな」


周囲の様子を窺っていた奏良は、大きく息を吐いた。

奏良はインターフェースを使い、HPが減ったステータスを表示させる。


「奏良よ、回復アイテムだ」

「ああ」


有から手渡された回復アイテムを呑んだことで、HPが少し回復した奏良は、高位ギルドの底知れない影響力を改めて実感した。

望達も、有から手渡された回復アイテムを呑んだことでHPが少し回復する。


『カーラ』の『特殊スキルの使い手の捜索と捕縛』のクエストが公開され始めてから、望達は表立って行動ができなくなった。

自身が所属するギルドや街中にある宿屋などは、絶対不可侵のエリアだ。

街中やフィールド上と違って、安全が保証されている。

しかし、街の外を歩いていれば、特殊スキルを狙うギルドやプレイヤー達に度々、襲われることもあった。

とても、転送石の費用を貯めるためのクエストを受けられる状態ではない。

だが、そんな不穏な状況も、クエストが破棄されたことで次第に緩和していくだろう。

望達の視線を受けて、有は次の行動を移すために宣言する。


「望、奏良、プラネット、徹、そして妹よ。他のプレイヤー達が、望に気づく前にギルドに向かうぞ」

「ああ」

「うん」


望達は周囲を警戒してから、ギルドへと足を運んだ。


「なっ?」


しかし、そこで見たあまりにも衝撃的な光景に、望達は思わず言葉を失ったのだった。

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