全てを知る者 part2
なぜこんな事になったのか。
「師匠の考えにはまだまだ遠く及ばないわこれ。」
「用意は出来ているか。」
「うん。」
今は夜中…中央ギルドの近くにタクミさん率いる平均レベル40の魔術師と治療師が合計10人。
そこに俺とタクミさんで12人。
…問題はこれ。
「チクチクする…」
「顔を知られるな。」
銀行強盗みたいな目と口の所に穴が空いてるニット帽。
「ってもさあ…攻撃方法でバレるよね?」
「行くぞ。マリオを優先して取り押さえろ。拘束後、ギルドを隅々まで調べる。」
「結構大胆なんだね師匠。」
魔道具、名前忘れたけど…特殊なルーペをニット帽に付けて右目から覗く。
これがあれば太陽をガン見しても暗いと思えるほど明るさに強くなって、反対に真っ暗闇でも朝方みたいに明るく見える。
部隊は少し距離を取りつつ待機村レトルト内部を進む。
「すげえ違和感無く見える…フルカラーだ…」
「動くな侵入者。」
「お前24時間体制かよ…」
エルが番犬だった。
俺が前に1人で忍び込んだ時は普通のおっさんが警備してたのに。
「っ!マスター!この人は護衛対象!」
タクミさんが殺ろうとしてたから呼び止めた。
遅れてたら…こわっ。
「は?俺が護衛対象!?侵入者共!舐めんなよ!」
(…自他ともに認める暗躍奥義、影斬り…!)
「丸聞こえだよエル。」
「…なっ!?」
「捕まえた。拘束して。」
「お任せ下さい。」
((サンダー・ホールド))
バチッ…バチン!
「い"た"っ!!」
「抵抗はお勧めしません。」
「くそ!何なんだお前ら!」
「行くぞ。」
「うん。」
暗闇にエルを置き去りにギルドへ。
「証拠の破損は避けろ。戦闘はギルドの外へ誘導しろ。」
「じゃあ俺はギルドマスターの部屋に直行かな…」
カチッ…ピカピカ…
電気が…!
「おーやおやぁ?こんな時間に大勢で。どうされましたかな?」
「マリオ…貴様の身柄を拘束する。」
「ほう…名前を伺っても?」
ズバァァァァァン!
…もらった。
「ぐっ!?」
「この指輪がなきゃジュエル系は使えない。後は足の指輪を回収すれば生かす理由もないよ。」
「私の指を…指輪を…」
「指丸ごとは要らないから返す。」
ヒョイッ…
「おのれええ!」
「フン。…事実か。」
マリオが襲撃にブチギレた所でタクミさんにスイッチが入った。
俺でも見えない速さでハイキックをお見舞いして、マリオがギルドのドアから外へ蹴り飛ばされる。
「ふざけるな…この私を誰だと…」
「「魔物だ。」」
師匠とハモッた。
「……私を…私を…邪魔はさせないぞ…人間共…!!》
ブクブク…ブクブク…!!
「師匠、戦う気だ。一方的にボコっていいよ!カウンターとか無いから。」
変身中に攻撃はちょっと空気読めってなるかもしれないけど…最近のは変身しながらバリアとか出てるし?
対策しないのが悪い時代なんだよ。
((サンダー・
《フハハハハ!》
((ミラー・ショック))
バキイイイン!!
「………………………。」
「は?タクミさん?」
マリオが出した鏡、それを自分で割ったらタクミさんが止まっ…
「静止魔法か…!?」
《次はお前だ。》
((サンダー・ショット))
((サンダー・ホールド))
((ウォーター・ショット))
サンダー多めなのはタクミさんのせいか?
バチチッ…バシャアアアン!!
水を浴びせて効果を高めたみたいだ…効いてないけど。
《その程度の魔法!》
((ミラー・ショック))
バキイイイイン!
「くそ!皆は退却してくれ!」
《逃がすと思うか!?》
((ミラー・ショック))
それしか無いとしてもゴリ押し感半端ないなおい!
魔術師が3人静止魔法にやられて、残りは脱出した。
《…邪魔をするな…!》
「ふざけんなお前のせいでどんだけ酷い未来が待ってることか」
《それこそ我々には明るい未来だ!今に殺してやる!》
((ミラー・ショック))
ピカッ!
鏡を向けられた。
レトルトにはまだ電気が戻ってないから暗闇なのに眩しく感じた。
バキイイイン!
「…………………………。」
《フハハハハ!…正体を知られていることには驚いたが…これなら私だけでも人間を滅ぼせる…!まずは私の指輪を…!》
「…親父…?まさか、親父なのか?」
《息子よ…》
「いやいや!お前ふざけんな!魔王か!?とりあえずぶっ殺してやる!あんなハゲデブ親父でも俺の親父だ!声真似してんじゃねえ!」
ズバァァァァァァン!!
《ごぉっ!!?》
「…ふぅ。エル、お前も逃げろ。お前じゃこいつには勝てないよ。」
「うっせえ侵入者!その魔物殺したらお前もボコってやる!」
「てかお前暗闇でも見えてんのな。」
《ぐっ…私の体になぜこれだけの傷が…!》
「マリオ。お前、チキンマニアなのか宝石マニアなのか…まあいいや。」
ズバズバズバズバズバズバズバァァァン!!
「…暗夜斬り。」
「はっや…は!?マリオ!?」
「やべ。…でもこいつは人間になりすましたまも」
((ミラー・ショック))
バキイイイン!
「…………………。」
「俺じゃないのかよ。エルには知られたくないって?今更すぎない?」
《まさかこれほどに強い人間が…》
「はいはい。殺すね。」
((ミラー………ズバアアアアアン!!
「暗夜大切断。とかどうよ。」
俺、イキイキとしてる。
((ムーヴ・ウルトラ))
「なっ!しまった!!」
直後、レトルト全体に電気が戻って明るくなった。
「タクミさん静止魔法が効果抜群すぎるんだけど。」
「私達が治療します。」
「どうせ禁術だから対策学んでませんみたいな事は無いんだな、安心。」
「おい…」
「っは!?お前静止魔法受けたはずじゃ…」
「俺は拘束解除だって得意だ。」
逃げ切ってベッドで眠るまでが盗みって言ってたなこいつ。
「で、どうしたいんだよ。」
「お前の正体!明かせ!」
ファサ。
「おまっ!?」
「今回のはこっち側も急遽決まった襲撃だったんだよ。悪いな、話せなくて。」
「それで近づいたのか?」
「いいや。あの事は本気だ。頼むぞ。」
「マリオはどうした。」
「マリオはムーヴして逃げたよ。まさかタクミさんが静止魔法に弱いなんて。」
「…お前は」
「俺は克服出来る。エルは拘束に強いとかいう謎理論で。」
「これで、マリオは戻ってこないだろう…」
「足の指輪を奪いたかったな…でも、魔物だって証明出来たよね?」
「ああ。姿も覚えている。すぐに捜索を始める。」
「なあ!俺の…親父って…」
「エル。俺、お前の事は100%知ってるわけじゃない。アイツが子供の頃から父親だったのか?」
「…づぁっ!!」
「は?頭痛?大丈夫か!」
「横になりたい…痛み止めも…」
仮病では無さそう。
エルの秘密を見つけた。
でもそれを暴くには壁があるみたいだな。
「エルの事は治療師に任せる。私達はギルド内を。」
「分かった。」
雑に散らかしながらギルド中漁った。
「…輝石、これは俺が持ってていい?」
「そうしろ。私は残った物を扱う。先に戻り休め。」
「師匠優しい。」
「今は師匠ではない。」
「ぶー。」
輝石を見つけた。
そのまま入手。
これで俺の最強装備は揃った感じだな。
タクミさんはマリオの秘密の書類に目を通してる。
これはまた時間がかかりそう。
「あ、タクミさん。」
「どうした。」
「マリオが逃げたし、ギルドマスターは新しく必要だよね?」
「…そうだ。」
「ナナミさん呼んでよ。」
「ナナミ…か。」
なぜか渋いリアクションだった。
耳鳴りがする…
……………………………………………。
「ちょっ…傘…返してぇ…俺のじゃないけど…あ。」
《オ!オ!》
「あーそれは良くない良くないダメダメダメダメ」
…俺だ…初めて魔物と1対1で戦ったんだよな。
「逃げたぁぁぁぁい!」
《オ…ッッ…オッ!!!》
ビュンッ
「うひぃ!お前も瞬足かよ!」
そうそう、逃げようとしたら見えない壁があって…ここでピンチになる。
そういえば…いつの間にか壁なんて無くなってたな…どうなってんだ?
「ごばあっ……!!」
《オ、オ、オ、オ、オ…》
…………………は!?嘘だろ!?
ストロングフィストは!?
待て待て!傘刺さってる!!
「あ"あ"…たす…」
ズバァァン!
…ビチャ…ビチャ…!!
「生きてるか?」
「ごぼっ……え"?」
「…顔を変える魔法。な。」
名付けて整形魔法。
とりあえず離れてまた観察する。
もう家まで見守る。
「っはぁ…っはぁ…ナギ君!無事!?」
「…大丈夫じゃぶふっ!」
「そんな!病院に…!」
うわ…なんか書き変わってるよなこれ…大丈夫か?
てか待て待て!
「ヒカリ。」
「…え!?どうなって…」
「顔を変える魔法。新しい魔法。それより、処理忘れてる。」
「そ、そうね…」
「貸して。俺がやっておくから…その…ナギを病院に。」
「あなた…何者なの?」
ボン!シュウウウウ…
「…んー、全てを知る者。」
「まっ…なんて速いの…ムーヴ・ウルトラ?」
………………………………。
心臓がバックンバックン!
思いっきり顔を見られた。
もう一人の俺に!
しかもヒカリさんには俺がドッペルゲンガーみたいに見えたんじゃないか!?
擬態する魔物と思われたら…やべえ!どうしよ!
マリオの事もあるし、擬態が特徴の魔王とか言われたらタクミさんも敵になるかもしれない!!
………ん。
((ストロング・フィスト))
「使えるじゃん。」
待て待て、よく考えなきゃ。
今の俺は…巻き戻しでは無いよな、もう一人居るし。
やり直しだとしてもやっぱりもう一人の俺が…
もう一人の俺ってなんだよ!!
「パラレル?パラレルった?」
本部に戻ってじっくり考えよう。
適当に過ごしたらもっとヤバくなりそう。