全てを知る者
「……うわ、めっちゃ寝た。」
窓が無いから、時計を見ておおよその睡眠時間を知る。
「夜の9時…3、4時間ぐらいかな…」
テーブルの上にスマホとメモ書き、ダークナイトとマジックアーマーが置かれていた。
「…え、スマホ支給…俺が何も持ってないこと分かってるんだな…。」
マジックアーマーを装備。
秘剣ダークナイトを握る…
「…ありがとな、受け入れてくれて。」
変わらぬ握り心地。
変わらぬ信頼。
「…エンドラはダークナイトが悪魔と関係してるようなこと言ってたな…でも、デュークさんの話では違う…。」
メモ書きにスマホのパスワードが書かれていた。
9089…
………あ?
「朝の9時!?」
………………………………。
何かと思い出がある例の場所に来た。
河川敷。
帽子を被り、うろつく。
「すぐには来ないだろうし、来ても遠くで様子見るだろうな…」
「動くな。」
すぐに来た。
「来てくれたんだな。」
「お前何者だ。」
「勇者。」
「…勇者?」
「これ、龍虎針剣じゃないな。あれ、お前の武器だろ?」
「なんだ、ストーカーか?何が目的だ。」
「書いたろ?助けてほしい。お前みたいに、"秘密"を抱えてくれる人間じゃなきゃダメなんだ。」
「………俺の役割は?」
「盗賊。」
「違う。」
「大怪盗。」
「……どんだけ調べあげたんだよ…」
「とりあえず武器下ろしてくれる?」
…………。
「ふーん…じゃあ、もう1人のお前ってのを陰ながら護衛してやればいいの?」
「ああ…小さい女の子を尾行する頃まででいい。」
「何それ、俺性犯罪者の護衛するの?」
「違う。その子は…もう1人の俺を殺しかけるほど強いんだ。」
「魅力が?」
「戦闘力。お前でも勝てるか微妙なぐらい。」
「舐めんなよ?もうそろそろレベル40になって一人前にな」
「俺は80だ。」
リセット説あるから今現在は分からないけど多分80。
「なっ!んなわけねえだろ!伝説レベルじゃん!」
「分かったよ。じゃあ軽く戦うか?」
結局力試しみたいなのはやらなきゃいけないイベントなのだろうか。
「よーし、俺のスピードでギャフンって言わせてやるよ。」
「お前と一緒に強くなるってあの頃は楽しかった。」
「は?行くぞ!」
ビュッ!
踏み出しがうるさい。
地を蹴る音もする。
本気ではない。
「影斬りすんならもっと本気で来いよ。」
「っ!?お前!」
ザッ…!!
「俺のどこまで知ってんだ!!」
「…お前を失って引きずって生きた未来まで。」
「はあ?ぶっ飛ばした後、話してもらうからな!」
スッ…
「やっとか…」
それでも遅い。
さすが盗賊、音は完全に消えてる。
…あ、なんかこれだけ余裕があるとレベルは80のままかも。
「もらった。うご…あれ?」
「遅い。」
「え?今確かに首に」
「短剣をあてがった?本当に?」
「影斬り!」
シュパシュパシュパシュパ…!
「ま、こんなもんよ。」
「何が?」
「え"え"!?」
最終的にエルの攻撃を全回避して、デコピン1発入れて終了。
あとギャフンって言わせた。
「俺より速いのかよ…」
「師匠の次…上から数えて2番目に速いからな。当たり前だ。」
「師匠、紹介してくれよ。」
「無理。弟子になるための試練で死ぬよ?」
「え?」
「…エル、俺の話。どこまで信じてくれる?」
「知らん。これから次第だろ。」
「メールするから。これから起こること。」
「へいへい。でも俺にだって任務があるからな?」
「ああ。今度一緒に行かせてくれ。結界の点検。」
「…帰る。」
「またな。」
死んだ人と、生きてまた話せる。
不思議な気持ちだ。
Prrrrrrrrrrr!
「メールか。」
お前の話を元に、マリオの監視を始める。
「今度は、エルを死なせない。」
それだけじゃない。
こいつは魔王スパーンを助けてるキーキャラだから、先に殺せればスパーンは復活が遅れるかずっと復活出来ないかも。
…キーーン…
魔物か。
「ん。…お?」
俺、こんなふうに魔物の到来が分かったっけ?
「これ、散々憧れてた探知スキル?」
………………………………………。
本部に戻って、タクミさんに会った。
マリオを監視するなら、ギルド内も詳しく調べてもらう。
そして、可能であればなんとでも理由を付けてマリオの指輪を全て回収してもらう。
「マリオはどこまでの脅威だ。」
「息子のエルを殺す程度にはクソだよ。…というか、魔物の子供が人間なわけないし。エルの実の親は既に殺されてるのかも。」
「ならばそれも調べておく。」
「ありがとう。」
「デュークがお前は高速戦闘を超えた速さだと言っていた。」
「だって師匠が師匠だからね。」
「……。」
「考えることが遅い。本能で動く。」
「………辛い未来だったのか。お前の生きたのは。」
「うん。タクミさんが魔王ラミラミに殺されて、日本が沈むほど海面上昇、しかも魔王エンドラはありえないぐらい強かった。」
「エンドラとの戦闘を詳しく話せ。」
「言うほどのことは無いよ。今各エリアにいる勇者5人と魔導師と守護者の合計7人が結束してエンドラに挑んだ。残った人間の最高戦力だった。でも、苦戦どころか殆ど手も足も出ない戦いで…気づいたら俺以外死んでた。でも、エンドラも下半身吹き飛んでて…人間を褒めてたよ。」
「私がエンドラと戦えていれば…」
「タクミさんは魔王ラミラミに負けた。そいつも雷魔法が得意なんだ。ダメージを軽減されたのか知らないけど、魔法だけじゃないよね?武器とかも上手に扱えるはず。」
「…細かく私に話せ、何もかも。」
「え?」
「全てに先回りすれば、展開は変えられるかもしれない。」
「だけど…」
「確かにお前は今、扱いが難しい。だが…本来であれば死んだ人間だ。非情と言われても」
「ああ…そっか。俺1人どうにかなったって世界救えれば…」
俺は自分大好きすぎた?
…そっか。
「いいよ。話す。」
もう1度、今度は細かすぎるほど…思い出せる範囲で話した。
でも、所々で念を押した。
救われるべき人は守ってほしいと。
「ならば、まずはマリオの調査とエルの護衛か。」
「マリオは本部に内緒でエルに調べ物をさせてる。結界とか。」
「……。」
「予想も混ざってるけど。西のエリアに隠されてるワープ装置からエンドラが復活する。マリオは魔王スパーンだけじゃなくて、エンドラの事も狙ってたんじゃないのかな。しかも結構前から。」
「結界…なるほど。その証拠は手に入るか?」
「中央ギルドには秘密が多い。エルは物を隠すのが上手いし、マリオは指輪に大切な物を全部隠し持ってる。最強の世代の武器とか。あと中央エリアには輝石が残ってる。俺が使う予定だけど。」
「………よし。」
「ん?」
「策は用意しておく。戦闘の準備をしておけ。」
「何?どういうこと?」
「中央ギルドを襲撃する。」
「…………………は?」
いやー、やり直して未来改変を狙うとかネタパクってんじゃね?ってなるよねー。
…まあそれに関してはもう投稿しちゃったし完全否定出来ないけれども、ただやり直してハッピーフューチャーなエンディングにしたらつまんないからね。
次回!ナギが悪役に!?