下準備
10月。
月をまたいで何日か経つと…話が出てくる。
「文化祭…!!!」
食べ物を扱えるのは3年のみ。
クラスでは出し物を考えるためのホームルームが行われていた。
正直、前回まで思いっきり戦闘パートだったから急ブレーキすぎて文化祭の気分にならない。
「それじゃあ他には?」
先生がトントンと黒板をチョークで叩く。
黒板に書かれた候補は…!
・カラオケ
・お化け屋敷
・メイド喫茶
「うわぁ…。」
「夏野っちは何がいい?」
「いや…えぇ…?」
・カラオケ
楽器等でお客さんの歌を盛り上げよう的なことらしい。
音楽は得意じゃない。
だから、前提からパス!
・お化け屋敷
ふと思った。蓮コラスライムみたいなキモい魔物を連れてきて魔法とかで拘束すれば安全かつ怖くね?
あーでもジャパニーズスタイルだと長い髪で白い布きれを着た女の人じゃなきゃいけないんでしたっけ?
いやージャパニーズホラーつまんなー。
・メイド喫茶
これはもうヒカリさんがメイドやることだけが唯一の武器。
それだけで売上凄まじいと思う。
クラスにまぁ…うん、ダメな人はいないけどさ、ヒカリさんがレベル高すぎるんだよね、常に公開処刑だから。
「無難に行くならメイド喫茶…でも、そんな格好させたら間違いなくクソみたいな男が寄ってくるのは間違いない!つまり!」
………シーン。
「あ……。」
マインドボイスが口に出てた。
皆の視線が痛い。
「お化け屋敷……どう?」
…………………………………。
「うふふ。ナギ君真面目に考えてたのね。」
「そういうわけじゃないんだけど…」
「そっちのもお願い。」
「うん。赤の絵の具と…」
放課後すぐにお化け屋敷のための買い出し。
あ、お化け屋敷を推したことでリーダー枠で頑張ることになったよ。
困った俺を見てヒカリさんもやってくれることになったけど。
「ヒカリさん。ジャパニーズホラーとアメリカンホラー、それともガチホラー…どれがいいかな。」
「ガチホラーって?」
「ヒカリさんが魔法で拘束した魔物を配置する簡単なお仕事。」
「ダメよ…片付けだって大変なんだから。」
「ですよねぇ…」
「夏野っち。居ること忘れてない?」
「あぁ…忘れてないよ?うん。アレだろ?黄色い鳥のおもちゃだろ?握るとピギューーーッてうるさいあれだろ?あ、ダンボールも買おう。」
「貰った方が安上がりだと思うよ?」
「いやいや…そこらに放置したダンボールなんて貰ったらお前…アレが…」
「アレ?」
「ナギ君はダメなのよ…その…害虫が。」
「あぁ!ゴ」
「ゴッドバァァァァド!!」
ベシッ!
「いたぁっ!」
ピギューーーーーーッ!
「やっぱり1個買うか。踏んだら鳴るように仕込もう。」
「夏野っち。」
「ん?」
口パクでゴ…あぁ、そう来るか!
「ゴッドバァァァァァ…」
「やめて!それ結構痛い!」
「うふふ。後は…髪かしら。」
「カツラな。」
「夏野っち、ノンノンだよ。ウィッグだよ。」
「じゃあ間を取ってヅラな。」
……………………………………。
「ふぃ〜………。」
買い出し後はすぐに下校。
今日は学校がメインだったけども疲れた。
「お風呂が癒し…俺も大人になりつつあるな。」
ヒカリさんが入浴剤を毎回使ってくれる。
よく見る粉末の有名なやつとは違うお金のかかったやつみたいで。
男だけど肌の質が良くなってく気がする。
「今日のミルキー風呂なかなかいいなぁ…ホットミルクに浸かってるみたい…これネガティブコメントか?」
《きゅーっ!》
「はっ!?」
《きゅきゅー!》
「ビビ!?なんで居るんだ…びっくりした…掃除?」
《きゅー。》
「違うのか。…お前も風呂?」
《きゅーっ!きゅーっ!》
「そうかそうか。」
言語が違くても通じるって、素敵だ。
「よし、手に乗れ。一緒に入ろうぜ。」
《きゅっ!》
ビビを手に乗せてそのままお風呂に入れた。
手から落としたら浴槽に沈みそうだから気をつけないとな。
「やわらかーい。」
《きゅきゅー…》
「気持ちいいよなぁ。」
《きゅー…》
「このぷにぷに感…お化け屋敷で、お化けの心臓を拾わせるとかどうだろう。なんかお札持ってこさせるより面白そう。」
《きゅ?》
「な!あー…でもゾンビやりたい。ポルターガイスト現象も…あ、ああ!!」
《きゅ!?》
「ポルターガイスト現象!これだぁっ!!ビビ!風呂の続きはまた今度な!…よいしょっ。」
入浴中にアイデアが降りてくる…本当だったんだな。
………。
「ヒカリさん、ポルターガイスト!」
「え?」
「ヒカリさんがお化けの代表になって、魔法でポルターガイスト現象を起こせば…!!」
「え!?でもそんなこと…」
「出来るでしょ?軽く炎出すだけでもやばいし。軽く雷魔法が使えればさ、教室の電気とかテレビとかパチパチ出来るでしょ?」
「危なくないかしら。」
「今じゃリアルを求めてVRやら3D映画やらあるんだしさ。」
「そ、そうね…考えておくわね。それよりも…」
「うん?」
「タオル貸して?ちゃんと頭拭かないと…」
「あ、あ、あ、…気持ちいい。」
「うふふ。それなら毎日拭いてあげるわ。」
「……じゃあお願いします。」
「うん。任せて。」
自分でやるとまぁワシャワシャやって終わりなんだけど…
こんなに気持ちよく拭けるもんかね。
マッサージしてるみたい。
「眠そうね。」
「まぁね…。」
「すぐ寝ちゃう?」
「うん……。」
……………………………。
「ふぁぁ〜…。ん。」
寝てた。
でもまだ朝じゃない。
夜か…あんま記憶無いなぁ。
ガチャ。
サーーーーーー…。
「水の音…?あートイレ行きたい。」
ッガン。
「いっ…ほぁ。」
寝ぼけてるって分かっててもしっかり出来ないもんだよな。
ガタ。ドン。ズズズ…
最終的に壁に肩をぶつけながらトイレへ。
…ガラララ。
「ふぁぁ〜…」
「……ナギ君?」
「ふぇ?…………。」
一瞬で目が覚めた。
目の前にはヒカリさん。
お風呂なう。
そして俺はパジャマの下に手をかけて脱ごうと…
「……………トイレ。」
「………ここはお風呂よ。」
「そうだね…。」
ガラララ…。
明らかに目はぱっちりしてたけど、寝ぼけてる設定で押し通した。
…いや!ミルキー風呂だから!見えてないよ!?
見えてない…膨らみは見え…でも谷間だけ…いや、あの!
「……これは…いや、トイレトイレ。」
これは覗きじゃない。
ちょっと開けるドア間違えただけ。
風呂場は横に押し引き、トイレは普通のドア。
よく考えれば分かるけど寝ぼけてたし。うん。
「大丈夫大丈夫。本当にダメな事したらヒカリさんはちゃんと怒ってくれるはずだから。うん。」
ガチャ。
「ふぅ。スッキリ。」
「スッキリした?」
「うん。そりゃもう…は!?」
「うふふ。もうしちゃダメよ?」
「いや、待って!色々と誤解されたまま話が進んでる!」
「はいはい。ナギ君も男の子ね。」
「ちょ…」
今ヒカリさんは風呂上がりでタオルを巻いただけの状態。
クソ!刺激が強すぎる!!
というか風呂覗いた後にスッキリしたとか言ったらもうアウトだろ色々と!
「ねぇマジで寝起きでトイレ行きたかっただけだから…ね?」
「分かったわ。…体拭いて着替えたいから…ベッドに戻っててくれる?」
「あぁ…うん。そうする。」
と言いつつ目が離せなかった。
しょうがない…ということにしてくれ。
皆には1カットだって見せないけどな!!
…………………………………………。
「ラミラミ…。デューク、どう考える。」
「オールマスター様。ヒカリ様ほどのお方があれだけ緊張感を持って報告してきたのです。今までの魔王とは格が違うのかもしれません。」
「お前の部下に偵察が出来る人間は?」
「はい。ルナ様が居ます。」
「ならば、明日連れてこい。任務を与える。」
「しかし、まだ"ペット"の3人は…」
「構わない。連れてこい。」
「分かりました。では、今夜はこれで失礼致します。」
ガチャ。
「魔王ラミラミ…ナギ達には任せられない。私が1人で戦わねば。」