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第三十三話 魔天楼を見上げて⑤

愛梨から望に入れ替わった翌日、一介のギルドホームが慌ただしい騒動に包まれていた。


「カリリア遺跡でのデータのサンプリングを注入しました」


モニターのついた機材を操作して告げるのは、『レギオン』のギルドメンバーの一人だった。

カリリア遺跡から離れた場所にある機械都市、『グランティア』の一角。

そこに高位ギルドの一つ、『レギオン』のギルドホームがあった。


「ですが、美羅様の覚醒には至りません」

「やはり、データではなく、特殊スキルの使い手の存在が必要不可欠か」


ギルドメンバーからの報告に、賢は苦々しい表情で眉をひそめる。

物々しい機材やモニターに繋がれている玉座。

そこで今も眠った表情のまま、美羅は座っている。

彼女のもとまで歩み寄ると、賢は悩みを振り払うように首を横に振った。


「美羅様、どうかお目覚め下さい」


物言わぬ美羅の前で片膝をつくと、賢は丁重に一礼する。

それでも変わらぬ美羅の表情を目の当たりにした瞬間、賢のまとう空気が一変した。


「椎音愛梨は今現在、ゲーム内へのアクセスをしていない。狙うべきは蜜風望か」


立ち上がった賢は一呼吸おいて、異様に強い眼光を美羅に向ける。


「蜜風望がログインをした瞬間を狙って、美羅様とシンクロさせろ」

「はっ」


賢の命令に、ギルドメンバー達は速やかに従った。

美羅を、特殊スキルの使い手である望とシンクロさせる。

その絶対目的のために、『レギオン』は行動を開始した。


プレイヤーは、現実では『プライバシー保護』という制度で守られている。


実名で登録することによって発生するトラブルを想定して、運営側はプライバシー保護という制度を導入していた。

警察に協力を求め、街の各所に監視アプリを設置し、『創世のアクリア』のサーバー以外のゲームに関する全ての書き込みを規制する。

規約を破って不正や事件などを起こした場合、最悪、アカウントを削除されるだけではなく、警察に起訴される。

ゲーム内から、現実世界への不正アクセスも同様だ。

だからこそ、『レギオン』はーー賢達はゲーム内で望と愛梨に干渉しようと目論む。


望達と接触することで、愛梨のデータの集合体である美羅の覚醒を促すためにーー。

それはいずれ、神にも等しい叡知を宿した存在を産み出す土俵になる。


やがて、それは実を結び、賢の目の前で美羅の表情がわずかに動いた。


「特殊スキルの使い手を手中に収めれば、全ては美羅様のお望みのままになります。それまでご辛抱を」


美羅の反応に応えるように、賢は再び、片膝をつくと嗜虐的に笑みを浮かべたのだった。

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