表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/559

第百六十四話 仮想は偽りを隠す⑨

その日、勇太達は約束どおり、五大都市の一つ、王都『アルティス』の冒険者ギルドへと赴いていた。

一昨日、望達から冒険者ギルドへ提示されてきたという、『シャングリ・ラの鍾乳洞』。

そのダンジョン情報をしらみつぶしに検索していたのだが、リノアを元に戻すきっかけになりそうなものは見当たらない。


「やっぱり、行ってみないと分からないか」


勇太は釈然としない態度のまま、視界に入ったクエスト内容を確認する。


「ここで、望達とともにクエストをこなしていけば、リノアを救うことができるはずだ」


勇太はギルド内を闊歩しては、リノアを元に戻す方法を探した。

しかし、何一つ手がかりになりそうなものは見つからない。

理想と現実の落差を、その度に一筋の希望で埋めねばならなくなる。

勇太の脳裏で、かってのリノアの声が反芻される。


『勇太くん』


大輪の向日葵のような、思わず目を奪われるリノアの笑顔。

幼い頃の勇太は、毎日が楽しくて仕方がなかった。日々、大好きな幼なじみの女の子と遊んで、家に帰れば優しい笑顔で家族が迎え入れてくれる。

そんな当たり前の幸せな日々。

だが、リノアが眠った状態になってしまったことで、そんな日々は失われてしまった。

仮想世界だけではなく、現実世界にまで影響を及ぼしてくる高位ギルド。

自分達には、手に余る事柄だ。

考えるだけで気が重くなってくる。

その様子を辛辣そうな表情で見守っていたリノアの両親は、改めて勇太に告げた。


「勇太くん、病院のことを教えてくれてありがとう」

「まさか、あの病院内に、『レギオン』と『カーラ』の関係者がいるなんて……」

「……ああ」


リノアの両親の言葉を聞きながら、勇太はリノアがこうなってしまった理由に固執する。


高位ギルド、『レギオン』。


リノアとリノアの両親が所属していたギルドであり、特殊スキルの使い手の一人を元にしたデータの集合体ーー美羅をギルドマスターとして讃えている危険なギルドだ。

美羅と同化したことで、リノアは現実世界に戻ってきても目を覚ますことはなく、眠り続けている。

現実世界で、リノアを隔離されている病院から連れ出すことは不可能だった。

病院内にいる『レギオン』と『カーラ』の関係者が、国の中枢を動かし、抑圧してきたからだ。


勇太達が知っている情報の漏洩。

あるいは、情報の伝達。


それは仮想世界、そして現実世界の裏側に潜む闇だった。


押し寄せる不安の中、勇太が確信したのは、このまま手をこまねいていては、もう二度と以前の彼女に会えなくなってしまうということだった。

その疑念を払拭するため、勇太は真剣な眼差しで尋ねる。


「なあ、おじさんとおばさんはどうする? 俺は『キャスケット』に入ろうと思っている」


勇太の言葉は、この上なくリノアの両親の意思を突き動かした。


「勇太くん。私達も、『キャスケット』に加入するつもりだ」

「リノアを助けたいの」

「おじさん、おばさん、ありがとうな」


リノアの両親の懇願に、勇太は嬉しそうに承諾した。


「世界がリノアを忘れても、俺達はリノアを忘れないからな!」


勇太がそう告げると、ギルドの入口が賑わい、新たな人々の到来を告げていた。

勇太は不意に、ギルドの入口へと視線を走らせる。

そこには、冒険者ギルドへ赴いた望達の姿があった。


「よし、行くぜ!」

「ああ」

「ええ」


勇太達は期待に表情を綻ばせながら、望達のもとへと駆け出していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ