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第十六話 その先の未来④

「くっ! きりがないな!」


望が剣を一閃すると、数体のモンスターが床に伏す。

標的を切り替え、望は剣を構え直した。


「お兄ちゃん、まだ追ってくるよ!」

「しつこい奴らだな」


花音が鞭でプレイヤー達を凪ぎ払おうとしても、プレイヤー達は彼女の行動を読んだように即座に避ける。


『元素還元!』

『復元!』


有は、プレイヤー達を牽制するように床に向かって杖を振り下ろしたが、同じスキルのプレイヤーによって崩壊させようとしていた通路を再び、生成されてしまう。


「望、妹よ、このままではまずいぞ」


望達が後手に回るのを見計らって、次々と壁を作るように後続のプレイヤー達が現れる。

カリリア遺跡は、上級者クエストというだけあって、モンスターの数も半端ではなかった。

遺跡内部は、まるで迷路のように入り組んでいる。

望達の今回の目的は、最奥にいるボスモンスターを倒して、伝説の武器を手に入れることだ。

だが、既に前方からモンスター、後方から望の特殊スキルを狙うプレイヤー達と挟み撃ちを受けていた。


「さあ、特殊スキルの使い手を、こちらに引き渡してもらおうか」


千差万別な武器を構え、プレイヤー達はゆっくりと望達に迫ろうとしたーーその時だった。


「多少のダメージは堪えろ」

「うわっ!」

「なんだ?」


絶体絶命の危機の中、迫り来るプレイヤー達に合わせて、銃の弾が全方位に連射される。

放たれた弾は、対空砲弾のように相手の攻撃にぶつかり、プレイヤー達を怯ませた。


「奏良よ、先の遺跡に着いていたにしては遅いではないか」

「もうー、奏良くん。待ち合わせの時間、とっくに過ぎているよ!」


ようやく現れた一縷の光に、有と花音が不満そうに憎まれ口を叩く。


「助けに来た早々、その仕打ちは勘弁してほしい」


奏良は有達から目を逸らし、銃口を前方のモンスター達に向けて発砲する。

焦りもない。

怯えもない。

正確無比な射撃で、奏良はただ眼前の敵達を撃ち抜いた。


「奏良よ、今すぐ風の魔術のスキルを使って逃げるぞ!」


奏良の一連の動きを見て、有はすぐにその決断を下した。


「有。君は人使いが荒い上に、全く効率的ではない。そもそも、君達は馬車で、僕だけが風の魔術のスキルを使ってカリリア遺跡に向かったんだ。待ち合わせ場所さえも定められていなかったというのに、何故、僕だけが責められる必要がある」


有の提案に、奏良は懐疑的である。

だが、それでもこの状況を打破するためには、それしかないと奏良は悟った。


魔術のスキル。

火、水、風、光、闇。

五大元素のうち、どれか、または複数を操り、世界を変革するスキルだ。

奏良はこの内の一つ、風の魔術のスキルの使い手である。


『エアリアル・アロー!』


奏良が唱えると、無数の風の矢が一斉に後方のプレイヤー達へと襲いかかった。


「ーーっ!」


放たれた風の矢を、上体をそらすことでかわしたプレイヤー達は、視界を遮る風圧に反撃の手を止める。


『エアリアル・クロノス!』


その隙に、奏良は風を身体に纏わせて飛翔した。

望達も、風に引っ張られるように空に浮かぶ。


「よし、奏良よ。このまま、遺跡の最奥部に向かうぞ!」

「遺跡の中で、空を飛ぶのってすごいねー!」

「すごいのか……?」


有と花音が楽しそうにしている中、望だけが表情を凍らせていた。

インターフェースで表示したカリリア遺跡のマップを確認しながら、有は拳を掲げて宣言する。


「望、奏良、妹よ、行くぞ! カリリア遺跡の最奥部へ!」

「遺跡の中なのに、空を飛んで行くのか」


望の疑惑が届くこともないまま、望達は最奥部を目指して、遺跡中を滑走していった。

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