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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その9、2周目は強くてコンティニュー
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Xデー、再び。




「いゃぁ~…キャラは良いけど異世界設定は読み飽きたわ」





「メイド…豪華なドレス…ネコ耳…ウサ耳…」




「デザインは好きだけどー…ヒロイン!ってのが居ないわ」





…誰かの声が聞こえる。




深い眠りから覚めた。ようにとかじゃなくて覚めた。



何時間というか何年レベルで寝てた気分。






「ナギちゃーん?居るのー?ちょっと卵と牛乳買ってきてー!」

「はいよー」





懐かしい気持ち。


思い出の断片。



あ、ギャラリーモードかなんかで人生の名場面を再生してんの?




…俺、死んだ人?




「………っは。」



呼吸を忘れてた。


ずっと息を止めてた。



慌てて吸った。




「……………ここ…?」




ようやく目が役割を思い出して、光が差し込んだ。


今の自分の状況を確認する。




「白い…部屋。」



パッと見、それだけ。



おっと…



「テーブル…写真…?」



部屋の奥にテーブル…その上に写真立てがいくつか見える。



ゆっくりと立ち上がって。



ふらふらしながら歩み寄る。




「………あ、あ…あああ…!あああああ!!」




写真に写る人達を見て、何もかもを思い出して。



悲しみが押し寄せてきた。




「うわああああああああああ!!!」




「ごめえええん!ごめんなさい!ごめんなさいいい!!俺があ!あんなっ!死に方あああ!!」




首に手をあてて泣き叫ぶ。



そこに傷はない。



痛みもない。



でも記憶に焼きついたその痛み、苦しみ、恐怖。




「……バガ、タロウ…ジミー…シラユキ…ナナミ…デューク…タクミ…」



写真の人物を左から順番に呼ぶ。



「…モモ……」




そして、最も失いたくなかった。




「ヒ、ヒカリぃ……うわあ"あ"あ"あ"ん!!!」




ただ泣いた。



泣くことしか出来なかった。



と、思ってた。




「………………………。」





見覚えのある部屋だと気づいた。



どこで?いつ?



「夢か…!」




夢で見た。



そう、部屋の真ん中には。



「魔法陣。」




デジャヴというか、予知夢というか。




「……………………………。」



気づいた。



服を着ていない。



全裸だ。




「…服…。」



タンスもクローゼットも何も無い。



でも、通路が見えた。




「……………。」



真っ暗な通路をペタペタと手で壁を伝って進む。




しばらくして、少し光が見えた。





「出口。」




しかし、押しても開かない。




「引く?」



引いても開かない。




なんで?どうして?



「横。」



引き戸でもない。




騙された気がして、怒りのままに拳を出口と思しき部分に思いっきり打ちつけた。




ガッ…ガラララララ…!!



「開いた…!」




…見覚えのある部屋。




「俺の部屋。」




自分の空間。


自分だけの世界。


たくさんの勇者と魔法使い。


それらが登場する物語、雑誌。


それらを演じるゲーム。




「…服。」


クローゼットから自分の服を選んで着た。


この頃の外出着は1式が3パターン、全通りの組み合わせで9パターン。



……あえて着たがらなかった服を選んだ。


白いチノパン、グレーの肌着、暗い色の長袖シャツ。

長袖シャツはボタンを少し開けて、袖を捲った。



この頃ならこんな服装はしなかった。


外出時は年中履いてるジーンズに、薄手の生地のパーカー。


肌寒い時期には厚めの生地のパーカー。


冬にはパーカーの上からジャンパー。




ガチャ。




慣れた階段を降りる。



リビング。



奥のキッチンで、女性がご機嫌な鼻歌で料理を作っている。



静かにドアを開閉した。




ガチャン。



外。



見慣れた景色。



Yとロゴの入った帽子が落ちてる。



拾って被った。




「やべぇよ…本当にやべぇよ…あの子本当に可愛い。信じられない。女神。生まれ変わりたい。イケメンに。金持ちのイケメンになりたい。そしたら…」



見覚えのある顔をした男とすれ違う。



今出てきた家に入っていった。




「…どうなってるんだ?」




…キィーーーン……



耳鳴り。



「…来る。」



走り出した。


何かに気づいて。


それを感じて。




すぐに着いた。



「駅…。」



人々が行き交う。


噴水、タクシー、バス。



そして、来る。





ドッカァァーーーーーーーーーーーーン!!!




「…A、スライム。」




《ウウゥ…ヴァ…》



…蓮コラとか粘土とか…そう。そう。



人間の武器は効かない。




「うわあああ!?化け物おおお!」


「いやあ!やめて!来ないでえええ!」


「ママーーー!」

「逃げるのよ!早く!」



人々が逃げ去る。


置いていかれた人々。



「あ、あ、あ、こんなことって…」


「あ、あ、あ、こんなことって…」




「信じられないよ…全部、信じられない…」


「信じられないよ…全部、信じられない…」





…隠れた。




「すみません、あの…ケガ人とかいないんですか?」

「あ、あ、あ、こんなことって…」

「あの!すみません!ケガ人とか救助の方って!」

「あ、あ、あ、こんなことって…」



…俺が話しかけてる。



「あの!爆発でケガ人とか出てませんか?」

「信じられないよ…全部、信じられない…」

「何があったんですか?見てたんですか?」

「信じられないよ…全部、信じられない…」



…俺が話しかけて、戸惑ってる。




《ウウゥ…ヴァァァァッ!!!》




魔物の鳴き声。



「俺ぉぃしくねぇよおおおおおおおああああ!!!」



そう、それでいい。



会える、会える。



「ヒカリ。」




((フレイム・アロー))






というわけで、新章スタート!


まだまだ続きます!よろしくね!

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