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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その20、終わりが見えると寂しくなる
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魔王 part2





「くそ!どこまで行ってもみんな精神異常かよ!」


フリーズ。

そして声をかけられたと判定されると、もうおしまいだぁ!みたいなネガティヴ発言。



「ゲームでよくあるよこんなの。」


ラスボス決戦前の絶望に溢れた世界な感じ。


んで、いざクリアしてもボス戦前ロードのタイプだとずっと絶望のままなんだよな。あれ意味わかんない。



「話しかけると反応するから、空を見上げたら硬直するあれとは違うんだよな。…てことは治し方は不明。」


「前見て歩かないと転んじゃうよ。」


「ぶつかってくるやつがいないから…」


車も走ってない。活動が止まって、店とかのBGMだけが賑やかさを演出してる。



攻略チャート的には…最悪だ。


エンドラと戦うまでにはイジューに魂交換の儀式を教えてもらって、ハルさんとミノリさん…それから最強の世代の復活を狙ってたのに。


色々すっ飛んでエンドラが死んだとしたら…もしそうなら


待てよ、俺が勘違いしてて普通にエンドラが勝ってたら?


「10月の約束はもう果たせないやつだなこれ。しかもすぐに最終決戦だろこの流れ。」


「ナギ…」


「何?」


「なんか見られてる気がする…」


「そんなのずっとだろ。もう少し我慢してくれ。」



硬直した一般人の視線じゃない。


ずーーーーっと視線を感じてて気味悪いけど、誰か分かんない。


「よし。着いた。」



本部…ホープなら皆いるよな。



……………………。





「…………うっそ…」


「どうしよう。みんなが…」



ホープにいる人間も…というか、役割持ちでも硬直余裕なのかよ。



「やばい…ヒカリさんいない…」


「あっちは?」


タクミさんとか桜花さんとか偉い人用の部屋。



「シラユキさん…ルナ…フワにミミまで…」


「オウカさんもだよ。」


「……この瓶、ミラティか?なんでここに?」


「なんか変。オウカさんが怒られてるみたい。」


「ん?」


確かに。


シラユキさんとルナ達vs桜花さんみたいな立ち位置だし。



「シラユキさん。」


「……もう明日は来ない。」


「ルナ。」


「私達は死にゆく運命。」


「……せめて"にゃ"が聞きたかった。」


ナギ、そんなこと言ってる場合じゃない。桜花は魔導師だ。


「だから?」


彼女達が…魔導師や勇者でさえ硬直するのなら。


「…………ヒカリさん、ジミー、バガもどこかで…」


「ナギの家族は?」


「マジかよぉぉ…このタイミングで心配事しかないじゃん!全員集合で作戦会議じゃねえのか…っちくしょおおおお!!」


ッバリイイイイイイイイイイン!



ガラスの壁なんて簡単にぶち破れる。



「ナギ…」


「くそ!くそ!くそ!」


モモも硬直してるだろどうせ。

なら家族全員無防備だ。


エルがいるなら。いなくても他の魔王がいる。


絶対狙ってくる。


ヒカリさん達のことも。


だって俺が魔王ならそうするもん。



「……っもおおおおおおお!」


「ねぇ…」


「なんだよ!!」


「っ…」


「ごめん…でも電話も出来ない状況じゃヒカリさん達の居場所も分かんないし…一旦家帰ったところで…」



「ナギ。私達はなんで大丈夫なんだろう。」



怒鳴ったせいでビビりながらだけど、ユイが頑張って発言した。



「………………え……?」



確かになー。なんでだろーな。

ナギとユイは他と違う点があったかな…?


「はぁ…?魔導師でタクミさんとかと同期みたいなこと言ってた桜花さんがダメ…勇者のシラユキさんがダメ。でも勇者の俺は平気で、ユイも何ともない。」


「どうして?」


「俺も知りたいよ…」


行動しなくちゃならない。


・ヒカリさん達を探して無事を確認


・帰宅して家族とモモの無事を確認


・この状況を打破するため犯人探し



「犯人っても魔王の誰かだろこんなの。もしくは全員とか?」


なんとなく。ルナのネコ耳に触れて、頭を撫でた。


「私達は


「死にゆく運命なんだろ?……はぁ。」


「……ナギ。」


「うん?」


今度は威圧的にならないように、意識して優しく反応した。


「これ。」


「ミラティがなんだよ。」


「壊したら出てくるかな。」


「は?…いや、考えるだけで危ないから。割るなよ?」


「でも割ったら何か分かりそう。」


「おい!ちょっ…きゃああああああああああああ!」


いや、俺も散々やってきたよこの行為。

ゲームでだけど。





樽を当たり前に持ち上げて



床に、地面に。



叩きつけて




バリイイイイイン!




「最悪だよ!皆動けないんだぞ!」


「ごめん…」


瓶が割れて中身がウニウニしてる。


他の瓶にぶつけるようにして割ったせいで、全部解放済み。


やってくれたよ。



「ふぅ。ハルさん。瞬コロね。からの瓶に代わる何かをここで見つけて詰めなおす。」


ああ。そうしよう。

ウチはー?


「ユイ。下がってろ。」



グチャグチャな肉片が意識を持って合体。


つまり。





「………ふわぁ…。」


「ミラティ復活かよ…」


「あらぁ?どこかで見たと思ったら。生意気勇者じゃないのぉ。」


俺をじっと見て、ユイに視線を移した。


「…どういうことなのぉ?その子…魔物よねぇ?」


「ナギ…」


「あら。勇者が魔物の味方になったのぉ?勇気あるじゃないのぉ〜…!!」


全裸のミラティが急に飛び跳ねて喜んだ。


ばよんばよん。…いや、その。そういうんじゃなくてさ。

揺れるっていうか千切れそうなんだよね、こいつの胸的なのが。


「褒めてあげる…来なさい…」


「待てよ。俺はユイの味方だけど、ユイが人間の味方なだけだ。勘違いすんな。」


「…………。」


途端に不機嫌に。

情緒不安定かよ。


「それでぇ?私」


スイッチ。


ズバァァァァン!


ジュクジュクジュク…



「困ったな…回復が早すぎる。」


「無駄なの。分かった?糞ガキ。」


「すまない…代わってほしい。」


スイッチ。


「肉斬った感はあったはず。」


手応えは問題ない。でも斬るのと同時に回復しているようだ。



「ここどこなのよぉ。」


「でも回復するのに力を使うはず。ここは1回連続攻撃で…」


「お黙り!!!」


「っ…」


「そこでカチカチになってる人間、仲間でしょう?その気になればすぐに殺してやるところを生かしてあげてんのよぉ?」


「…会話しなきゃダメなのか?」


「いちいち腹立つガキねぇ。」


ミラティはめちゃくちゃ余裕があるみたい。

そりゃそうだよな。ホープ内で暴れられたら…大勢の人質をゲットしてるわけだしな。



「ここはどこなの?」


「……活動拠点。」


「はあ?」


「なんだよ分かんないのかよ…えーっと…秘密基地!あー…勇者とか魔術師とかがここで」


「ああそ。」


「……。」


イラつく。


「で。なんで私を出したわけぇ?」


「俺は望んでない。」


「じゃあそこの魔物ちゃんがやってくれたのねぇ?」


「ナギ…ごめん…!」


「あらあら…仲良いのねぇ。エッチは?もうしたのぉ?」


「からかうなよ。」


「あぁ〜…その感じねぇ。もしかしてエッチしようとしたらぶつかって…私が出ちゃったとかぁ?」


「改めて、殺そうか?」


「やってみなさいよぉ!」


「ねぇナギ、聞いて。」


「今!?この状況でか?」


「あのね…分かった…と…思う…」


またビビらせてしまった。


「悪かった。強く言うつもりは」


「エッチするなら見ててあげましょうかぁ?」


「お前回復出来ても痛みは感じるんだろ?頭皮剥ぎ取ってやろうか?なぁ。」


「あらあらぁ?」


「なんだっ…!!!」






「魔物しか動けないっ!」






ブチギレ寸前。ユイが叫んだ。


シーンとして、ミラティがクスクス笑いだした。



俺は……




「ユイ。それは」


「そうだよ。魔物しか動けないんだよ。だって、勇者も固まっちゃうのにナギは大丈夫なんでしょ?…私のが体の中にあるから…」


「フーーーっ!!糞ガキ勇者の体の中に?何があるってのよぉ!?」


「………………。」


ナギ…ユイの発言は…



「間違ってない。」


魔物しか動けないっていうルールみたいなのがあるとしたら。


俺はユイの臓器類…魔力ももらって生きてる。


だから勇者でも問題ない。


ユイはもちろん元々魔物だから…



「ん〜♪最高ねぇ。てことはアンタ、本当に私と同じじゃなぁい?こっち側の"人間"。」


「………。」


「ナギ…。」


「誰を殺せばいい。」


「なんでかしらねぇ…怒るアンタが素敵に見えてき」




「誰を、殺せば、いいんだ!!」




今度はミラティがビクッとした。



「そんなに真剣にならなくてもいいじゃない…」


「は?」


なぜかミラティが震えだした。


……すぐに殺せる。回復しても、切り刻んで復活しても、すぐに殺せる。


なら、何かする前に。



「…もういい。怒るのやめなさいよ…怖くて耐えられない。」


「………………。」


ミラティの言葉、自分の耳を疑うんだけど。



「誰も殺さない。私を外に出してちょうだい…」


「お前、立場分かってんのか?」


「ナギ。」


右手をユイに握られた。


柔らかくて…このまま怒りに任せようもんなら握り潰してしまいそう。





ユイに主導権を握られて、ミラティを外に出すことになった。





………………。





「暑いわねぇ。」


「この状況分かるか。エンドラとエルが戦った。決着がついたはずだ。」


「知らないわよぉ…瓶の中にいたんだから。それに、私は誰が勝ったって関係ない。そいつに媚びればいいんだからぁ。」


「結局魔王が1体野放しになるだけか…!?」


「…なら、いいこと教えてあげましょうかぁ?」


「あ?」



ミラティが自身の体を確かめるように…右手を変化させた。


爪が伸びて、手首から先が黒と青紫の混ざった感じに。




《…アンタ達、外のことどれくらい知ってるの?》


「見た通り。」


《なら…"魔物"は見たのかしらぁ?》


「は?」


《アンタは分かってない。それじゃあ…次会ったらその時は…》




ミラティは俺を見つめながら後ろ歩きして離れてく。

舌を出して唇をいやらしく舐めまわして。



《殺し合いましょう…》


ピシュンッ!



語尾にハートが付いてる気がした。



「ムーヴ魔法か…」


「魔物、見てないよね。」


「そうだっけ…?」


「病院からここまで、誰も殺されてないよ?」


「……どういうこと?」


「魔物、いないんだよ。」














《そーゆーこと。》


スタ。




こいつにはもう、いつの間にとかそういう言葉は向いてない。

こいつが望めば、すぐそこに現れるんだ。



「エル。」


《よっ。》



白のマント。


白の…タキシード。


全身白い衣装で。


肌まで白い。


………若干大きくなったような。




《優しいだろ?魔物はみーんな動くなって指示出してる。好きにしろって言ってみるか?"エサ"には困らないだろうなー。》


「エンドラは…」


《うん。死んだ。呆気なく。アイツは俺と戦ってるつもりで必死に戦ってたよ…動画に残したかったマジで。》


「人間が固まってるのは…」


《分かってんだろ?》


「………ならお前を」


《殺せるのか?たーしーかー…お前、エンドラにも勝てなかったんだろ?俺は"こっち"で決着つけるまで、お遊びでもエンドラに何回も》


「エンドラとお前は違うだろ。」


((プリズム・アーマー))


《うぉ……ダセぇ。》


「ユイ。」


《おーおー。逃がすかよ。》


ズドドドドドドドドドドドド…!!




影が大きな手になった。


一般人を薙ぎ倒して退けてく…ボウリングのピンを整地したりするあの機械みたい。




《2人じゃ戦力的に足んないかー?でもさ、本当だったら動けないお前の目の前で家族とか全員殺してやりたかったんだけど。なんで動けんの?珍しく俺が驚いたわ。》



「魔物はお前の指示で動かない。人間もお前の影響で動けない。でも魔物でも人間でもある俺とユイは…」



《いやいや、何言ってんの。》



「……。」



《俺が動くなって言ったら、魔物と人間のハーフだとしてもお前らも動けない。でも動ける。》



「は?じゃあなんだよ。お前は意図的に俺とユイだけ動けるようにしたのか?」



《だから動けることに驚いたって言ってんじゃんバカかよ。》



「…………。」


逃げられなかったユイが俺の隣に戻ってきた。






《"俺達"が勝ったらその時は、"魔王"しか動けない状態で人間を皆殺しにしようって決めてたんだけど。》





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