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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その8、突然慌ただしくなったら後半
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荒くれ紳士 part4




テンペストして天井付近が炎の海になった。

それだけで猛暑日を超える熱さでやべえと思ってたら、今度はその炎の海から雨が降った。


白い雨。




「やばいやばいやばい。」


床に落ちた雨は床を燃やした。

てことは触れたら燃える。

それが雨になって降ってる。

避けられない。

…死ぬ。


「か、傘ぁぁぁぁ!龍虎針剣!!」


部屋の出入り口に程よい板が見えた。


「ドアぁぁぁぁぁ!!影斬りっ!!」


シュパシュパシュパ…バタン!


ガリリリッ!


床を深めに真っ直ぐ抉る。

そこにドアを引っ掛けて、壁に斜めに立てかけ中で体育座り…


「セ、セーフ……」


ジュウウウウウ…


「ぎゃあああああああああ!!」





「面白い攻撃だ。回避が主な…ナギのようであればひとたまりもないだろう。」


「オールマスター程なら防御も当たり前なのね。」


「当たらないに越したことはない。しかし、防御策は必要だ。」



ドアがどうにか俺を守ってくれて、やっとタクミさん達が観察出来た。

この無差別攻撃の中で平気で突っ立ってる。

というか会話までしてる。


「我が願いを叶えよ!フェニックス!真炎魔法!」



((ブレイズ・エンド))




フェニックス…?真炎…?何それ。


…何それっていうか…俺がいること分かってるのかなこれ…



「あ…やばい。」


「こちらへ。」


「セイラさん!」



そういえばそうだ。


ドアがあるなら部屋から出られる。

この部屋を出て観戦すれば良かったんだ。


大災害が起きる直前みたいなゴゴゴ…ってのが聞こえて慌てて逃げた。

ドアは…戻せないな。弁償はしないつもり。


「バリアを張ります、下がってください。」


ヴヴヴン…


緑色の下敷きみたいなバリアが部屋の出入口に張られた。


その直後だった。



ブオオオオオオオオオオオオオン!!


炎が部屋を満たした。

炎は虹色に見えた…多分本当に虹色なんだ。


割とマジで俺死んでたと思うんだけど…ヒカリさん、なんで?


「セイラさんは…ダメージの数値化って出来る?」


「…今のは目の前の炎で1600ぐらいです。細かくは分かりません。」


「そうなんd…1600!?」


あれ、待って…俺の全力攻撃でも600超えたっけ?

そもそも1000オーバーとかどういうこと?


「タクミさん…大丈夫かな…」


「……………。」


セイラさんの横顔は少し不安そうだった。

というか美人だ。





「どうかしら。」



「………熱いな。」



「あら、思ったより元気なのね。残念だわ。」



「十分だ。ダメージは1688…最強の勇者の通常攻撃に並ぶ威力。」


「そう…ならもっと強くしないとダメね。」


「よせ、ヒカリ。お前は自分の力に」


「それでも、強ければ問題ないでしょう?」


ブワァッ……



「この炎の中で、オールマスター様はどこまで動けるのかしら。その防御魔法が解けたら…うふふ。」


「少しおふざけが過ぎたな、ヒカリ。」


タクミを覆うように守る薄いバリアは少しずつ剥がれていく…しかしタクミはそれを魔力を追加する形ですぐに修復。

この業火の大海の中、バリアで常時魔力を激しく消費しながらの戦いを強いられた。



「あらあら。速さが自慢なのに、ゆっくり歩くのが限界なのかしら。」


((サンダー・テンペスト))


ゴロゴロゴロ………



部屋の天井付近は炎と雷が入り乱れ、床付近は生物が生存不可な業火が。



「ヒカリ…お前に俺を捉えることは出来ない。」


「試してみましょう。」


((ムーヴ・ソニック))



プスンッ!!


タクミは消えた。



「聞いたことないわ…でも、逃げ場は無い。」


((ブレイズ・シールド))


ボゥワァァァァァァァッ!!


もはや違いが分からない。

すでに部屋中炎だらけなのだから。





「中…見えないね…」


「戦闘は続いています。」


「何なのこれ。廃課金の戦闘みたいな?」


ヒカリさんがどうやってこんなに強くなったのか知らないけど、ヤバイ物に手を出した感がすごい。


バチチチチ!!


「うわっ!」


セイラさんの張ったバリアに雷がぶつかった。



「確かに戦闘してる…てかここも熱い。暑いじゃなくて熱い。」



正直一旦中止にしたいんだけど、止めに行ったら一瞬で火葬される。


「これ、止める方法無いのかな…」






「隠れても無駄よ?ギブアップしたらどう?」


ヒカリは炎を激しく操りタクミを探すことなく燃やそうとしている。



バチチチ…バスン!!


どこからともなく雷魔法が飛んでくるが、ヒカリは簡単に防御した。



「効かないわ!」

「効いたさ。」


ドゴッ……



炎は次第に勢いがなくなり、タクミが水と氷の魔法で部屋を冷やし始めた頃には消えてなくなった。




「あれ、炎がなくなった…!」


「バリアを解きます。」


「…うわー涼しい…。」


部屋に入ったら、タクミさんがキリンの形をしたジョウロを手に持って水を撒いてた。


部屋の中心にはヒカリさんが倒れてる。



「ヒカリさん!」


「背中を強く殴ったが問題ない。すぐに回復した。」


「タクミさん…あの炎の魔法って…あんなに強くなれるの?」


「今の戦闘は室内だからそう見えるが、屋外ならどうだ。炎で満たすことなど出来ない。当たらなければ意味は無い。」


「俺当たるとこだった…」


「ヒカリは手に入れた力に相応しいとはまだ言えない。」


「魔導師ってみんなああなるの?」


「いや。ヒカリはフェニックスと契約している。」


「フェニックス…さっき一瞬聞こえたけど…」


「真炎魔法を使う。…召喚神のような存在だ。」


なるほど。


「そのフェニックスの力があの炎なんだ。そういうのって他にもいるの?」


「分からない。」


「えー…」


「フェニックスを作ったのは…デニスだ。」


「あー…」


デニスさんのシークレット発明シリーズですか。


どうせ他にもいるよこれ。見つければいきなり壊れ性能キャラに早変わり。



「ナギ。これに頼るな。」


「バレバレか。」


「私はヒカリを倒したぞ。」


「ヒカリさんが成長して完璧に使いこなしたら?」


「………。」


「まぁ素で強いキャラのが好きだし、タクミさんが俺の師匠なわけだし。従うよ。」


今のところは。



「試練は今日はここまでにする。」


「そうだね。」



「…ごめんなさい、少し気分良くなっちゃったわ。」


「ヒカリさん、大丈夫?」


「ええ。ごめんね、ナギ君もいたのに考えなくて。」


それはマジで本当にマジであの…マジで。



「ヒカリ、話とは。」


「そうね、そう。話があるのよ。」


「切り替えすごいな。」




「新しい魔王が現れたわ。」




「…………………え?」



このタイミングで!?

いや、試練に参加してる場合じゃないでしょ!


「そうか。遭遇したか。」


「会話もしたわ。姿も写真を撮ったの。」


そう言ってヒカリさんはスマホを見せた。



ムッキムキの体。

真っ白な肌。あ、人間レベルじゃない白さな。絵の具使ってるだろってレベル。

それから…王冠。



「ダークスパークだろこれ。ファイアークエストにまんま同じ色の雷魔法使う敵いたもん。」


「そうね、雷魔法だったわ。」


「強さは?」


「今までの比じゃないわ。」


「スイ…ゲイズ…スパーン…今までのやつと今回の、10段階でどんな感じ?」


「スイが4…ゲイズは3…スパーンは2……今回の、魔王ラミラミは…10よ。いいえ、それ以上ね。」


「えぇ……」


「王冠…なるほど。封印が脆くなってきているということか。」


「すごいRPGっぽい発言。」


あ、ここで脳内記憶係の俺から…

※2002年5月。デニス及び魔王を異世界に封印。残ったモンスターも全滅し、"アナザーワールド"プロジェクトは隠蔽された。


そうだったそうだった。



「異世界の封印が解けたら…間違いなく世界の終わりだよね?」


「そうだ…人間は一人残らず必ず死ぬ。」


「どうやっても負けてしまうの?勇者だって揃ってるわ。」


「最近までこの本部の存在すら知らなかった。そして、本部には情報が多く隠されている。」


「…どしたの師匠。」


「ヒカリ。お前や他の役割を与えられた人間が知る情報には誤りがある。」


「どういうことかしら。」


「我々が"魔王"と呼ぶ存在は5体以上…いや、大勢いる。"向こう"にはな。」


「"向こう"…!!」


「待って待って…設定崩壊半端ないなおい。」


「事実だ。その中に本物の"王"がいる。」


「え、何それ、本物の魔王を倒さないと意味無いんですよ的な?」


「ナギ、お前は我々の目的を分かっているはずだ。」


「ワープ装置の破壊…でも魔王も倒すんでしょ?」


「必要であればな。だが、可能ならば互いに干渉することなくワープ装置の破壊が出来れば。」


「そりゃそうだけど、もう戦争状態だし。というかちょっと話の脱線が。」


「強い魔王が出てこれるということは、封印が解かれる日が近いということだ。」


「どういう仕組みなの封印って。強いやつほど出てこれないとかなかなか都合の良いシステムだよね。」


「その通りだ。守護者の封印により、強い力ほど出る事が出来ないようになっている。」


「じゃあ魔王が…魔王スイが出た時点でそこそこヤバかったとかいう?」


「…その通りだ。」


「うわぁ…」


どんだけ前の話だと思ってんだよ…タクミさんちょっと読み返してこいよ。


「で、何か出来ることはないの?封印を強化する的な。」


「不可能だ。守護者がもう1度封印を試みても無駄死にするだけだろう。」


「あー。封印の際きっちり死んでるパターンなんだ。」



「強くなるしかないわ。」


「ヒカリさん?」



「魔王を倒せるくらい強くなるしかない。でしょう?」



「ラミラミ…私も警戒し、戦闘に参加する。お前達は…強くなれ。」



「ちょ…師匠!?」


自ら戦闘参加を表明するレベルってヤバいかもしれない。



「ナギ君、1度帰りましょう。」


「うん…そうだね。」



俺の修行パートどこ行った。


…………………………………。




ヒカリさん宅、すぐそばに大きな雷が落ちたんだってさ?

すぐ隣のラーメン屋がワンパン。建物がバラッバラ。



「ヤバいなアレ。」


「そうね…モモちゃんが連れ出してくれなかったら危なかった。」


「うん…」


フェニックスの力で対抗出来てそう…



「出来たわ。」



モモをギルドに預けたまま帰宅して、ヒカリさんがすぐに仕上げたのは俺の戦闘衣装。


まぁ基本的に学校と寝る時以外はずっとこれ着ることになるんだろうけども。



「これって…忍者?」


「モチーフはそうね。でも、特別な繊維で出来てるから…」


ボゥッ。


「おっ!」


火が熱くない!

焦げつかない!


「魔法攻撃に強いわ。それに、高速戦闘の邪魔にもならないから安心してね。」


「へぇ……でも結構シュッとしてて動きやすいかも。」


問題があるとしたら…色?


白メインで黒いラインが色んなとこに入ってる。


「うふふ。色が気に入らない?」


「え?そんなことはないけど…」


「白は、明るい時の戦闘で周りに紛れるわ。黒はその逆ね。」


「これも特別仕様なの?」


「そうよ?ナギ君なら魔道具とかいっぱい調べてると思ったけど…」


「あー…それは確かに…でも自分のことで忙しくしてたかも。」


すぐ調べよう。気になる。


「カッコイイわ。」


「…なんか照れる。」


「カッコイイ。」


「ちょ…」




ついに俺の衣装が出来た!

マジックアーマーと合わせるとそれなりの防御力になりそう。








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