第10話 ~残党(Remnants of "JUSTICE")~
この日、秋を迎えていたはずのサキバサラの街は蒸し暑く寝苦しい夜であった。
烈人もベッドの中で眠れずに煩悶していた。
「くっそー! こんなにクソ暑くちゃ寝られやしねぇ」
汗ばんだTシャツが肌にまとわりつく不快感を感じながら、烈人はベッドの脇に置いてあったラジオのスイッチを入れた。
ラジオは午前1時を告げ、次の番組がちょうど始まろうとしていた。
「常盤草江の『トキはサエなり』!」
女性パーソナリティによるタイトルコールとともに、さわやかな風のようなBGMが流れ始めてきた。
「皆さんこんばんは。常盤草江です。……今日はとても暑くて、寝苦しい夜を迎えている方も多いかと思います。これからの2時間、音楽とおしゃべりで少しでも涼しさをお届けできればいいかな、と思います。最後までよろしくお願いします。……では、さっそく最初の曲です。……」
翌朝。東西南北新科学研究所の居間で、烈人とひとみは言葉をかわしていた。
「おっはよー! ヒトミン」
「おはよう……。昨日は暑くて全然寝付けなかったけど、レッドは大丈夫だったの?」
「俺も1時くらいまで寝れなかったんだけど、ラジオ聴いてたらいつの間にか寝ちゃって。それから朝までグッスリさ」
「ラジオ?」
「ああ。……トキワなんとかってパーソナリティのやつさ」
烈人の言葉にひとみが激しく反応した。
「それってトッキーのラジオでしょ!? なんで寝ちゃうわけ!!」
「はぁぁぁぁ? なにキレてんのさ」
烈人は訳がわからなさそうに声を上げた。
そんな烈人の間近に、怒りの表情を浮かべるひとみの顔が迫ってくる。
「トッキーは『ヒルーダの夜のマドンナ』って呼ばれてる、サキバサラで最高の人気を誇るパーソナリティなんだよ!」
(「またヒルーダかよ……」)
「トッキーのラジオ聴きながら寝ちゃうなんて、レッドってホンッッッット失礼な奴!!」
ひとみの言い草に、烈人も負けじと言い返した。
「失礼ってなんだよ、失礼って! 寝られなかった俺を寝つかせてくれたんだから、それはそれで素晴らしいラジオパーソナリティじゃないか」
「トッキーのトークの内容とか全然聞かないのが失礼って言ってんのよ!!」
ひとみは烈人に対する怒りをぶちまけると、プイッと横を向いた。
「もういい! レッドなんかにトッキーのよさは絶対わかんないよ!」
そしてひとみは「今日はトッキーとセネちゃんのラジオの公開生放送だってのに、わからず屋のレッドのせいで気分ぶち壊しだよ!」と誰に向かって言うでもなくつぶやくと、そそくさと自分の部屋に入っていった。
「はいはい。わからず屋で悪かったな!」
烈人もひとみの部屋のドアに向かってそう吐き捨てると、自分の部屋へ戻っていった。
「おい。朝っぱらからひとみとケンカか?」
部屋へ戻ってきた烈人に向かって、ベッドの横に立てかけてあるリスターが声をかけてきた。
烈人はベッドに腰掛けると、リスターを左手首に巻きながら答えた。
「悪いのはヒトミンだぜ。……昨日のラジオ、始まったとたんに寝た俺のことを失礼な奴だなんて言いやがって」
「ラジオ? 常盤草江のか」
「ああ。……ったく、ヒルーダのどこがいいんだか。俺にはさっぱりわからないぜ」
「ま、レッドがヒルーダのことをどう思おうが、それはお前の勝手だ。でもな、サキバサラで育ったひとみにとっては、『メイド・イン・サキバサラ』なヒルーダは特別な存在なんだよ。……レッドだって、自分のお気に入りをディスられるといい気分しないだろ?」
「まぁ……そりゃそうだけどさ……」
「それにな」
リスターが時計の文字盤をゆっくりと点滅させながら低い声で烈人に呼びかけた。
「昨日のラジオ、ひとみの投稿が読まれたらしいぞ。……今から再生するからよく聞けよ」
リスターはそう言うと、内蔵されている録音装置に録った、常盤草江のラジオ番組を再生し始めた。
――次は、ラジオネーム『ヒトミン』さんからのお便りです。
トッキーこんばんは。今日は私の幼なじみの男の子についてトッキーに聞いてもらいたくてお便りします。
その子のことを私は『レッド』って呼んでるんですけど、レッドってば、トッキーやセネちゃん、ヒルーダの皆さんのことを全然認めてくれないんです。私がヒルーダの話を始めると、とたんに不快な顔をして「ヒルーダのどこがいいんだ」なんて言うんです。
私、レッドにもヒルーダのよさを知ってもらいたいのに……。
どうすればレッドにヒルーダのよさを知ってもらえるんでしょうか? トッキーのアドバイスをお願いします。
……ヒトミンさんにお詫びしないといけませんね。
ヒトミンさんの幼なじみのレッドさんに、私たちヒルーダの活動がうまく伝わらなくてごめんなさい。レッドさんに「ヒルーダって思ってたより悪くないかも」って言ってもらえるように、今まで以上に頑張ることをお約束します。――
「……」
烈人は言葉を失っていた。
固まっている烈人に向かって、リスターが静かに声をかける。
「けなげじゃねぇか、ひとみ。……それに、常盤草江もお前がヒルーダを認めないのを自分たちの力不足のせいだなんて言ってさ。……ま、たまにはひとみの顔を立てて、自分からヒルーダに触れてみようとしてもいいんじゃないか? 無理にとは言わねぇけどさ」
「……かもな」
烈人はゆっくりと立ち上がった。
「そういえばさっき、ラジオの公開生放送が今日ある、って言ってたっけ。一緒に行こうって誘ってみるよ」
だが、居間にはひとみの姿はなかった。
「博士。ヒトミンいませんか?」
「ひとみならさっき出かけたよ。『マリンブロッサム』のラジオの公開生放送だったかの」
「わかりました。ありがとうございます!」
烈人はあわてて外に飛び出していった。
常盤草江と総社清音の『マリンブロッサム』のラジオ番組『ピュア☆Hearts』の公開生放送は、FMサキバサラ野外スタジオにて朝10時から行われる。
この番組はサキバサラ全体で人気を博している。公開生放送会場への入場は事前応募制となっており、毎回数十倍もの狭き門となっている。
幸運にも、今回ひとみは応募に当選し、公開生放送会場へ入ることができたのである。
大通りとはガラス一枚だけ隔てた超満員の会場には、『マリンブロッサム』のファンを始め、ヒルーダの他のユニットのファンと思しき観客も数多く見られる。
「あれ? ひとみさん……ですよね?」
『マリンブロッサム』の登場を待つひとみの後ろから、彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。
ひとみは声のした方へと顔を向けた。
「えっ……!!?」
ひとみは目を丸くして驚いた。
「どうして藤原さんがここにいるんですか!?」
殉義は真顔で答えた。
「会場の警備です。……『F-Resh!』のファイナルライヴには『デス』が出没し、先日も『スタースプラッシュ』のライヴ会場で『デス』がらみと思われる殺人事件が起こりました。これ以上、ヒルーダの皆さんの活動を『デス』に邪魔されるわけにはいきませんから」
殉義はそこまで言うと、不思議そうな顔をしてひとみに問いかけた。
「それはそうと、烈人君の姿が見えませんが。今日は一緒じゃないんですか?」
「あんな奴、来るわけないですよ!!」
ひとみは殉義をにらむかのようにして言い返した。
だがすぐに、ひとみは視線を少し下げた。
「それに、この会場に入れるのは抽選で選ばれた人だけなんです。レッドを連れてきたくても……」
「……自分も聞きましたよ。昨夜のラジオ」
「えっ!?」
思いがけない殉義の言葉に、ひとみは驚きを覚えて顔を上げた。
そこには、優しい笑顔を浮かべる殉義の姿があった。
「ひとみさんってけなげですね。烈人君にヒルーダの良さを知ってもらおうと一生懸命で」
「べ……別にそんなことありません!」
ひとみは慌てて殉義の言葉を否定した。
舞台からスタッフの声が観客席に響いてきた。
「間もなく放送を開始します!」
「……では、自分はこれで失礼します。生放送、楽しんでいって下さいね」
殉義はひとみに会釈をしながらそう言うと、会場警備の持ち場へと移動していった。
ひとみは視線を舞台に送り、『マリンブロッサム』の登場を待った。
ほどなく、『マリンブロッサム』の総社清音と常盤草江が舞台に姿を現した。
「皆さんこんにちは! 『マリンブロッサム』の総社清音です!」
「常盤草江です! ……今日は『ピュア☆Hearts』の公開生放送、FMサキバサラ野外スタジオからお送りします。最後までよろしくお願いします!」
「それじゃあ、さっそくですが私たちの新曲、聴いて下さい」
「曲名は『ツインパクト』です」
――頬撫でる風が涼しくなって
二つの影が背伸びをしたら
夏にさよなら 秋が来る
あの日出会ったあなたに惚れて
燃える思いを言葉にしたら
恋が花咲き 実を結ぶ
あなたの声と 私の声が
重なり合えば 無敵なの!
そ・れ・は 二人の思いが奏でる
空前絶後の衝撃
あなたと私のインパクト――
「セネちゃんと私の新曲、『ツインパクト』でした。聴いて下さってありがとうございます」
「そうそう。トッキー、皆さんにお知らせがあるんだよね?」
「はい。……この曲『ツインパクト』は、『マリンブロッサム』結成3周年を記念したイメージDVDのタイトルでもあるんですよ」
「ほほぉ」
「それでですね。突然なんですが、DVD『ツインパクト』に出演してくれる、キラキラ輝いてる男女のペアを大募集しちゃいます! 男女のペアであれば、二人がどういう関係でも全然オッケーです。……詳しいことは、ヒルーダ公式サイトをチェックして下さいね!」
『マリンブロッサム』からのサプライズ告知に、観客席からさらなるどよめきが沸き起こった。
「あ~っ! 私も出てみたい!!」
ひとみも思わず声を上げていた。
しかしすぐに、彼女はうつむいた。
「でも……一緒に出てくれる相手がいないなぁ……。おじいちゃんじゃまず無理だし、レッドなんか論外だし……」
ひとみが頭を悩ませている間に、番組は次のコーナーへと進んでいた。
「次は、『笑魂34』の皆さんの漫才をお送りします!」
「『笑魂34』の皆さん、よろしくお願いします!」
『マリンブロッサム』は舞台の袖に下がり、反対側の舞台の袖から左腕に赤い腕章を巻いた三人組の男が姿を現した。
三人組の男はマイクの前に立つと、順番に名乗りを上げた。
「腐蘭家です」
「悪岡実です」
「怒拉嬉楽です」
『笑魂34』と紹介を受けた男たちの名乗りに、観客の中から違和感を訴える声が上がった。
「『笑魂34』って、スキンヘッドの『K児』と、黒ずくめの服の『チョロ』と、お相撲さんみたいな体格の『シンちゃん』の三人組じゃなかったっけ?」
「なのに今出てきたのって、フランケンシュタインみたいなのと狼男みたいなのとドラキュラみたいのじゃん」
「それに服装だって違うし。『笑魂34』はライオンの絵のついたTシャツで出てくるのに、今出てきた連中は左腕に赤い腕章を巻いてるじゃんか。お前ら革命党かよ!」
「革命党なんかノーサンキューだよ!」
「『笑魂34』を出せ!!」
客席は不満と怒号とに包まれていく。
「うるせぇぇぇぇ!!」
客席に向かって腐蘭家が一喝した。
「俺たちは『笑魂34』なんかじゃねぇ。……俺たちは紅正義の意志を継ぐ、革命党の腐蘭家と悪岡実と怒拉嬉楽だ。俺たちはヒルーダによって阻止された革命を完遂するべく、『マリンブロッサム』を抹殺しに来たのだ!!」
腐蘭家の怒声とともに悪岡実は舞台の袖へ猛ダッシュし、『マリンブロッサム』に向かって襲いかかっていった。
それをスタッフたちが体を張って止めようとする。
「消え失せろ! ザコども!!」
悪岡実は心を闇で包み込んで狼男のような怪物――オオカミデス――に姿を変えると、スタッフたちを爪で切り裂き牙で噛み砕いていく。
血しぶきと断末魔の叫びとが上がる中、オオカミデスはスタッフたちを全員血祭りにあげると、『マリンブロッサム』の姿を追って舞台の袖からバックステージへと消えていった。
この驚愕の展開の前に、客席は静まり返った。
「さて。俺たちはヒルーダを支持するお前らを始末するか。……さっきぶっ殺した『笑魂34』のようにな!」
怒拉嬉楽は客席に向かってそう叫ぶと、心を闇に包み込み、吸血鬼のようなドラキュラデスに姿を変えて客席に飛び込んでいった。
ドラキュラデスは文字通り吸血鬼となって次々に観客を襲い、その血を吸い尽くしていく。
そして腐蘭家は心の闇を解放してフランケンシュタインのようなフランケンデスに姿を変えると、ドラキュラデスから逃れようとする観客を片っ端から殴り飛ばしていった。
逃げ惑う人々の悲鳴と怒号とが渦巻く嵐の中で、ひとみも翻弄されていた。
「邪魔だ!!」
逃げる観客に背中を突き飛ばされて、ひとみはその場に倒れ込んだ。
その数秒後、ひとみを突き飛ばした観客は彼女の目の前でドラキュラデスの牙にかかって息絶えた。
血を吸われて崩れ落ちる亡骸の向こうに、ドラキュラデスの姿が見える。
ひとみの背筋に冷たいものが走った。
逃げなきゃ。でも足が動かない。
魔物の牙は目の前に迫ってきている。
ひとみは泣き叫んだ。
「レッドォォォォォォォォ!!!」
――ダン! ダダァン!
「ぐはぁっっ!!」
ザッザッザッ……
「大丈夫ですか!!?」――
「……大丈夫ですか!!? お怪我はありませんか!」
顔を覆ってその場に座り込んでいたひとみの耳に、何者かの声が聞こえてきた。
ひとみは恐る恐る顔を上げてみた。
「ふじ……わらさん……??」
ひとみの目の前には、彼女を『デス』から守るべく立ちはだかる殉義の大きな背中があった。
「ひとみさん。お怪我はありませんか?」
「はい……。大丈夫です」
「よかった。……会場に現れた『デス』は自分が『狩り』ます。ですから、ひとみさんは早く安全な場所へ避難して下さい」
ドラキュラデスに厳しい視線と拳銃の銃口を向けたまま、殉義はひとみに向かってそう言った。
ひとみはそんな殉義の背中に向かって黙って一礼すると、会場出入口に向かって走っていった。
殉義に撃たれたドラキュラデスが立ち上がってきた。
「おい……なに格好つけてんだよ、クソ刑事! 狩りの邪魔すんじゃねぇ」
「それはできない話だな」
殉義はドラキュラデスに向かってそう言い返すと、スーツの内ポケットからスマートセルラーを取り出した。
「今度は自分がお前を狩る番だ」
殉義はスマートセルラーの『EVOLCHANGE』アイコンをタップすると、スマートセルラーを耳元に持っていった。
「変進!」
殉義の腹部に出現した狼虎チャージャーにスマートセルラーをセットしたその瞬間、「WolfTiger」の機械音とともに殉義は氷のオーラに包まれた。
そして氷のオーラが砕け散ると、そこには殉義が『変進』したイクサバイバー・狼虎の姿があった。
狼虎はブリザーベルショットの銃口をドラキュラデスに向けて言い放った。
「『デス』は法では裁けぬ存在。ならば自分がお前に判決を言い渡す。……死刑だ」
その頃、烈人はサキバサラの街をさまよい歩いていた。
「……『マリンブロッサム』のラジオの公開生放送会場がどこなのか知らずに飛び出したのはレッドらしくないな」
リスターの的を得たツッコミに、イラ立ちながら烈人は言い返した。
「お前からヒルーダにアプローチしてみろ、って言ったのはリスターじゃんか」
そのとき、『デス』の出現を感知したリスターが警告音を発した。
「『デス』が現れた。FMサキバサラ野外スタジオだ」
「FMサキバサラ? どこなんだよ、そこ」
「ここからは少し距離がある。だけど、研究所までブレイズストライカーを取りに戻る時間的余裕なんかないぞ。俺が案内するから走っていけ」
「ちょっと遠いのか。だったら……!」
烈人はその場でブレイズチャージャーを起動させると、エヴォルチェンジ・メモリカードをブレイズチャージャーの左メモリスロットにセットした。
「変進!」
(「おい! 街の中で『変進』するなんて、なに考えてんだよ!?」)
「時間的余裕はないんだろ?」
リスターのツッコミをサクッと切り返すと、ブレイゾンはブレイズチャージャーの右メモリスロットにソードテクター・メモリカードをセットした。
「……道案内よろしく!!」
ブレイゾンはジェットローラーブレードを全開させて、FMサキバサラ野外スタジオへと向かっていった。
狼虎のブリザーベルショット連射がドラキュラデスの体に的確にヒットしていく。
ブリザーベルショットがヒットするたびに、ドラキュラデスは体をよじらせ、苦悶の声を上げる。
ドラキュラデスが大ダメージを受けたのを確信した狼虎は、一気に決着をつけるべくスマートセルラーの『BLAST END』アイコンをタップしようとした。
だが次の瞬間、狼虎は背中に強烈な衝撃を受けてその場に倒れ込んだ。
「遅ぇぞ! 腐蘭家」
狼虎を背後から襲ったのはフランケンデスであった。
「怒拉嬉楽こそイクサバイバー相手になに手こずってんだよ」
倒れ込んでいる狼虎を見下すかのようにフランケンデスは言った。
ドラキュラデスがフランケンデスのところに近寄ってきた。
「じゃあ、とっとと殺そうぜ」
「そうだな。異議なし!」
『Blaze Trigger!』
「ぐげぇぇぇ!!」
「ぎゃばぁぁぁ!!」
狼虎を襲おうとしていたフランケンデスとドラキュラデスが何者かの攻撃によって吹き飛ばされた。
立ち上がった狼虎が後ろに視線を送ると、そこにはブレイズトリガーを構えるブレイゾンの姿があった。
「……ったく、こいつらは他人に迷惑かけることしか能がないのかよ」
狼虎はブレイゾンのところへ駆け寄った。
「烈人君! 来てくれたんですね」
「『デス』を狩るのはイクサバイバーの使命ですから。……これで頭数は同じになりました。さっさと倒しちゃいましょう!」
ドラキュラデスとフランケンデスはイクサバイバーに向かって次々と不満げな声を上げる。
「ふざけんな! イクサバイバーはヒルーダ同様、革命党の革命を邪魔する敵だ!」
「俺たちの革命を邪魔する奴は、誰であろうと叩き潰してやる!!」
「……てめーらなんかにやられる俺たちじゃねぇよ」
ブレイゾンは『デス』に向かってすかさずそう言い返すと、左肩を一回前に回転させてコキリと音を鳴らし、『デス』を指差しつつ決めゼリフを放った。
「闇より生まれし邪悪な生命、熱き炎で焼き払う。……覚悟はいいな? 殺戮者!!」
ブレイゾンはアクセラレータ・メモリカードをブレイズチャージャーの右メモリスロットにセットすると、目にも留まらぬ速さでフランケンデスに迫り、打撃の雨を降らせた。
フランケンデスも一撃必殺のパンチを振り回すが、超高速で動き回るブレイゾンには一発もヒットしない。
そしてマグマアッパーからのスイクルバーニングという連続技が炸裂し、フランケンデスは大きく吹っ飛ばされてダウンした。
一方、狼虎はブリザーベルで何度もドラキュラデスを斬りつけた。
元々の戦闘能力はドラキュラデスよりも狼虎の方が圧倒的に上回っており、狼虎の猛攻撃の前にドラキュラデスはなすすべもなく打ちのめされ、吹っ飛ばされた。
ブレイゾンはブレイズチャージャーの右メモリスロットにブラストエンド・メモリカードをセット、狼虎はスマートセルラーの『BLAST END』アイコンをタップし、必殺技を同時に発動させた。
「ブレイズエクスプロージョン!」
ブレイゾンの飛び蹴りがフランケンデスの胸板に炸裂する。
「クリスタルスラスト!」
狼虎のブリザーベルによる刺突がドラキュラデスの胸板を貫く。
そしてイクサバイバーは『デス』に対して死を宣告した。
「爆散」
「閃壊」
フランケンデスは爆発し、ドラキュラデスは砕け散った。
「終わったな……」
ブレイゾンはそう言うと、ブレイズチャージャーの左メモリスロットからエヴォルチェンジ・メモリカードを抜いて『変進』を解除しようとした。
そんなブレイゾンの手を狼虎の手が制した。
「まだです。この会場に現れた『デス』はあと一体います」
「あと一体? どこにいるんですか」
「『マリンブロッサム』のお二人を追って……。いけない! 早くその『デス』を倒さないと『マリンブロッサム』が奴の毒牙に!!」
狼虎とブレイゾンは、ステージに向かって駆け出していった。
しかし、二人が数歩進んだところで、『マリンブロッサム』を追ってバックステージへと消えたはずのオオカミデスが再びステージに姿を現した。
だがその足取りはおぼつかなく、目もうつろである。そして全身には蔦のような植物が絡みついている。
「……」
オオカミデスは唇を動かして何かを訴えかけようとしていたが、声にはならなかった。
そしてオオカミデスは力尽きたかのようにその場に倒れ込むと、その数秒後には干からびたミイラのような姿に変わり果てた。
「何が……起こったんだよ……?」
「自分たち以外にも『デス』を狩る能力を持つ者が存在するということなのでしょうか……」
ブレイゾンと狼虎は、オオカミデスの不可解な最期に驚きを禁じ得なかった。
「『デス』をやっつけたんですね!」
ブレイゾンと狼虎の後ろから、ひとみの声が聞こえてきた。
ブレイゾンと狼虎は静かに『変進』を解除した。
「ヒトミン。今朝は俺が悪かった」
烈人と殉義のところへ駆け寄ってくるひとみに向かって、烈人はそう言いながら頭を下げた。
だが、ひとみはそんな烈人の横を素通りすると、殉義の目の前に立った。
そして烈人に見せつけるかのように殉義と腕を組むと、明るい声で言い放った。
「決めた! 私、『ツインパクト』の男女ペア、藤原さんと一緒に出る!!」




