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ブラックシープ

壁が無くなったことでアイラは状況を察し、急いで駆け寄り、容態をみた。

そして顔が真っ青になった。

ハァハァと息苦しそうな朱里は身体中火傷をしたかのようにただれており、一番酷い右腕は溶けた肉の断面と骨が見えていた。


「何してんのよ!!あんた、毒に当たるってわかっててやったの?!!!!」


「落ち着けアイラ!!すぐ本部向かおう。マザーに見せるんだ。アンノウンのコアの回収を頼む!」


「わ…わかったわ!!」


アイラは特殊な杭を取り出し、アンノウンの胸に刺した。するとアンノウンは一瞬にして砂のように崩れた。

その間、裕也は上着を脱ぎ、朱里の身体に巻き付けていた。

痛みで偶然目を開いた朱里は何かを発見した。


「せ……ぱい…ビルの……上に…」


すぐさま朱里が見つめる先を見た。

そこには全身が真っ黒の服にフード付きのケープを羽織り、羊のお面を付け、癖のある黒い髪の毛がふわふわと風に揺らした女性が立っていた。

チッと裕也が眉間に皺を寄せながら舌打ちをした。


「ブラックシープだ。」


「ブラックシープって重要調査ターゲットじゃん!!」


そう言うとアンリは駆け出した。


「待てアイラ!!」


数メートルでキュッとアイラは止まった。


「なによ!!早くしないと!!」


「今は天野の方が優先だ。この状態で追いかけても殺られるだけだ。だが、アイツは今まで攻撃をしてきた事はない、まだ距離もある。運が良かった。急いでここから引くぞ。」


歯をギリッと軋ませたアイラは悔しそうに「わかった」と同意した。。

裕也は慎重に朱里を抱えた。アイラも直ぐに振り返り2人の方に向かった。

疲労と焦りの中、二人は完全に油断し、忘れていた。

()()()()()()()()()()()()敵が、今回も攻撃してこないとは《・》()()()()()()()()()を。

そして、相手が()()()()()()()()()()()未知の相手(最悪の敵)ということを。

ひゅんっと風を切る音がした。


ドスッ


「え?」


急に足に力が入らなくなったアイラは前のめりに倒れ込んだ。

何が起こったのかわからないアイラは熱くなった右ふくらはぎを確認すると、そこには黒色のナイフが深々と刺さっており、血液が垂れ流れていた。


その2メートルほど後ろには、先程まで廃ビルの屋上に居たブラックシープが立たずんでいた。


「ッッッッ!!!」


痛みに耐えながらすぐさま立ち上がろうとしたアイラに、いつの間にか横にいたブラックシープが躊躇なく腹に蹴りを入れた。

飛んでいったアイラがぶつかった壁は激しい衝突音を出しガラガラと崩れ、砂埃が舞った。


「アイラッ!!!」


崩れる音の中、裕也の後ろでベチャッと音がした。


「ッッ!!!!!」


はっと振り向いた時には、ブラックシープの蹴りが目の前まで来ていた。

裕也はどうすることも無く、蹴り飛ばされた。


「あ゛うッ」


抱えられていた朱里は勢いで飛ばされ、身体に巻き付けていた祐也の上着はボロボロになり脱げ、ドサッとそのまま地面に転がった。


コツン、コツン、と誰かが来る音がする。

廃ビルの中でぽたぽたと頭から血を流している裕也はピクリとも動かなかった。

足音が目の前で止まり、そいつは裕也の髪の毛を掴み持ち上げた。

血塗れの顔がブラックシープの目の前に来る。

ドロっとした何かが頭から流れ耳に入って来たのを感じた。

その瞬間、カッと祐也の目が見開いた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッ!?!!」


今まで聞いたことない叫びが響き渡る。

先程まで全く動かなかったはずの腕を無理やり動かし、足をばたつかせ、ブラックシープの腕に爪を立てる。

だが、そんなことに微動打にせず、掴んだ髪を離さなかった。

キラッと一瞬光った何かがブラックシープに向かって飛んできた。

パシッと髪を掴んだ手とは逆の方でそれを受け止めた。

それは、アイラを刺したナイフであった。

ブラックシープはゆっくりと投げられた方向を見ると、そこには地面に這い蹲った状態で自身に刺さっていたナイフを投げたであろう傷だらけのアイラがいた。


「あんた……調子乗ってんじゃ……ないわよ……!!」


振り絞って出したアイラの声は少し震えていた。

掴んでいた髪を離し、裕也はドサッと地面に落ちた。

コツン、コツンと靴の音を鳴らしながらゆっくりとアイラの方へ向かってくる。しかし、


(ポイズ)囲い(エンクロージャー)


あと数メートルの所でアイラは仕掛けた。

ブラックシープを囲うように毒が勢いよく溢れて、あっという間にブラックシープは毒に包まれた。


「はっ……ざまぁみろ……」


アイラは勝利を確信した。あの技捕まって、助かった者は1人もいなかったからだ。


(後はどうにか本部に連絡して…)


ザクッ


気づいたら隣でブラックシープがアイラの手に真っ黒いナイフを刺していた。そしてそのままグリっとナイフを回した。


「ぁぁぁあぁあぁああぁッッッッ!?!!」


熱を帯びる手の甲。なにか吸い込まれているような感覚がアイラを襲った。刺さってない方の手で払いのけようとも、全く動じることはなかった。

真っ黒なナイフはどくどくと脈打っているように見えた。

アイラの体力は見る見る減り、とうとう動くこともままならずただ何かを吸われるがままになった。

完全なる敗北。最後に目に映ったブラックシープの口元がニヤリと笑ったように見え、死の恐怖を感じながらアイラは意識を手放した。


パァンッッッッ!!!!!


その時、弾ける音がしたかと思うと花火のように光が打ち上がり、空に大きな魔法陣を描いた。

魔法陣の下には横たわったままの朱里がブラックシープを睨んでいた。

朱里は最後の力を振り絞り緊急救援の魔法陣を血で描き、自分の精神力を注いだのだ。

周りには次々と光の狭間が現れ、中からオレオールの戦闘員が出てきた。


ブラックシープはすぐに状況を把握し、行動に移した。朱里から目線を逸らさずに、突き刺していたナイフを抜き、少しずつ距離を取った。

朱里は離れていくブラックシープに対し怒りと憎しみでいっぱいの目で睨んだ。それに対してふっと笑ったように見えたブラックシープは、黒い髪を揺らしながら、ゆっくりと後退し、黒い何かに覆われて消えた。

続々と教団の戦闘員が出てきた。

裕也とアイラの元に戦闘員が駆けつけ、処置を始めた。

朱里はそれを見届けたあと、意識を手放した。


ーーーーーーーーーー


光が差し込む。

長い白髪がぼやけて見えた。


「……ぅ……?」


「あらぁ、お目覚めですかぁ?」


ねっとりとした声で誰かが覗き込んでき。少しずつ視界がクリアになったそこに、長い白髪を緩く2つに縛った女性がいた。薄目から覗いた青白い瞳が朱里を見つめていた。


「ちゆ先輩……私……いったい……?」


「まだ起きちゃダメですよぉ?3日間も寝てたんだからぁ」


ちゆはいつも通りそっと自分の瞳を閉じつつ話した。


「貴方はブラックシープとの戦いで精神力を使い過ぎて気を失ったんですよぉ。しかも致命傷を負ってたから尚更ぁ。特に右手ですねぇ。本来なら死んでもおかしくなかったんですよぉ?」


ちゆは口元を抑えながら本当に可笑しいように上品にうふふと笑っていた。

朱里は少し引きながら自分の右腕を見た。

だが、そこには何事も無かったかのように元通りの腕があった。


「えぇ、えぇ、私が、このちゆが、治したんですよぉ?本当なら切断しても良かったんですけどねぇ、オレオールの数は少ないので仕方なくぅ……。お顔の傷もほとんど治してあげましたぁ♪」


出来ましたらくすくす笑うちゆの言葉はすなわち、オレオール出なければ、神に選ばれたものでなかったら治すつもりはなかったと行くことだった。

朱里は苦笑いをしながらお礼を言った。


「……!ちゆ先輩、アイラ先輩達は!?」


「あ~、彼女達ですかぁ?アイラは容態が軽い方だったのですぐ目覚めましたよぉ?私を見た瞬間すごい嫌そうな顔するくらい元気でしたよぉ♪ けど、問題は裕也の方ですねぇ……脳にダメージが大きかったみたいで未だに目を覚まさないンですよぉ……さすがに脳は治せませんのでぇ…あとは本人次第ですねぇ。」


「そう……ですか」


朱里はあの時の裕也を思い出した。

頭で持ち上げられ、聞いたことも無い声で叫ぶ裕也。

横を向いた朱里の目に涙が溜まった。


「あらぁ?あかりさん、こんな所に傷がありますよぉ?」


「え?いッた、本当だ。」


触った顔の横に小さな傷があった。

ちゆは傷に被さっていた朱里の髪をさっと耳にかけると、その傷に顔を近づけ、

ペロッと舐めた。


「ひいぃ!?!?ち、ちゆせんぱい!?!?」


全身に鳥肌を立てた朱里はガバッと体を起こした。ちゆはさっと身を引き、先ほどまで座っていた椅子にすわりなおした。


「はい~?ちゆですよぉ?」


「いや、そうですけど、ちが、なんで舐めたんですか!?ってあれ?」


動揺が隠せない朱里は舐められたところを触った。だがさっきまであった傷が完全になくなっていたのだ。


「あ~、朱里さんは私の能力を見るのは初めてだったんですねぇ?私の能力は《再生》、舐めたとこを、正確には私の唾液に触れた怪我は治るんですぅ♪」


「え、じゃぁ私の腕も...」


「さすがにあれだけ大怪我でぇ、毒で溶けた腕なんて危なくて舐めれませんよぉ?なので唾液をかけさせていただきましたぉ♪」


頬に手を添えて、少し赤らめたちゆは少しはぁはぁと息が上がっていた。朱里は「そ、そうなんですねぇ」と引き攣った顔で返事をしながら、アイラがあった瞬間嫌な顔をしたのかわかってしまった。

その後、明日体の検査を行い、明後日以降学校に行くことができると言われた。

それと、戦闘に向かっている途中にに転送したスクールバックを返してもらった。

ちゆは「明後日から学校に行くには今日は病室で安静におとなしくすることですよぉ?それでは、私も用があるのでぇ」と言って退室していき、一人になった朱里は携帯を開いた。

そこには大量のメッセージと着信がたまっていたがほとんどが亮太からだった。

お読みいただきありがとうございます!

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