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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その10、結局ギリギリな戦いは燃える
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ビッグマッチ part9





《あの人間頭おかしいんジャネ!?自分の攻撃で国ごと燃やすつもりジャネ!?》



魔王チャデスがこれだけビビるのはある意味当然だった。


本来なら人が溢れてまっすぐ歩くのも難しく、それに合わせて様々な商業施設などの建物が多く建ち並んでいるこの街。

それが今、見渡す限りの全てが燃えている。


暑いから熱いへ、酸素も減って立っていられない。

少なくとも生物がいるべき場所ではない。


魔物であるマリオ、魔王であるチャデスはまだ耐えられる。


しかし普通の人間ならば。



《自身の魔法とはいえ少しも辛くない…厄介過ぎるな。》


《厄介どころか殺されるんジャネ!?》


((フォルテ))



キーーーーーーーー……ーーン……!!



《…うるさいんジャネ?》



《一種の強化魔法ですから。》



マリオが大きな体でヒカリに突進する。



「ふふ。そうよ。分からないままでいいの。」



((ブレイズ・ムーヴ))



ボッ…



ヒカリは虹色の炎に包まれ消えた。



《…なっ。》


《今の魔法、炎に紛れたんジャネ?だとしたら…げげ。》



チャデスの読み通りならば。



これだけ炎に支配された街に紛れたのならば。



《逃げるのは無理ジャネ?》


《どちらも逃げることは許されない。殺して帰るしかないのです。》


しかし、あまりにも不利だと思ったのか。


《何してるんジャネ?》


《本当ならばこれだけは避けたかった。しかし緊急。出し惜しみして死ぬのは…》


((((ジュエル・ロード))))



《んぐう………んんっ!》



《うわ…》


魔王チャデスが苦い顔をする。



マリオの体から膿を出すように黒い石がいくつもいくつも出てくる。



《んん…あれでもない………これでもない…》


《何してるんジャネ?》


《最大限の力を引き出すための時間が要ります…チャデス様…お願いします。》


《魔王に時間稼ぎを頼む?お前もお前で生意気ジャネ?》



そして魔王チャデスはキョロキョロと首を振り、両手の指を伸ばしてその場でゆっくり回る。


どうやら時間稼ぎはするようだ。



「「させるわけないわ。」」



《…あ?な、分身なんジャネ?反応がいくつも…》


「残念。」


((ブレイズ・アクス))


ブオオオオオッ!!


《うぎゃあああっ!!》


「まずは右腕。次は左腕?それとも足にする?」


(())ボディ・ブレイク(())



……………………シーン。



《なっ!じゃあ…》


(())シード・スプレッド(())


残された左手の指から一斉にシードが飛ばされる。



ヒカリは動かない。



ジュッ…ジジジュッ!


《嫌な予感なんジャネ?》


「そうよ。今の私、その程度の魔法は無力と同じ。」


ヒカリのドレス。


ただの見た目としての要素だけではなかった。


「フレアドレス。…さあ、踊りましょう。」



両手に短い杖を生成、クルクルと舞い踊る。



その踊りに歓喜するように炎が踊る。



「ステップよ。1、2…」


《雷人間よりヤバいんジャネ…?お、おかしいんジャネ?なんでこんなに…》



チャデスの前には人の形をした炎が数十体。


それぞれが手から口から炎を噴き出す。



《さすがに逃げるんジャネ?》


「逃げられるならいいわよ?でも、ムーヴでもすぐに追いつくわ。」


踊りながらそう言うと、ヒカリの踊りは少し速く…僅かに激しくなった。



ボオッ!ボボボボッ!


《あちっ!あちちちち!シード!シード!シード!》


近寄って来る炎人形に必死に攻撃するも焼け石に水だった。



《お待たせしました。》


《早く!早く!》



((ジュエル・リリース))



「あら…」



《その余裕の笑みが消える瞬間、楽しみにしていますよ?》




マリオとチャデスの前に現れたのは。





…………………………………………………………。





ミラー戦ってのは苦戦しそうで意外とクリアしやすい。


でも、相手が最強状態でこっちが装備無しの今回はちょっとヤバい気がする。



悪魔は1歩も動かない。


俺の動き出しを潰してやる気を削ろうって感じだな。


悪魔だもんな、プレッシャーかけて楽しんでやがる。



攻略するなら…


戦闘衣装は魔防を補ってるから無視でおっけ。


輝石…これは注意しないとな。


そして何よりヤバいのが。



「ダークナイト…」



アレの性能は"何でもあり"だしな。

ダークナイトを破壊するか無力化しなきゃ勝ち見えない。



素手だし…取り上げる?



「ふぅぅぅぅ…」


輝石無しでもそれなりに速くなってるのはレベルが生命限界を超えたからかな。

まんま限界突破だし。



ダークナイトを取り上げる!



《トマレ》



…ピタッ。



《シネ》


「っ死なない!!」


静止魔法は大丈夫!


程よく近づいてきた…この距離なら



グジャッ。



「くそっ!」



悪魔は自分の心臓にダークナイトをすぐに刺した。


慌てて引き抜こうとしたんだけど抜けない!焦りで力が入ってないのか!?



「抜けろおおおおおおおおお!」



《ブラッドユニゾン》



ドクン。


ダークナイト越しに悪魔の鼓動を感じた。


やっべぇ…このままじゃ殴り放題だ。


離れればダークナイトの追加効果を狙われる。

このまま引き抜きを狙うとゼロ距離だし何されるか分からん。


「ちっきしょおおおおおお金メダルううううううっ!」


ダークナイトを握る手を返して一本背負い気味に…



ズボッ…!


「そのままぁっ!!」


持って逃げる!!



《………。》


ジュウウウウウウ…


見慣れた弱い光、聞き慣れた力が高まる音。



輝石だ。



ドッ!


「があ!!」


身体能力を高めて背後から蹴られた。


このスピードに追いつくなら悪魔ナギのステータスはこっちと同じか。

ならダークナイトと輝石持ちってもう無理ゲーじゃねえ!?


「空中静止っ!」


吹っ飛ばされた状態で悪魔に体を向ける。


今ダークナイトを持ってるのは俺だ。


効果は使わないけど、剣としてもそれなりに強いはず。


「ちょっとは剣も振れるしなあっ!」


正直、アニメやら漫画の剣の扱いは現実離れし過ぎというか。

そんなに振れたらそりゃあ強いわ!みたいな。

華奢な体でブンブン大剣振り回す女の子キャラとかもう意味不明。



悪魔がまっすぐ突っ込んで来た。


それならこのままダークナイトを突き刺してやる。



ブシュッ。



「心臓ピンポイントだぞ…ピンポだ…ピンポなのっ!」


死ぬどころか口角上がりすぎ問題。


ニンマリしてるのはあれだな。




「捕まえた。」

《ツカマエタ》


「お前の思考が分かるとかどんだけ染まってんの俺は。」


《コノママシネ》


悪魔の左手が俺の右手首を掴む…あぁ…握り潰されそう。


「っ!」


空いた右手は俺の顔に向かってパンチ…



ドゴッ!


ガッ!


ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!



連打…1発で致命傷を狙わないのはマジで悪魔だな。

"くっ殺"宣言してほしいみたいな?



逃げられない。殴られ放題。


意識が飛ぶ前に…何か。




何でもいい!思いつけ!死ぬぞ!!




《シネ!シネ!シネ!》


パンチの威力が上がってきた。



「ぐっ。」


歯を食いしばる。口の中血の味。


鼻も痛いし、多分鼻呼吸出来ない。



バカ様と喧嘩しまくってた頃を思い出す。


一方的に殴られて今も変わらないその血の味。


腹を殴られると確定で嘔吐。


ある日からバカがバケツ持参して俺のリバース専用の受け皿になったりして。



「ぶっ…」


ガシッ!



左手で悪魔の拳を止めた。



左手にはガントレット。


そうだ。俺は何も無いわけじゃない。



「っぅぁぁぁああああ!!!」


左手で拳を抑えながら右手に全力を注ぐ。



いつの間にかガントレットを装備した右手にも力が入る。


ダークナイトを…引き抜く!



悪魔から抜けたダークナイト。


思いっきり血を吸ってる。


分かんないけど、これ俺が使っても多分追加効果使えるよね。


でもそれは悪魔を頼ることになる。


下手すりゃ悪魔はそれを待ってるかもな。



だから。



「こんなもん!!」



左手を離して地面を一蹴り。


距離を置きつつ。



「要らねえええええええっ!!」




左手にダークナイトを持ち替えて




右手で思いっきり刀身を殴った。




ガアアアアアアアン!!



ピキピキ…



「ははは…どやあ…!」


《アピス》


ブシャッ…


「ごへぇっ…」


アピス…槍。


悪魔としての魔法も使えるとかマジかよ…



太ももを貫かれた…痛い痛い痛い痛い…見た目がエグい。


たまには無傷で圧勝させてくれ…



「でも…もうダークナイトは…」



思いっきり殴った甲斐があった。


刀身は粉々、これならリベンジスラッシュも不可能だし武器にもならない。



「へへ…最大の問題はこうりゃ……」



泣く泣く泣く泣く!



少し離れた位置に立つ悪魔。



両手に1本ずつ、ダークナイトを握って。







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