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第五十三話 あの日、あの瞬間⑥

『……何で、ここで俺を指名するんだよ!』


有に名指しされた徹は、露骨に眉をひそめる。

徹は今も、契約している精霊『シルフィ』の力によって姿を消していた。

徹が森の入口の前で佇んでいると、『カーラ』のギルドメンバー達の間で徹の噂が飛び交う。


「鶫原徹。我らと同じ召喚のスキルの使い手。ここに来ているというのか?」

「鶫原徹って、誰?」

「『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバーみたいね」

『……もしかして、俺、あまり有名じゃないのか?』


『カーラ』のギルドメンバー達の剣幕に、徹は我が身を(かえり)みる。


『それにしても、『カーラ』は『レギオン』の傘下だったんだな』


徹が警戒するように周囲を見渡すと、メルサの森周辺には、『レギオン』と『カーラ』のギルドメンバー達がひしめいていた。

全てを動員したわけではないとはいえ、総勢三千もの数の高位ギルドのプレイヤー達が、メルサの森を背景に強固な包囲陣を築き上げている。


『あの様子だと、紘はこのことを知っていたのかもしれないな。とにかく、紘の指示どおりに動くしかない』


徹は気持ちを切り替えるように一呼吸置くと、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドメンバー達とコンタクトを取り始める。

徹の心情を露とも知らず、有は取り繕うように咳払いをすると、本題に入った。


「奏良よ。カリリア遺跡のボスを倒したことで、俺達の武器にも、魔術による武器への付与効果ができるようになったと言っていたな」

「ああ。新たなスキル技を覚えたからな」


有が確認すると、奏良は自分と周囲に活を入れるように答える。

奏良は風の魔術を使い、弾に魔力を込めていった。

弾の外殻が次々と変色していく。

その様子を眺めていた花音が、興味津々な様子で尋ねた。


「その、新しいスキル。私の鞭にも使えるのかな?」

「試したことはないから、確証はないけれどな」

「わーい! 風の魔術による付与があるなら、すごい連携攻撃が出来そうだよ!」


曖昧に言葉を並べる奏良をよそに、花音はぱあっと顔を輝かせる。


「望くんの剣は、魔力剣になるね」

「上手く使いこなせるかは分からないけれどな」


花音の言い分に、望は少し逡巡してから言った。

その指摘に、花音は信じられないと言わんばかりに両手を広げる。


「望くんなら、絶対に使いこなせるよ!」

「……おい、妹よ」


有が発案者なのに、当事者抜きで話が進められていく。

その様子を不思議な諦念とともに傍観していた有だったが、妹が自信満々で口にしたつぶやきには突っ込まざるをえなかった。


「これで、私達は全員、風属性の使い手だよ」

「妹よ。風属性ばかりでは、高位ギルドのプレイヤー達の攻撃を対処できないぞ」


喜色満面で両手を握りしめた妹の姿を見て、有は呆れたように指摘したのだった。

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