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第9話 ~雷嵐(Reproduction of "Star Splash")~

「昨日のライヴ対決は『Y.(ワイ)E.(イー)S-(エス)55(ゴーゴー)』の勝ちだ。以後、北東エリアは『Y.E.S-55』に任せる」

ヒルーダ事務所にて、太地は『Y.E.S-55』と『スタースプラッシュ』の面々に向かってそう言った。

「ま、だから言ったっしょ。こんなのやるまでもない、『強い奴が勝つ』んだけどさ」

高らかに勝利宣言をする渚の言葉を、稲枝と志都美は悔しげに聞いていた。

「あ、それはそうとさ。『能登川』、『香芝』」

ライヴ対決で勝利したのを受けてか、渚は先輩である稲枝と志都美を呼び捨てにして呼んだ。

 それには太地も苦言を呈した。

「渚。昨日のライヴ対決ではお前たちが勝ったとはいえ、稲枝と志都美はお前たちの先輩だ。先輩を呼び捨てにするな。先輩に対しては敬語を使いなさい」

 だが渚はそんな説教など右の耳から左の耳にスルーし、

「なんで強いうちらが弱い『スタースプラッシュ』なんかに敬語使わなきゃいけないのさ? ま、悔しかったらうちらを超えてみろってことなんだけどさ」

と吐き捨てると、続けて

「そーいえばさ、昨日、うちらのライヴにちょっと変わったお客さんが来てさ。ま、『デス』に姿を変えてライヴをめちゃくちゃにしてくれたんだけどさ。……いくら実力じゃ勝てないからって、自分らのファンの『デス』をうちらのライヴに乱入させるのって、どーいうつもりなのかなぁぁぁ??」

と嘲るかのように問いかけてきた。

 だがそのことは、稲枝と志都美にとっては寝耳に水の話であった。

「ちょっと、それどういうこと?」

「私たち、全然知らないわよ!」

 二人は驚いた表情で渚に言い返した。

 一方、渚はさっきまでの様子から一転、「全然怒ってないよ」という表情をして、

「ま、そんなことに腹を立てるほどうちは小者じゃな・い・し、その『デス』はブレイゾンが倒してくれたんだけどさ。……ま、おかげで、かなえのIQ400の頭脳の中にブレイゾンの正体となる人物の身体的特徴が記録されたんだけどさ。それについては礼を言わせてもらうよ。サンキューな。能登川。香芝」

と、頭を下げることなく二人に礼を言った。

 ここで太地が話に割って入った。

「渚。さっきも言ったはずだ。先輩を呼び捨てにするな! 先輩に対しては敬語を使いなさい! これはお前個人だけの問題ではなく、ヒルーダ全体にかかわる問題なんだ!!」

「ほいほい。あんまり怒りすぎるとハゲるのが加速しちゃうよ、下里さん」

髪が薄くなってきているのを気にしているのか思わず頭へ両手をやっている太地に向かって渚はそう言うと、改めて稲枝と志都美に向かって、

「下里さんが怒ってハゲになっちゃうとかわいそうなので言い直します。……先輩方のおかげで、かなえのIQ400の頭脳の中にブレイゾンの正体となる人物の身体的特徴が記録されました。どうもありがとうございます。能登川『さん』。香芝『さん』」

と棒読み風の口調で礼を言い、軽く頭を下げた。

「やればできるじゃないか」

太地は渚に向かってひとことぼやくと、

「ときに、稲枝と志都美の処遇だが……」

と低い声で話し始めた。

「そういえば能登川さんはボクたちに負けたらヒルーダを辞める、芸能界を引退する、とまで言ってましたよね……」

佐奈はそう言って稲枝と志都美に向かってさげすむような視線を送った。

 稲枝と志都美はうつむき、どんな処遇になろうともそれを甘んじて受けよう、と心に決めていた。

 そんな重苦しい空気の中、太地は稲枝と志都美の処遇を当人たちと『Y.E.S-55』に向かって通達した。

「『スタースプラッシュ』は、『F-Resh!(エフ・レッシュ)』が活動していた南西エリアに活動拠点を移してもらう。それ以上の処分はヒルーダとしては行わない。……以上だ」

 太地からの通達を聞き終えると、稲枝と志都美は太地に向かって深々と一礼した。そして回れ右をすると、二人は事務所から出て行った。

 そんな二人の背中に、

「クビにならなくてよかったな。ま、北東エリアはうちらが盛り上げてやっから、あんたらは三流グラドルの後がまとしてせいぜい頑張れってことなんだけどさ。能登川、香芝」

という、上から目線の渚のエール(というよりは皮肉か侮蔑)が突き刺さっていた。


 南西エリア、『F-Resh!』御用達だったライヴスペース『ゼファー』にて、『スタースプラッシュ』の再スタートライヴが行われることになった。

 開演前、稲枝と志都美はこれを機に一から出直そう、ファンひとりひとりを大切にしていこう、とお互いに誓い合った。

 そして二人はステージに上がった。

 客の入りは半分程度。ヒルーダトップメンバーのライヴとしては、あまりかんばしくない客の入りである。

 それでも、二人はここに来てくれたファンのために一生懸命歌おうと心に決めていた。

 だが、二人がステージに上がったその瞬間、客席から冷たい罵声が二人に浴びせられた。

「新人に負けたから南西エリアへ左遷か! 南西エリアは北東エリアの廃品回収場なんかじゃないぞ!!」

「お前たちは新人に負けた『負け犬』だ!!」

 観客の大部分が、稲枝と志都美に向かって「負け犬」コールをした。

 稲枝と志都美の心は悲しみに包まれていた。


 ……確かに、『スタースプラッシュ』は『Y.E.S-55』に敗れた。そして『スタースプラッシュ』は、『連続猟奇殺人事件』に巻き込まれて死亡した高平ましろ、ファイナルライヴの途中で『連続猟奇殺人事件』の被害者となった柴山香住と重安美祢の三人(実は三人とも『デス』であり、イクサバイバーによって倒されていた)によるユニット『F-Resh!』の『代役』、あるいは『Y.E.S-55』に追い落とされた『左遷』のような形で南西エリアにやってきた。

 しかし、『スタースプラッシュ』はヒルーダトップメンバーによるユニットである。いわばサキバサラのトップアイドルである。その『スタースプラッシュ』を、観客たちは「負け犬」としか見ていない。それはあまりにも厳しい仕打ちである。

 だが、これが現実である。

 稲枝も志都美もこの現実を甘んじて受け入れるしかなかった。


「イナちゃんとしずみッちは『負け犬』なんかじゃない!!」

観客席の前方にいた観客の中から、後ろで「負け犬」コールをしている連中に向かって反論する大声が稲枝と志都美の耳に飛び込んできた。

 彼のそばにいた観客たちも、

「この前『スタースプラッシュ』が『Y.E.S-55』に負けたのは認める。だけど、イナちゃんもしずみッちも南西エリアでもう一度やり直そうとしているんだ。それを応援することが、『ヒルーダ』のファンとしてのあるべき姿じゃないのか!?」

「『スタースプラッシュ』は『F-Resh!』の分も一生懸命やってくれるはずだ。温かく見守ってやってほしい!」

と、『スタースプラッシュ』をかばう発言をしている。

 二人はハッとなった。

『今、私たちをかばってくれているのは、先日の『Y.E.S-55』とのライヴ対決のときに私たちのライヴ会場に来てくれた人たちだわ!』

 彼らは言っていた。「僕らはどこまでも『スタースプラッシュ』についていくよ」と。「俺は、二人に名前を覚えてもらいたくて追っかけやってるんじゃない。イナちゃんとしずみッちのことを、『スタースプラッシュ』のことを応援したいから、追っかけやってるんだ」と。

 彼らの言葉は嘘偽りではなく真実だったのだ。

「イナちゃん、しずみッち。二人を『負け犬』呼ばわりしている連中に、二人の本当の力を見せてやるんだ!!」

「二人には俺たちがついてるぞ」

 稲枝と志都美は、北東エリアから南西エリアの『ゼファー』にわざわざ足を運んでくれた熱烈なファンの声援に、涙が出そうになるほどのうれしさを覚えていた。しかし、今ここで泣くわけにはいかない。今は新生『スタースプラッシュ』初ライヴの最中なんだから。

 二人はぐっと顔を上げ、歌い始めた。


――彼はみんなの憧れの的 いつもちやほやされている

  それを遠くから見てるだけ 私の気持ち伝えられない

  携帯の番号も知らないし メールアドレスも知らない

  だけど本当に それでいいの?


  彼のことが好きなんだったら 彼にも私を好きになってほしい

  彼のことが好きなんだったら 自分の気持ちを言わなくちゃダメ


  ありがちなシチュエーション 放課後の校門

  だけどやるならストレート!

  自分の気持ちを直接伝えよう――


 二人の歌声に、「負け犬」コールをしていた観客たちもいつしか聞きほれていた。

 そしてライヴが終わる頃には、ほぼ満員となった『ゼファー』の観客のほとんどが、『スタースプラッシュ』に好意を抱くようになっていた。

「思ってたより歌上手じゃん」

「今までは『F-Resh!』を応援してきたけど、これからは『スタースプラッシュ』のことも応援するよ!」

 ライブが始まるときには自分たちを「負け犬」と呼んでいた観客たちの好意の言葉に、稲枝も志都美もうれしさのあまり涙を禁じえなかった。

「みなさん……どうもありがとうございます」

「私たちはまだまだ未熟者ですけど、皆さんのご期待に沿えるように、精一杯頑張っていきます。だからこれからも、私たち『スタースプラッシュ』のことをよろしくお願いします!」

 深々と観客に向かって一礼する稲枝と志都美に対して、観客からは惜しみない拍手が送られた。


 だが、この心地よい空間をぶち壊してやろうという輩が現れた。

 その男はバイクに乗ったまま『ゼファー』の観客スペースに飛び込み、観客たちを追いかけ回し始めた。

「昨日まで『F-Resh!』を応援してたくせに『スタースプラッシュ』に鞍替えか。てめーらには誇りってもんがねぇのかよ!」

バイクの男は絶叫しながらエンジンをふかし、さらに加速して観客たちを追いかけ回した。

 観客たちは逃げ惑い、『ゼファー』から駆逐された。

 バイクの男はバイクを止めてバイクから降りると、胸の内ポケットからサバイバルナイフを取り出した。

「能登川稲枝! 香芝志都美! ここはお前たちの来るところじゃない。柴山香住、重安美祢、高平ましろの、『F-Resh!』のものだ!!」

 バイクの男はそう絶叫すると、サバイバルナイフを構えながらステージ上の稲枝と志都美に向かって迫ってきた。

 この男、本気で稲枝と志都美を殺す気である。

 そこへ、北東エリアから来た『スタースプラッシュ』の熱烈なファンたちが、稲枝と志都美の盾になるべく立ちはだかった。

「ふざけんな!」

「『スタースプラッシュ』を暴力で排除しようというのは許さない!」

「イナちゃんとしずみッちは俺達が守る!!」

 だがバイクの男は構わず『スタースプラッシュ』のファンのひとりの腹を刺した。

 刺されたファンはその場にうずくまり、腹から流れ出た血にまみれて動かなくなった。

「てめぇ! よくもやりやがったな!!」

 他の『スタースプラッシュ』のファンが一斉にバイクの男に飛び掛かった。

 ボコボコにされながらも、バイクの男は血のついたナイフを振り回して抵抗を続ける。

 稲枝と志都美は争いを止めるべく、叫ぶようにしてバイクの男とファンたちに呼びかけた。

「皆さん! やめて下さい!! 同じヒルーダのファン同士じゃないですか! どうしてファン同士が傷つけ合うようなことをしなくちゃいけないんですか!!?」

「……そんなの、私たちはもちろんですけど、亡くなった香住も美祢もましろも望んではいません!!」

 しかし、バイクの男と『スタースプラッシュ』のファンたちの乱闘は止まらない。

 稲枝と志都美は困った表情をしてお互いに顔を見合わせた。

「……仕方ないわね」

「そうね」

 稲枝と志都美はそうつぶやくと、心を暗い闇で覆い尽くした。


「えっ……!」

「な……なにが起こったんだ……!!?」

 バイクの男と『スタースプラッシュ』のファンたちの動きが一瞬止まった。

 稲枝と志都美の心の闇の深さを示すかのようにあたりは漆黒の闇に染まり、バイクの男の持つサバイバルナイフだけが、かすかに残った光を反射して輝いている。

 そしてバイクの男と『スタースプラッシュ』のファンたちがステージに顔を向けると、そこには人間の姿かたちによく似ているが全身が灰色の生命体――『デス』が二体立っていた。

 その二体の『デス』はギリシャ神話に登場する女神のような姿をしており、そして殺意に満ちたオーラを全身にまとっていた。

「我々は人類を超えた存在であり、人類の天敵でもある『デス』だ」

ステージ右側の『デス』――ライトニングデスが言った。

「我々に逆らおうとする者には死を与える」

ステージ左側の『デス』――ストームデスが言った。

 バイクの男と『スタースプラッシュ』のファンたちは、『デス』の出現に驚愕した。

「お……おい! 能登川稲枝と香芝志都美はどこに行った!?」

恐怖に顔をひきつらせつつも、バイクの男はステージの上の『デス』に問いかけた。

 ライトニングデスとストームデスは冷たく答えた。

「その問いに答える必要はない」

「なぜならお前たちは全員、今すぐこの場で死ぬのだからな」

 ストームデスの腕から激しい風が巻き起こり、バイクの男は風に飲み込まれて宙に舞った。

 次の瞬間、バイクの男は自分の乗ってきたバイクに体をぶつけて倒れた。

 その反動でバイクは転倒し、燃料タンクから漏れたガソリンが引火して爆発が起こった。

「ぐ……ぐわぁぁぁ!!!」

 バイクの男は全身を炎に焼かれ、あっけなく絶命した。

「次はお前たちの番だ」

この光景に息を飲む『スタースプラッシュ』のファンたちに向かってライトニングデスは冷たくそう言うと、電撃を帯びた右の手のひらを『スタースプラッシュ』のファンたちに向けた。

 『スタースプラッシュ』のファンの一人が叫んだ。

「どうして俺たちがお前らなんかに殺されなきゃならないんだ!?」

 他の『スタースプラッシュ』のファンたちも、それに呼応して「そうだそうだ!」「俺たちはイナちゃんとしずみッちをあの男から守りたかっただけだ!」と口走りながら、ステージの上の『デス』をにらみつけた。

 ライトニングデスとストームデスは答えた。

「あなたたちの気持ちはうれしいわ。でも、私たちの言うことを聞いてくれないファンなんかいらないの」

「私たちは『ファン同士が傷つけ合うことはやめて』って言ったわよね……」

 ステージの上の『デス』の言葉に、『スタースプラッシュ』のファンたちは驚きの声を上げた。

「えっ……!!?」

「ま……まさか……!!」

 だが、ライトニングデスはこれ以上ファンたちに言葉を発させなかった。

 ライトニングデスの右の手のひらから放たれた電撃は、その場にいた『スタースプラッシュ』のファン全員を直撃し、ファンたちはひとり残らず息絶えたのだった。

 そして自分たちに逆らった者を粛清したライトニングデスとストームデスは、静かにその場から離れた。


 それから約30分後、通報を受けた警察が『ゼファー』に到着した。

 死亡した被害者たちの遺体の状態があまりにも異常であったため、殉義の所属する『連続猟奇殺人事件対策班』も現場に呼ばれた。

 殉義は遺体を見た。

 炎に焼かれた遺体。

 全身が落雷でも受けたかのように黒く焦げた遺体。

(「この事件の犯人はおそらく『デス』だ。……しかし、人間を糧にして生きているはずの『デス』が、どうして今回はこの被害者たちを食べなかったのだろう」)

 被害者たちの遺体を見つめながら、殉義は考えを巡らせていた。


 その頃烈人は、北西エリアに現れた二体の『デス』を追いかけていた。

 この二体の『デス』――角が一本のガキデスAと角が二本のガキデスB――は、道行く人々を無差別に襲い、その体をむさぼり食っていた。だが、どれだけ食べても満足できないのか、次々と人々を襲っていく。

 そんな、まさに餓鬼ガキのような二体の『デス』に向かって、烈人はブレイズチャージャーを起動させると、右手にエヴォルチェンジ・メモリカードを持ち、両手を前に突き出して「変進エヴォルチェンジ!」の発声とともにエヴォルチェンジ・メモリカードをブレイズチャージャーにセット、「Blaze-on!!」の音声とともに、イクサバイバー・ブレイゾンへと『変進』した。

 ブレイゾンは左肩を一回前に回転させてコキリと音を鳴らし、

「闇より生まれし邪悪な生命いのち、熱き炎で焼き払う。……覚悟はいいな? 殺戮者!!」

と言って二体のガキデスを指差した。

 二体のガキデスは猛然とブレイゾンに向かって襲いかかってきた。

 ブレイゾンは右メモリスロットにアクセラレート・メモリカードをセットすると、超高速移動で敵を翻弄しつつ、素早いパンチやキックを二体のデスに浴びせた。

 この攻撃で、ガキデスAは大きなダメージを受けたようだ。

 ブレイゾンは右メモリスロットにセットするメモリをアクセラレート・メモリカードからソードテクター・メモリカードにチェンジし、ソードテクターの刃でガキデスAを斬りつけていった。

「実はさ、俺、新しい技を考えたんだ」

ブレイゾンはそうつぶやくと、ブレイズチャージャー上部右のマグマアッパー発動ボタンを押し、ジェットローラーブレードの出力を全開にして滑るようにガキデスAに突っ込んでいった。

 そしてブレイゾンはマグマアッパーを放つかのように右腕を振るい、ソードテクターの刃でガキデスAの左胴から右肩に抜けるように切り裂いた。

「アサルトブロウクン!!」

 マグマアッパーの持つ炎のエネルギーをソードテクターの刃に集めて切り裂く、というブレイゾンの新技の前に、ガキデスAはその場に倒れ、爆発して散った。

(「レッド、やるじゃねぇか。ソードテクターにこういう使い方があるなんて思いもつかなかったぜ」)

 リスターの賞賛を受けたブレイゾンは、残るガキデスBに目を向けた。

 ガキデスAを目の前で倒されたガキデスBは、これはやばい、とばかりに、逃げる態勢に入っていた。

「逃がさねぇぜ!」

ブレイゾンはそう言い放つと、右メモリスロットにブラストエンド・メモリカードをセットした。

「Blast End!」

 闇を失い光に包まれたガキデスBは、その場で動けなくなった。

「ブレイズエクスプロージョン!!」

 ブレイゾンの飛び蹴りがホログラフを突き破るたびに、「Five」「Four」「Three」「Two」「One」の音が響き渡る。

 そして「Blaze-on!!」の音とともに、ブレイゾンはガキデスBの背中に蹴りをヒットさせた。

 ブレイゾンのキックによって行動の自由を取り戻したガキデスBは、一瞬足元をふらつかせはしたものの、すぐに体勢を立て直し、一目散にその場から逃げ去ろうとしていた。

 しかし、それは無駄なあがきでしかなかった。

「爆散」

 ブレイゾンの死の宣告とともに、ガキデスBの全細胞は爆発し、跡形もなく滅び去っていた。

 二体の『デス』を狩ったブレイゾンは『変進』を解いて垂水烈人の姿に戻ると、ブレイズストライカーに乗り込んでその場から去っていった。


 『ゼファー』での事件があった翌日。『スタースプラッシュ』の二人は記者会見を開いていた。

「昨日の……私たちのライヴで……大勢のファンの方が亡くなり……なんとお詫びしていいのか……」

「北東エリアのファンの方々や……南西エリアのファンの方々に……申し訳が……」

稲枝と志都美は嗚咽しながらコメントを発していた。

 だが会見の最後には、二人は涙を振り払ってきっぱりと言い切っていた。

「でも……だからこそ、私たちは歌い続けなければならないと思うんです!」

「亡くなったファンの方々のためにも、私たちの前に南西エリアで活躍していた『F-Resh!』のためにも、そして、ヒルーダを、『スタースプラッシュ』を応援して下さるファンの方々のためにも……!」

 そんな『スタースプラッシュ』を、南西エリアのファンは全面的に支持した。

 そして彼女たちの新曲『Lightning Storm』は、『スタースプラッシュ』として初めて、CD売り上げランキング週間1位を獲得したのである。


――稲妻が轟く 嵐が吹きすさぶ

  私は恋の悪魔になる

  清純を脱ぎ捨て 妖しさを身に着け

  あなたは誰にも渡さない

  Lightning Storm……―

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