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第十七話 その先の未来⑤

望達は追っ手を振り切って、遺跡の最奥部の前で降り立つ。


「もう追ってこないみたいだな」


独りごちた望は決定的な変化に安堵した。

最奥部を前に、望達は装備やアイテムの最終確認をする。

そんな中、居ても立ってもいられなくなったのか、花音がボスに攻撃する際の身振り手振りを加えながら飛び跳ねた。


「お兄ちゃん、ここのボスって、どんなモンスターなのかな? どんな相手でも、私の天賦のスキルで倒してみせるよ!」

「望、花音。今回、君達の出番はない。ただひたすら、ボスを翻弄してくれ」


花音が自信満々で告げると、奏良は呆れたように有に目配りする。

有はそれに応えるように、インターフェースを操作して、カリリア遺跡の攻略情報を表示させた。


「妹よ、残念だが、ここのボスは物理攻撃が効かないようだぞ」

「……そ、そうなんだね」


自身のアイデンティティーを否定されて、花音は落胆した。


「攻略情報か。なら、ボスはもう討伐されてしまっているのか?」

「ああ。既に複数の高位ギルドが討伐しているようだな」

「ーーっ」


有から、暗に攻略された後のクエストだと言われて、望は悔しそうに言葉を呑み込む。


「じゃあ、伝説の武器は?」

「最初に攻略した高位ギルドが手に入れたみたいだ」


奏良の非情な通告に、望は目に見えて落ち込んだ。


「みんな、ごめんな。俺の特殊スキルのせいで、出遅れたからーー」

「望くんは悪くないよ! 望くんは、私達の大切な仲間だもの!」


望の謝罪を、花音は(まなじり)を吊り上げて強く強く否定する。


「ああ。望は、俺達の大切な友人で仲間だ。他のギルドに渡すわけにはいかないからな」

「愛梨を守ることが僕の役目だ」


強い言葉で遮った花音の言葉を追随するように、有と奏良は毅然と言い切った。


「……みんな、ありがとうな」

「望くんは、これからも私達の仲間だよ!」

「ああ」


両手を握りしめて言い募る花音に熱い心意気を感じて、望は少し照れたように頬を撫でてみせる。


特殊スキル。

世界を牛耳る力と謳われ、現実世界をも干渉する力と言われている力。

特殊スキルを使える者が、ギルドに所属しているだけで上位ギルドとして認められる。

また、特殊スキルの使い手は、望を含めて三人しかいない。

望と紘、そしてーー。


望は複雑そうな表情で視線を落とすと、熟考するように口を閉じる。


「ここのボスは、何度でも復活する。伝説の武器は手に入らなくなってしまったが、素材集めに時間がかかる『転送アイテム』、そして、このクエストのみに配布される『マナー・シールド』は手に入れて置かねばな。急ごしらえだが、このくらいの素材があれば、何とか人数分の回復アイテムを作れそうだ」


遺跡内に散らばる木の枝などを集めて、有は回復アイテムを人数分、生成した。

そして、望に向き合うと、仕切り直して続ける。


「望を狙う連中は、これからボスと戦う際にアイテムを沢山、用意するように、力はいくらあっても困らないと思っているのだろう。特に唯一無二のスキルというものは、世界そのものを書き換える力があるようだからな」

「現実世界をも干渉する力。同じ特殊スキルの使い手である椎音紘とそのギルド『アルティメット・ハーヴェスト』に守られているとはいえ、生き返った愛梨も狙われるんじゃないのか?」


奏良の懸念に、望は瞬きを繰り返しながら、愛梨としての記憶を思い出してつぶやいた。


「愛梨は、俺と同じ特殊スキルの使い手だからな」

「ギルドメンバー以外とは、現実では深く干渉させないというプライバシー制度。そのおかげで、愛梨は現実世界にいる間はある程度、安全が約束されている。しかしだ。そのせいで、僕は愛梨を遠くから見守っていることしかできない」


望が緊張した面持ちで告げると、奏良は持っている銃を悲しげに揺らして肩をすくめた。


望、紘、愛梨。

特殊スキルの使い手は、三人しかいない。

そのため、必然的に特殊スキルの使い手がいるギルドは常に狙われてしまう傾向にある。

有達のギルド『キャスケット』。

紘達のギルド『アルティメット・ハーヴェスト』。

特殊スキルの存在が認知され始めてから、望達は表立って行動ができなくなった。

自身が所属するギルドや街中にある宿屋などは、絶対不可侵のエリアだ。

街中やフィールド上と違って、安全が保証されている。

しかし、街の外を歩いていれば、特殊スキルを狙うギルドやプレイヤー達に度々、襲われることもあった。

だが、そんな状態になっても、望をギルドの一員として認めてくれる。

有達の心意気に、望は感謝してもしきれなかった。

望達の視線を受けて、有は高らかに宣言する。


「みんな、行くぞ!」

「ああ」

「うん」

「さっさと蹂躙してみせる」


望達は周囲を警戒してから、遺跡の最奥部へと足を踏み入れた。

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