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冷たい彼女

作者: やきいも仮面

「もしもし?」

「もしもし。」

「突然どうしたの?」

「ちょっとね。」

「声が聴きたかったの?」

「そうだよ。」

「私も!」

「ありがとう。」

「明日空いてる?」

「空いてるよ。」

「デートしよっか!」

「そうしようか。」

「眠いの?」

「少しね。」

「寝るの?」

「そうしようかな。」

「おやすみ!」

「おやすみ。」

「明日はどこ行こうか?」

「どこでもいいよ。」


 人口の雪が降る。かじかむ手をポケットに入れる。クリスマスソングが街に流れている。もうそんな季節か。

低い空には人口雲が立ち込めている。 ‎

何度目かは覚えてない。毎年毎年同じ事の繰り返しだからな。

 人の作った世界で、人の作った「人々」が暮らして、やがてそれらは壊れ、死んでいく。

その歯車に自分達も組み込まれて、寿命が訪れれば無情に外される。そうやってこの社会は回ってゆく。

 次に外されるのが今すれ違った人かもしれないし、私かもしれないし、愛する彼女かもしれない。

そんな漠然としたことに対して覚悟をするつもりも無いし、できる勇気も持ち合わせていない。

 先日、ある人が言っていたことを記憶している。

どれほど科学が進んんだところで未来だけは見ることができないと。


 彼女がやってきた。周りから浮いている少し奇抜なファッションに身を包んでいる。

変わった子だが私はそんな所が好きだ。

「待たせた?」

「今来たとこ。」

定番のやり取りを済ませたら二人は歩みを進める。

「今日はどこ行こうか?」

「どこでもいいよ。」

これまた定番の適当なやり取りをする。

 今日は特に何も決まってないが何となくデートをしに来た。

「朝食べた?」

「まだ食べてない。」

という事で二人は朝食を取りに行くことにした。


 少し歩いて、適当なカフェに入った。

私は帽子を外しコートを脱いで、彼女のコートを受けとる。

メニューを二人で眺めながらあーだこーだ言った後、私はフレンチトースト、彼女はブリオッシュを頼んだ。

 食事を待っている間に店内を見渡す。この店の店長には懐古趣味があるようで、物理回路を持った照明で店内は照らされ。

紙に描かれた絵画などが飾られている。


 ブリオッシュを美味しそうに口に運びながら彼女は喋り始めた。

「これからどうしようか?」

「どうしようね。」

何も考えずにそう返答した。

「動物園に行こうか!」

「いいね。」

彼女に促されて動物園に行くことになった。


 電車に乗って少し歩いて動物園に着いた。

入場してすぐに大きなパンダが出迎えてくれた。

パンダというものはパッと見た感じは可愛いが、よく見ると熊と大差ない強面だ。

彼女ははしゃいでる。彼女が楽しいならそれでいい。

 鳥、爬虫類、小動物、大型哺乳類。どの場所でも彼女は楽しそうにしている。あっちこっちと飛び回る彼女に着いていくだけで精一杯だ。

私は動物達よりも彼女に目が行っていた。

あぁ、幸せというのはこういうことを言うんだろうな。


 一通り見終わったあと動物園を出て、辺りを散歩をする事にした。

枯葉の落ちきった並木道を歩く。

道の端で枯葉やゴミを掃除用アンドロイドがせっせと片付けている。

 今の時代のアンドロイドは生身の人間と見まごうほどに良く出来ている。

人工皮膚、人工知能、内部機構。

一つとして人間と同じ部分は無いのに、まるで本物の人間かのように振る舞う。

まったく、発明してくれた人達に感謝したい。

 薄く雪の積もった綺麗な道に二人分の足跡を付けながら歩く。

「このあとどうしようか?」

「どうしようね。」

気のない返事をする。

「お腹減った?」

「少し減った。」

「ご飯にする?」

「まだいいかな。」

そんな他愛の無い会話を繰り返していたら、突然空を切り裂くような音量でサイレンが鳴り響いた。


『--コロニー外壁に異常が発生しました。居住者の方達は直ちに避難用シェルターに避難をしてください。繰り返します。コロニー外壁に--』


 何か事故が起きたらしい。避難しなくては。私は彼女の手を取って走り出した。

「なんだろうね?」

「分からない。」

 とにかく走る。彼女を助けなくては。

避難場所はどこだ。行き先を指すサインを見つけた。角を曲がる。

ひたすら走る。息があがってきた。

「大丈夫かな?」

「きっと大丈夫さ。」

 まずい。何が起きたかは知らないが早く避難場所を探さなくては。息が苦しいが諦めない。

「大丈夫?」

「大丈夫。」

 走る速度が落ちてきた。こんなに体力が無かっただろうか。

耳をつんざくサイレンはまだ鳴り響いている。

立ち止まる。苦しい。目眩がする。

「大丈夫?」

「……大丈夫だよ。」

 立っていられない。膝を付く。呼吸が荒くなる。酸素が低下しているらしい。

コロニーに穴が空いたようだ。

「どうしたの?」

「……どうも……しない…よ…。」

 大分酸素は減ってきてしまっているらしい。

朦朧とする意識の中、彼女の屈託の無い天使のような笑顔がかろうじて目に入る。

「…寝るの?」

「…そう……しよう…かな……。」

温かく感じる訳はないのに、彼女の手のひらは不思議と落ち着く。

「一緒に寝よ!」

「…駄…目……だ…よ…。」

この人に出会えて幸せだなぁ。

「おやすみ!」

「……お…や……す………



「…明日はどこ行こうか?」








 目が覚めた。バッテリーが切れてしまっていたようだ。常備バッテリーが切れた後、10分後に非常用バッテリーに切り替わるように設定されていた。

気体情報をスキャンする。穴は塞がったようだが、酸素は完全に無くなってしまったようだ。

 そうだ、彼女は?私が眠る時はまだ避難場所に逃げるだけの酸素はあったはずだ。

軋む首を動かしどうにか頭を回す。

彼女は横で眠っていた。

私の手を握り、温かく微笑んでいた。

 SFが書いてみたかったのでちゃちゃっと書いてみて、そしたら駄作になっちゃったんですけど、ちょちょっと手を加えたら個人的に結構好きな感じにできあがりました。

何かを隠してものを書くのは本当に難しいですね。

頑張ってタネを隠そうとするマジシャンみたいだ。

 軽く書いたものなので、世界感とか世界設定は物凄くふわふわしています。

おかしい部分が多々ありますが適当に辻褄合わせてやってください。

 アンドロイドが飯食うなよって思うかもしれませんが、あれは栄養を摂るために食べるんじゃなく。人間のような行動をすることに意義があるとプログラミングされています。イメージは攻殻機動隊。

食べる仕組みはアトムが人間のフリしてご飯食べてたのと同じ感じ。

 ここまで読んでくださってありがとうございます。楽しんで頂けたら幸いです。

ではまた。


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