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第百六十八話 君に叶わぬ恋をしている④

洞窟は細い通路が緩やかに延びており、両脇の燭台が周囲を薄く照らしていた。


「ふむ。この奥に氷の結晶があるのか。基本的に迷うことはなさそうだな」


有はインターフェースを使い、目の前に表示されているダンジョンマップに沿って歩いていく。

マップ通りなら、先に三叉路がある。

周囲に視線を巡らせていた花音は、興味津々の様子で勇太のもとを訪れると甘く涼やかな声で訊いた。


「勇太くんとリノアちゃんって、どんな関係だったの?」

「幼なじみだな」

「じゃあ、私達と同じ感じだねー」


勇太の答えに、花音はあまり冗談には思えない顔で言って控えめに笑う。

そこで、勇太が核心に迫る疑問を口にした。


「望達も、幼なじみなのか?」

「……幼なじみというほどではないが、望達とは中学に上がった頃に知り合った。このゲームをきっかけにな」


望の驚愕に応えるように、有は物憂げな表情で腕を組んだ。


「俺は、望達とは知り合ったばかりだけど、『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドマスターである紘とその妹の愛梨とは、昔からの友人なんだよな」


勇太の問いかけに真剣な口調で答えて、徹はまっすぐダンジョン内を見つめる。


「俺は愛梨としても生きているから、徹と知り合ったばかりとは思えないな」

「そうだね」


望が咄嗟にそう言ってため息を吐くと、花音は元気づけるように望を見上げた。


「ーーって、わっ! 望くん、モンスターが出たよ!」


望達が奥に進んでいくと、五体のスライムタイプのモンスターが待ち構えていた。

モンスターの頭上にはHPを示す、青色のゲージが浮いている。

丸くて愛嬌のある顔立ち、グミのような柔らかくて弾力のある質感でありながら、彼らの攻撃方法である体当たりは、ゲームを始めたばかりのプレイヤーには脅威だ。

だが、熟練のプレイヤーである望達は、初心者用のダンジョンに出てくるモンスターに後れは取らない。


「お兄ちゃん、モンスターが一斉に襲ってきたよ!」

「初期ステータスのポイントを、素早さに全振りしているから大丈夫だ。妹よ、モンスターの背後に回るぞ!」

「うん!」


会話の内容と呼応するように、前衛の望と勇太をブラインドして近づいていた有と花音が、それぞれの武器を構えた状態でモンスターの死角から現れる。

有の杖と花音の鞭。

有と花音の連携攻撃に気を逸らされたモンスター達は、急接近してきた望と勇太の剣戟に切り刻まれて、あっさりと地に伏せた。


「わーい! 望くん、お兄ちゃん、奏良くん、プラネットちゃん、徹くん、勇太くん、大勝利!」

「……っ。おい、花音」


これ以上ない満面の笑みを浮かべて、駆け寄ってきた花音が望に抱きついた。

花音の突飛な行動に、望は身動きが取れず、窮地に立たされた気分で息を詰めている。


「有、洞窟の奥まではどのくらいになるんだ?」

「あと少しだな」


望達の喧騒をよそに、奏良は有と顔を見合わせて意見を言い合う。

望達は何度か、モンスターと遭遇しながら、洞窟の奥を目指していく。

マップ通りに歩いていると、やがて目的の場所である小部屋へとたどり着いた。

そこには、氷の結晶が置かれている台座が鎮座していた。


「ボスもいないダンジョンだから、簡単にクエストを達成出来たな」

「氷の結晶、綺麗だね」


望が氷の結晶を手に取ると、花音は好奇心いっぱいの眼差しで見つめる。

有はクエスト達成のメッセージを確認すると、吹っ切れたように切り出した。


「望、妹よ。洞窟内も、特に異常はないようだ。すぐに、次のダンジョンに向かうぞ!」

「……いや、有。異常はあるみたいだ」


徹のその言葉を発端に、周囲の光景が変化する。

氷の壁は、周囲を眩しく照らす黄金色に変わっていた。

金色に輝く部屋は豪華絢爛で、まるで宝物庫のようだった。

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