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第七十ニ話 蒼星の廃景②

「蜜風望を発見。かなめ様に報告しなくちゃ!」

「うん」

「ーーなっ!」


その発言を合図に、妖精達は囁きながら古城へと向けて飛んでいく。


古城へと飛んでいく妖精達ーー。


それは、状況の苛烈さに反して展開される、場違いなほどの幻想的な光景。

そんな夢幻(むげん)の世界に惑わされていた望達を、現実に引き戻したのは背後からの声だった。


『我が声に従え、ララ!』

「ーーなっ!」


望の驚愕と同時に、望達の目の前に光輝く精霊が現れる。


「ララ、妖精達を止めろ!」

「了解!」


金色の光を身に纏った人型の精霊。

妖精達とさほど変わらない体躯の精霊ララは、主である徹の指示に従ってふわりと飛来した。


「報告なんてさせないわよ!」

「ええっ!?」

「精霊が邪魔してきたわ!」


ララは先回りして、妖精達の行く手を塞いだ。

妖精達は動揺のあまり、視線をうろつかせて狼狽する。


「だったら、えーい!」


妖精の一人が先手必勝とばかりに、ボウガンでララに狙いを定める。


「そんな攻撃、意味ないわよ」


だが、それが放たれるよりも先に、ララは電光石火の早業で光の檻を生成させた。

彼女達の逃げ道を塞ぐように、四方形の光の壁が具現化する。


「えっ? 私の矢がかき消された?」

「なにこれ! 出られない!」

「これで、あなた達はここから逃げられないわよ」


妖精達の悲鳴をよそに、ララは得意げに腰に手を当てた。

ララは妖精達を閉じ込めた光の檻を運ぶと、徹の前で無邪気に笑う。


「徹。あたし、頑張ったよ。誉めて誉めてー」

「ララ、ありがとうな」

「えへへ……」


徹の称賛に、ララは嬉しそうに赤らんだ頬にそっと指先を寄せる。

その様子を見て、奏良は呆れたようにため息を吐いた。


「君はいつも突然、出てくるな」

「俺は、紘から、おまえらの監視を任されているからな」


奏良が非難の眼差しを向けると、徹はきっぱりと異を唱えてみせた。


「鶫原徹よ、助かった」


厳しい視線を向ける奏良の代わりに前に出た、有が代表して徹に感謝の意を告げる。


「ど、どういうこと? もしかして、妖精さん達は、私達を尾行していたの?」

「そうみたいだな」


花音が戸惑ったように訊くと、望は顎に手を当てて、真剣な表情で思案した。


「徹。この街の妖精達は全て、『カーラ』に所属しているNPCなのか?」

「……ああ。ほとんどの妖精達は、『カーラ』に所属しているNPCだ」

「そうか。なら、このまま変装していても、妖精達に見つかってすぐにバレてしまうな」


徹が事実を如実に語ると、望は納得したように首肯する。

右手をかざした花音は、爛々とした瞳で周囲を見渡した。


「プラネットちゃん。妖精さん達、まだ、何処かに隠れているかもしれないよ!」

「はい。盲点を突かれてしまいましたが、必ず見つけてみせます!」

「花音、プラネット、ありがとうな」


両手を握りしめて語り合う花音とプラネットに熱い心意気を感じて、望は少し照れたように頬を撫でてみせる。

だが、妖精達の捜索を開始して数分後、花音は想定外の出来事に遭遇して悲鳴を上げた。


「わっ! プラネットちゃん、今度は妖精さんじゃなくて、お魚さん達が襲ってきたよ!」

「空を飛ぶ魚のモンスターですね」


花音とプラネットが周囲を探っていると、噴水の上空で泳いでいた魚のモンスター達が一斉に襲ってきた。


「望くん、どうしよう? お魚さん達が襲ってきたよ!」


魚の大群を前にして、花音が怯えたように、望の背後に隠れる。


「もしかして、噴水の上で泳いでいた魚は、全てモンスターだったのか?」


望が注視すると、魚のモンスター達の頭上にはHPを示す、青色のゲージが浮いていた。

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