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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その9、2周目は強くてコンティニュー
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異常 part2




走っても走っても追いつかない。



「何だってんだ!お頭ああ!」



しかし、バガは気づいた。


追いかけている人間は頻りに同じ建物を見上げている。


同じように建物を見上げて少しだけニヤけた。



「なるほどなぁ…!!」



…………………………………。





「よし…じゃあ急ごう!」


魔法による加工が終わって、早速外に出た。



「…いや、でも…すごいけど…」


普通の雨に感じるレベルまで威力を下げてるんだけど…


「顔が防げねえ!!」


「仕方ないわ!転ばないようにね…走るわよ!」



ちくしょう!顔が!顔が!


あんまり激しい雨だと息苦しいんだぜ…?



「当たり前だけど人歩いてないな…ヒカリさん!どこ探す!?」


「もっと雨が激しい場所へ!」


「マジで!?」


魔王スイが降らせてるなら、中心地は激しいはずって考えか…というか既に激しくてこれ以上は雨って言わないんだけど…


仕方ない、テンペスターの考えだし。


テンペスターってよくない?

天候変化魔法使える人の総称というか。



「俺もそういうの…おおう!?ヒカリさん!!」


「どうしたの!」


雨が激しいから大声気味の会話。


「あそこ!バカ様だろあれ!!」


というか違かったら魔物だよあんな体大きいのは。


「そうね!走っていくわ!」


「雨対策が無いから動きが遅い!追いかけよう!多分あいつ何か知ってるぞ!!」


バガを追いかける事にした。


気持ち足が遅いのはこの雨のせいだろう。



………。




「もうすぐ追いつくわ!」


「待って!追いついちゃダメだ!俺の存在は知られてるけど!」


「私の存在はまだなのね!」


「うん!これから戦闘かもしんないのに変な誤解は困る!このままのペースで!」


気づけばヒカリさんと自然に手を繋いでる。


この雨じゃなければ…!!




…バカ様が立ち止まった?


何度も上見て何があるんだ?


「ナギ君!」


「なに!」


「上よ!!」


「……あ。」



1…2…3…10階以上はあるこの建物。

セール!特売!そんな文字が雨の中見えた。


「入ろう!」



………………………………。




中には普通に買い物する人、外に出られず入り口付近でスマホを弄ったりしてる人…


「脱ぐと解放感すごいな。」


「中まで濡れたわね…階段で上がりましょう。」


「え!」


「人目は避けないと…」


確かに。今のヒカリさんはびしょ濡れコスプレイヤーだ。



階段を移動しながら、ヒカリさんが風魔法で服を乾かしてくれた。


ヒカリさん自身は一瞬眩しい閃光を放って収まった頃には衣装チェンジしてましたけど。


…あれか、たまーにある、変身中は裸なのでフラッシュ入れてますってやつか?



「ねぇ…流石に…屋上行くまでに膝がやられる…!!」


「先に行っていいわ。」


「へ?」


「私に合わせなければ階段なんてあっという間でしょ?屋上の状況も知りたいから先に行って!」


「…大丈夫?一緒に行かなくて。」


「すぐだもん。大丈夫。」


「分かった。とりあえずチラ見して戻って来るよ。それでいい?」


「分かったわ。」


バレてたか…


実際階段なんて一段ずつ…いや、飛ばし飛ばしでも遅い。


踊り場から踊り場へジャンプで届くし、なんなら壁を蹴りながら移動すれば着地することなく屋上階まで行ける。



「着いた。」



屋上に出るドアは施錠されてる。


小窓から外を覗いてみた。



「スイ!…タクミさんも!」


戦闘中。


雨でハッキリ見えないけど、攻撃はタクミさん有利。

でも、決着とまではいかないってことは…だよな。



…。




「速いわね。どうだった?」


「スイとタクミさんが戦闘してる。タクミさんが押してるけど…微妙。あとドアが鍵かけられてて…」


「それは任せて。」


「タクミさんのスピードに合わせられるのは俺だけだろうし、鍵開けたらそこで待っててくれる?」


「……。」


「いざとなればすぐ近くだし…ヤバいと思ったらすぐ戻るから。」


「信じてるわ。」


「うん。」


「それに、バガ様を探さないといけないわ。この建物のどこかに居るはず。」


「そうだよな…見つからないようにね。なんか、透明化みたいな魔法ない?」


「…ナギ君、発想豊かね。今度作ってみるわ。」


「そ、そう?じゃあ、行ってくる!」


「待ってるわ!」



ガチャ。


ヒカリさんが指を一振りすると鍵が開いた。


多分指振らなくてもいけるやつだろうけど。




「この世を救う…英雄に!!」


スッ…



この雨なら完全に姿を消すほどのスピードじゃなくても見つからない気がする。



「でも油断はしない!」



スイは屋上の中央で周りを気にしながら防戦を強いられてる。


タクミさんの動きは完全には分からないけど、攻撃のパターンが分かる。


四方八方から雷を落として逃がさないように、それと同時に剣で攻撃してる。


なら剣の攻撃に合わせて…



《速いなー人間!!スイ攻撃出来なーい!》


バチイイイイイン!



スイの反射神経に流石魔王だと思った。


タクミさんの雷を片手で魔法を使って防御、同時に死角を狙って振られた剣を右手の魔法で受け流すかそのまま回避。



バチイイイイイン!!



ここだ。



ヒュッ…



ズバアアアアアアアン!!



《う"う"っ!?》



結構大振りな攻撃だったけど命中。


スイはタクミさんの攻撃を対処するのに夢中で思いっきり正面から攻撃した俺には気づけなかった。


その小柄な体から鮮血が噴き出る。



《ぐ…なに…どういう…こと…!》


「終わりだ。」


バチ!バチチ!


((サンダー・インパクト))



バシャアアアアアアアン!!


「うわっ…」


少し俺にもビリッて来たよ?思わぬ巻き添え死を意識してビビった。



ドサ。



「……………。」


タクミさんは高級スーツがボロボロになってた。


所々血も出てる。



「……雨が!」


勢いが弱くなってきた。


「ナギ。助かった。」


「師匠でも追い詰められないなんて…スイって強かったんだな。」


「私に反応出来る。それだけで十分に強いが…流石魔王だな。」


「ナギ君!」


「ヒカリさん!もう大丈夫だよ!」


「魔王スイの死体は部下にやらせる。先に戻れ。」


「それはタクミさんこそでしょ。スーツ…」


「………確かに。では、私は戻る。迎えを待て。」


「はーい。」



タクミさんは屋上から飛び降りた。


もちろん、その後は姿を消して光速移動なんだろうけど。


でも光速ってまだ言い過ぎかな?



ドオオオオオオオン!!



「何だ!?」



コツ…コツ…



俺達が来たドアの方から足音がする。



「………ナナミさん?」




受験の結果発表を見に来たみたいな顔してる。




「………………どけ。」



俺とヒカリさんの間を通って。





「………………………。」



魔王スイの死体を見下ろす。



「……………………美咲。」



「……へ?」



座り込んで、スイの頬を撫でて、体の向きを正しく直した。



「……………ヒカリさん。」


「同じことを考えてるわ。」


スイって……



「ナナミさん。」



「…………この指。何度も握った。この額。何度も撫でてやった。」



「………………。」



「親ってのは自分の子を見間違えるような馬鹿な真似はしねえ。」



ナナミさんはそう言ってから涙を流した。



俺達は黙ってそれを見てた。




「…………お頭ぁぁ…!」



「バカ?なんでアイツ…ヒカリさん!」


「また後でね。」


((ムーヴ・ウルトラ))



「……お頭…!」


「お前なんでそんなケガしてんの?雨にやられた?」


「俺がやったからだ。」


「え?ナナミさんが?」


「俺が魔王を殺しに来たって言ったらお頭が…」


「…………この状況見て察しろ。俺も知らなかったけど。」



「ごめんな…守ってやれなくて…」



「…スイが水魔法使うのってもしかしてナナミさんの…関係あるのかな。」



「魔法は教えた…でも、所詮水遊び程度の実力だった。」



「………お頭の…娘…なのか?」



「…………知らなかったというか知れるはずないよな。」



ニュルルルルルルルル……



「っ!?」



突然屋上に黒い渦が出現した。


アニメとかで敵が移動に使うワープホールみたいなやつだ。



「てかまさにそれだ。」



ニュッ!!



青と黒の縞模様。


それだけ理解した。


突然出てきて驚いたのか体がすぐ動かない。




「美咲!!」



目の前でナナミさんから魔王スイ…娘の死体を奪ってその謎の存在は黒い渦ごと消えた。




「っとと。硬直したぞ…」


「静止魔法だ…」


「厄介過ぎる…というか、ナナミさん…!」


「俺は自分の娘の死体を葬ってやることも許されないのか?」



「ナギ様。」


「デュークさん!」


「ナナミ様もいらっしゃいましたか。魔王の死体は?」


「なんか分かんないヤツに奪われた。」


「……なんと…。」




「…………こんな時…お前が居てくれたら…」





「……何なんだこれ…」



2周目はただ前と同じ展開になるほど甘くなかった。


その変化は結局対応しきれないような内容ばかりで。


失敗してから答えを知るような。




その後バカは西南エリアへ、ナナミさんは俺達と一緒に本部へ。



だけど途中でナナミさんが逃走した。


デュークさんが部下に指示してナナミさんを止めようとしたけど、俺には出来なかった。



…ナナミさんの娘が魔王スイ?


ならその魔王スイが死ぬ決定打を与えたのは俺だぞ?


俺が加勢しなければ…ナナミさんが間に合っていたら…もしかしたら状況が違ってたかも。




部屋に戻ってからも、どうしたらいいのか分からないままだった。





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