"本物" part3
「先輩っ!夏野さんの所見てきますね。」
「あんたはまたそうやって。行かなくていいわ。ナースも入室禁止よ。」
「じ、じゃあナース以外にだ・れ・が体拭いたり部屋掃除したりするんですか?」
「もう居るわ。専属の。恋人かしらね。」
……………………………。
「んん…」
「寝てていいのよ。大丈夫。」
「ヒカリさぁん……俺はダメだよ…ダメ男どころじゃないんだよぉ…」
「そんなことないわ。頼りになる勇者様よ。よしよーし。」
ナデナデ…
「俺…何もっ救えない…エルが!エルが力を貸してくれてんのにぃ!」
「……いいの。十分に戦えてる。ナギ君は強いわ。」
「うぅ……」
「気が済むまで私が傍にいるから…ね。」
…………………………。
(先輩っ!ここ病院ですよ!これ私達に隠れて色々と…)
(バカ言わないのっ。ほら、聞き耳立ててないで、山乃裏さんのとこ行くわよ。)
(先輩!そこは嫌です!セクハラじじぃなんです!)
(言う事聞かないならあなたを専属にするわよ?)
「お、おほん。行ってきます。」
「よろしい。」
……………………………。
「おう…そうだ。俺のことはもう少しカッコよく…いいねぇ。その調子で書き終えたら読むからな。」
「はい!」
「っは!報告書なんて書かせりゃあいいんだよな。楽だねぃ〜…んぐ!んぐ!んぐ!っぷはぁ!昼から飲む酒がどうしてこんなに美味いんだ!これこそ魔法ってもんだよ!」
「…魔王は…これで3人か。でも強さが違う。"本物"はまだ1人だけだろうな。勇者の奴らを育てて"本物"にしねえと、まーた俺が戦いに出なきゃいけなくなる。それはめんどくせえ。な!そうだろ!」
「………」
カタカタカタ…カチカチ…
「おい!」
「は!はいぃっ!!」
「っは!…んぐ!んぐ!んぐ!…っぷはぁ〜!くぅ〜!」
………………………。
「んあ?タロウじゃねえか!どうしたんだ。」
「バガ。今回の一件、私は最強の勇者として力不足を痛感している。」
「まぁこれから強くなりゃあいいだろ!」
「いや、これからではなく今すぐ強くならねば。部下達も守れないのでは…」
「そう来たか…!じゃあ。ちょっとこの魔物掃除手伝えや!終わったら…俺達でやろうぜ。」
「ああ。そのつもりで来た。すぐに片付けるぞ。」
………………………。
モワァ…
「スパーン様…はい。海賊の女です。ゲイズ様の洗脳を号令とやらの技で無効化してしまいましてねえ。…ええ。私も挨拶に行こうと思っておりまして……っ!!そうですかあ!それはそれは…ええ。分かりました。お迎えにあがります。」
……………………。
「ナナミ様。終わりました。」
「ふーん、どれどれ……まあいいかなあこんなもんで。うん。おつかれー。」
ガチャ。
「…………いっけね。手紙落ちてた。部屋掃除もしなきゃダメかあ?めんどくせえな。…っは。会いに行く理由なんて、お前以外ありえねえってんだよ…俺も……」
コンコン!ガチャッ
「ナナミ様!強探知結界に反応がありました!」
「るせえなあ!どうせ強探知ならMよりちょっと上ぐらいだろうが!自信ねえなら大人数で行けよ!」
「いえ、魔物の反応レベルではありません…もっと強い…」
「んあ?なあんだよ!こないだ魔王ぶっ殺したのにまーたすぐ次か!?っは!俺が勇者やった方がはええだろこんなもん!」
「……っ。すでに4人編成のパーティーが戦闘中です…」
「ったく。わあったよ!今用意するから!」
「終わったら…会いに行くからな。」
…………………………。
「…………なんだこれ。おい、治療師は蘇生しろ。」
「はい!」
「……コイツらの血で書きやがったな。こんな喧嘩の売り方するやつは……"悪魔"か…!」
「めんどくせえじゃ済まねえ!…おい!お前ら!ギル…ドに……」
「……ふざけてんのか?」
「うああああああ"あ"あ"あ"あ"!!出てこい!部下に手え出しやがってえ!俺様がその喧嘩買ってやるよおおおお!!」
………………………。
「っしゃああああ!」
((ギガ・インパクト))
「ブレイブッソーード!!!」
ドガァァァァァァン!!
「はぁはぁ…バガ。」
「ぜぇはぁ…何だ。」
「ふぅ…確かナナミはお前の"お頭"なんだろ?つまりは」
「ああ。お頭の技を俺は自己流で会得したんだ。その強さはお頭譲りだな!っは!」
「私も、稽古をつけてもらえないだろうか。彼女の強さはどこか私達と違う。私達は勇者だぞ?」
「そりゃそうだが…めんどくせえって言われるだろうよ。」
「構わん。口説き落とすさ。共に来てくれ。」
「分かったよ。じゃあ……」
Prrrrrrrr
「お、噂をすれば。…お頭!話があるんd…どうしたんだ!……ああ!すぐに行く!」
「何事だ。」
「緊急事態だ。お頭のエリアに強敵が出た。先手の4人、お頭が連れてった6人、10人も殺された!しかも…首から上だけ消し飛んでるらしい…急ぐぞ!」
「…フン。次から次へと…!!」
………………………。
…これは…夢?
目の前の光景からして、これは悪夢だ。
でも…これ…良い夢だな…こんなに力を感じる。
強さに自信がある…誰にも負けない。
向かって来るそいつを返り討ちにして…
小指から爪を剥いで、
露わになった"肉"に釘を打ちつけて、
両手両足を固定して。
泣き叫ぶその顔を愛おしく想いながら…
ゆっくり…
鎖骨から爪を刺し入れて…
腹まで切り開いて…
"中身"を掻き混ぜて…そう
…その顔が見たかった。
簡単に死なないで。
もっと苦しんで。
もっと嫌がって。
命乞いして!鳴いて!死んで!死んで!死んで!死んで!死んで!死んで!死んで!死んで!
………あぁ…物足りない。
「っはあ!!!」
「…んう…ナギ君?」
「……ここどこ!?」
「病院よ?どうしたの?」
「今すぐ準備して!早く!助けに行かなきゃ!!」
「え?何の話?」
「ナナミさん達が!全員!殺される!!」
………誰に?




