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第六十話 天空の回廊⑤

「……あの、銃の弾、借りてもいい?」

「あ、ああ」


三大高位ギルドの様々な思惑が交錯する戦局の中ーー。

ぎこちなく近づいてきた愛梨の頼みに、奏良は上擦った声で承諾した。


『……仮想概念(アポカリウス)


愛梨は自身の特殊スキルーー仮想概念(アポカリウス)のスキルを使い、弾に自身のスキルの力を込めていった。

弾の外殻が次々と変色していく。


「奏良くん。上手くいくか、分からないけれど、弾に力を込めてみた」

「愛梨、ありがとう」


奏良は、愛梨から受け取った弾丸を素早くリロードする。

カリリア遺跡のボスを葬った流星の弾丸。

これなら、『カーラ』のギルドメンバー達を翻弄することができるだろう。

上手くいけば、光龍と戦闘を繰り広げている骨竜を葬ることも可能かもしれない。

だが、そこで愛梨が不意に苦しそうに頭を押さえた。


「頭が痛い……」


立っているのも辛い頭痛の痛みに、愛梨は膝をついた。


「愛梨!」

「愛梨ちゃん!」

「愛梨!」

「愛梨様!」


愛梨のただならぬ様子に、有達は悲痛な声を上げる。


「ーーっ」

「あ、愛梨ちゃん、大丈夫?」


頭を押さえる愛梨を見て、花音は不安そうに顔を青ざめた。


「お兄ちゃん。愛梨ちゃん、大丈夫かな?」

「妹よ。もしかしたら、望の時と同じ現象かもしれない。なら、ニコットを止めれば、愛梨も救えるはずだ」


花音の戸惑いに、有は思案するように視線を巡らせる。


「今回も、森の入口付近に潜んでいる可能性が高いな」


有はインターフェースを表示させて、メルサの森に潜んでいるニコットを探し出そうとした。

二頭の竜の戦いの影響で、メルサの森は荒れ果てている。

幾重もの木の枝に身を隠していても、彼女の痕跡を見つけることができるだろう。

ニコットと遭遇した場所を検索していたその時、森の奥から有に対して一筋の殺気が放たれた。


「そこです!」


しかし、その不意討ちは、プラネットには見切られていた。

有を守るようにして進み出たプラネットは、反射的に飛んできたダガーを弾くと、その方向に向かって電磁波を飛ばした。


「ーーっ」


初擊の鋭さから一転してもたついた襲撃者は、電磁波の一撃をまともに喰らい、苦悶の表情を浮かべる。


「喰らえ!」


そこに、奏良の銃弾が放たれた。

愛梨の特殊スキルが込められた弾は、襲撃者が立っていた木の枝に命中する。

落下してきた少女に対して、さらに放たれるその銃弾は、やがて彗星の如く、虹を纏う光芒と化す。

絶え間なく弾丸が放たれるその光景は、まさに流星群のような輝きを見せる。

奏良の銃弾が連続で放たれたことで、メルサの森は崩壊し、荒地へと変わり果てていた。


「ーーっ!」


流星の弾丸を何発も喰らったことで、襲撃者であるニコットの身体は大きく吹き飛び、HPが一気に減っていた。

頭に浮かぶ青色のゲージは、瀕死の赤色に変化する。


「……修復、不可能」

「ニコットちゃん!」


急速に反転する攻防を前にして、花音は大きく目を見開いた。

ニコットはかろうじて起き上がると、賢に対して報告を続ける。


「椎音愛梨の特殊スキルが込められた弾丸により、損傷。指令は続行不可能と判断しました。ニコットはこれより、退却します」

「ーーなっ! 待て!」


奏良が声をかける間もなく、ニコットは転送アイテムを掲げるとその場から姿を消していった。

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