ビッグマッチ part7
魔王スイvsナナミさん
青と黒の縞模様の魔物vsヒカリさん
赤と白の縞模様の魔物vsジミーと残り
そんな組み合わせで戦闘が始まった。
正直どれも勝ち確な組み合わせが無いから困る。
スイとナナミさんの対決は、水魔法同士。
魔王ラミラミとタクミさんの戦いみたいにどちらかの魔法が優勢になったらすぐに決着なんだろうけど相手は魔王だ…
ヒカリさんは戦力は十分だけど、相手が未知数。
ジミーは仲間を連れても戦力は…まだまだだろ。
加勢するならナナミさんかジミーだ。
でも変なフラグ立ってヒカリさんに加勢すれば良かったと後悔しそう。
簡単に言えば全員に加勢したい。
でも選べるのは1つ。
だから誰かがピンチになるまで動かない。
((タイダル・インパクト))
《わー!楽しそー!》
ナナミの一撃に余裕のある感想。
《えへへー。ノネムー!》
「おらぁぁっ!」
《ヴァッソュノテカッ!》
ニューーーーッ!
魔王スイの呼びかけに青と黒のヤツが反応して、腕を伸ばした。
完全にどこぞの有名なキャラパクってるぞ!いいのかこれで!!
バッチイイイイイイイン!
ナナミさんの錨を細い腕で受けた。
「なんだおらあっ!!」
《怖くないよー!》
(())ウォーター・インパクト(())
勢いに任せてナナミさんが追撃。
それに対してスイが魔法発動。
………ドカアアアアアアアアン!!
「っは!」
《えー!なんでーー!》
ナナミさんがスイの魔法を弾いた。
2人のリアクションからしてナナミさんが有利か?
「私、あそこの海賊よりも強いのよ?」
((ボルケーノ・コンボ))
((アクス))
((アロー))
((ピラー))
魔王スイがノネムとか呼んでた青と黒の縞模様の魔物。
ピエロっぽい見た目。
どこかで可愛さをアピールしようとしたけど結局化け物に仕上がったデザインだ。
ヒカリさんの連続攻撃を体を伸ばして回避、口に手を当てて笑ってる感を出して挑発か。
「残念ね。」
ヒカリさんのアローは正直ズルい。
グサグサグサグサッ!
《ヴァニカヘベレタヌァッ!》
背中にヒット。かーらーの。
「燃えなさい。」
ボオオオオオオオオッ!
見事にノネムの背中が火事。
流石に背中って対処難しいよな…これは余裕か
《あー!ノネムーー!》
バッシャアアアン!
………魔王スイ、ノネムに放水してフォロー。
あー…まさかの連携可能なのか。
…そうだよ!アドバイスしたくてもこっくりシステムじゃなきゃ伝えられないっ!
「うわ!ヤバい!避けて避けてええええ!」
ジミーの声だ。
赤と白のノネムの色違いの魔物に魔法弾を連発されて騒いでる。
西部劇で足下を銃でバンバン撃たれて踊るみたいなやつだ。
もちろん魔物は余裕な雰囲気。
だーっ!やっぱりジミーに加勢か!
でも、戦闘中の連携を考えるとナナミさんとヒカリさんのどちらかに加勢して相手のバランスを崩したい。
てかノネムと色違いのやつもどうせ連携出来るだろこれ。
全員をバラバラに離れさせて戦うか、まとめて一撃で葬るか…が良さそうだな。
ジミーに相手の連携を伝えられれば…
「防御してーー!」
ッバ!ッバ!
戦士達が…傘を広げた。
魔法弾…弾いたよ!ジミー製か!
《ヴォスカネコルテン!》
両手にナイフ?物理も使えるのか!
ジミーは傘に隠れて見えてないぞ!
なんでビニール傘みたいに見えるやつにしなかったんだ!!
《ヴォッテリアーーー!》
「ゴアアアアアアアアアアアアアッ!」
ッガアアアアアアアン!
「え?」
響き渡る咆哮に敵味方問わず全員が注目した。
魔物と化け物の激突。
化け物の圧倒的な力。
「っは。これで信頼100%だな。」
見た目から判断すれば物理防御は低いだろ!
このゴツい腕で、鋭い爪で!
化け物が振るうその腕は。
ハンマーのように重く、数本の剣が備わっているようで。
バチイイイン!バチイイイイン!
体を伸ばして攻撃を弾いてる。
マジでゴムってんのか!本気でパクってんのか!
だとしたら切断が有効だろ!?
化け物が引っ掻く攻撃にシフトした。
ジミー達はその一方的な暴力を見ることしか出来ない。
近寄れば巻き込まれるだろうから。
《………………………。》
「…よそ見してんなよ!」
ドゴッ!
《ぶっ!!》
化け物の戦闘に夢中になってしまった魔王スイ。
ナナミが錨を置いて静かに近寄り蹴り上げた。
「あーあ。これで決着だな。」
2mほど浮いた魔王スイにナナミが体を回転させ…
「ぶっ飛びやがれ!!」
ッドオオオオオオオオン!!
強烈なハイキック。
くの字に吹っ飛ぶ。
「終わんねぇぞ。」
((ムーヴ・ショート))
錨を握って即、追撃。
ニュン!!
バッチイイイイン!
ギリギリで腕を伸ばしノネムが守った。
「うふふ。」
((ブレイズ・インパクト))
目の前の魔物は自分に関心がなく、化け物の戦闘に夢中になり…慌てて魔王を庇った。
魔導師にゆっくり魔力を高める時間を与えた。
両手に虹色の魔法弾を生成し、無防備な魔物に
《ヴァアアアアアアアアアッ!!》
魔物はまたしても燃えた。
しかし今回の炎は違う。
《っ!!ノネムー!》
(())ウォーター・ショット(())
魔王スイは両手から水魔法を発動。
右手はナナミに、左手はノネムに。
ナナミは錨で殴り弾く。
ノネムのフォロー目的のせいか魔法が弱い。
バシャアアアアッ!
ドカアアアアアアン!
ノネムを助けたために魔王スイがナナミの一撃を貰う。
「っは。…言いてえことが山ほどあるが、まずはぶちのめす。」
《…負けないもん!》
「残念だけど、あなた達に勝ち目は無いの。」
「なっ…」
ナナミの横にヒカリが立つ。
《え…ノネム!!》
助けたはずのノネムを見ると…
地面に伏して虹色の炎に燃やされていた。
「仲間を意識しすぎて本来の力を発揮出来なかったんじゃないかしら。連携がなってないわね。」
《ノネム…殺したの?》
「ええ。私が燃やしてあげたの。嬉しそうな声を出して死んだわよ?」
ヒカリが魔王スイの心に火をつけた。
《…人間、後悔を教エテやロう…》
「っは。てめぇは勝利自慢したかったのか?」
「いいえ。でも、ナナミ様はまだ手加減してるわ。そのままじゃきっと負けてしまうから。ジミーの方にチカラを貸してあげて?」
「…俺様に命令か?」
「うふふ。そうね。」
ナナミの怒りにも火をつけた。
「証明してやるよ。俺様のがてめぇより強いってなあ?」
「先に魔王スイを倒して無力化したら勝ちよ?いい?」
《K6jTaujsN8jdugktdJ0j…》
くっそおおおお!
ノネムの色違いのやつ、体の伸縮の回避上手すぎだろ!
一方で俺はこの体を扱いきれてない!
恥ずかしいぐらいに攻撃が当たらない。
《恵みの雨を、大地に実りを与え、生命に更なる力を…》
なんか聞こえる…?
《飢えを、渇きを、今。》
誰かが詠唱してるのか?
声のする方を向いた。
ナナミさん、ヒカリさん、魔王スイ。
誰かが魔法を…
ナナミさんとヒカリさんが向かい合ってるのは何なんだ?
《迸れ、災害の如き雨よ!》
は?雨?
ポッポッ……
雨だ…
ザアアアアアアアアアアアア……!!
異変にナナミ達が気づく。
「あ?」
「っ………この雨は…!」
《これデお前達が死ぬ。》
「……空が暗く…っ!」
「ちっ…まともに受け取ってんじゃねえ!頭上に魔法撃って傘代わりにしろ!」
「………分かったわ!」
ナナミに言われるがまま、ヒカリは魔法を発動。
頭上に大きく展開された虹色の炎魔法は雨を防ぎ、戦場の温度を上げる。
「暑くて叶わねえ…」
「…ありがとうございます。」
「傷治しとけ。」
「そうね。」
「行くぞおらあっ!!」
雨。
俺は何ともないけど、この雨。
魔王スイが降らせる恒例のやつか。
…さっきのは詠唱?
魔王特有の…何言ってんのか分からないアレか?
悪魔が混ざって聞き取れたってこと?
魔物語?
「ナギ!」
へ?
《ヴォーテリナッパカシエーニャ!!》
あれ?視界がぐにゃぐにゃ。
歪むというよりぐにゃぐにゃ。
なんだ…立ってられない。
ドサァァン!
「ナギ!」
「どうする!傘で雨は防げるが片手埋まって戦いには向かないぞ!」
「ナギを助けるから、一瞬だけあの魔物をお願い!」
「任せろ!行くぞ!」
「「うおおおおおおおお!」」
分かりやすく戦士達は声を上げて突っ込んでいく。
《ヴォルッチネバッ!》
「今度は程よくねっ!」
ジミーは化け物の体の下にハンカチ程の布を差し込む。
ッドオオオオオオオオン!
勢いよく化け物が吹っ飛んだ。
「あちゃぁ…ごめん、ナギ。」
戦場から離れ、建物の影に入ったのを見届け安心する。
「今度は僕達が戦う番だよね!」
「そうはいきません。えぇ。そうはいきませんよ。」
《シードは雨に弱いんジャネ?もっと早く来るべ》
「大丈夫です。ご覧下さいスイ様が相手をして…虹色の魔法だと?」
《化け物はそこで死んでるけどあの魔法はヤバいんジャネ?雷人間はいないけど炎人間がいたんジャネ?》
「バカな…オソロを助け、全員であの女達を殺さねば!」
「……………………………。」
そうはいかない…と現れた敵の増援。
なのに戦況を見て慌てだした。
ジミーが不思議そうに見ている。
《決まったなら早くやるんジャネ!?》
「私は魔力が回復しきっていません。チャデス様。」
《その醜い体でいつまでもいつまでも肉食べてるのが悪いんジャネ!?》
ピチャピチャピチャピチャ。
素足で歩く魔王チャデスはジミーと向かい合った。
「君は?」
《恐れるべき存在、魔王チャデス…なんジャネ?》
「へえ…魔王なんだね。…ふーん…」
《ジロジロ見るのやめるんジャネ?》
「君、もっとご飯食べた方がいいんじゃないかな。」
《イラッ…ジャネ?》
…ザアアアアアアアア…
激しさが増していく雨。
魔法や武器が発する大きな音。
ピカッ…ゴロロロロ……
ほんの一瞬だけ、空が光ったのは戦っている誰もが気づかなかった。