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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その7、結局は中盤が一番楽しい
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負け犬の遠吠え part5




「ナギ様、もう少しで鑑定魔法が使える人間が来ます、それまで…」


「いやだ!無理!こええよ!なんで!イタズラでもなんでもないならヤバいじゃん!!」


「ナギ君…」


「呪われた?何なの?え?死ぬ?俺死んじゃう?」


かれこれ1時間はこんな調子だ。

さすがに落ち着けない!

いきなり変な夢見てさ?起きたら血で体にイサマシキチカラとか書かれてさ?

無理無理無理無理無理無理無理無理!



「しっかりしろっ!!」


「ひいっ!?」


デュークさんが吠えた。


「世界を救う勇者が呪いの一つごとき、騒ぎたいのは真実を知りながら世界を救えなかった私の方だ!」


「……………………………。」


「……………………………。」


室内の3人が同時に静かになった。



「……今はバガ様が原因不明の呪いに侵され、シラユキ様はまた怯え狂っています。」


「……………あの、デュークさん、ごめんなさい。」


「………分かっていただけますな?」


「うん…」



ズキズキ


「うっ………」


「ナギ君?」


「ごめ…ちょっと1人にして…少しだけでいい。落ち着いたら呼ぶから。早く。」


「分かったわ…デュークさん。」


「はい。」


…バタン。



「はぁっ…はぁっ…あぁっ…」


イサマシキチカラ。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」


チカラヲモトメテ。


ヒツヨウトシテ。


全身に爪を立てられてるみたい。

深く…くい込んでいく…


アイシテル。


「…やめぇろおおおおおおおおっ!!!」



…………………………………………………。




「………………………終わったのか…?」


寝起きのこむら返りの痛みが徐々に引いていくように少しずつ落ち着いてきた。




「………今のって…」


そういえば、血で書かれた文字。

そういえば、直接語りかけてくるこの掠れた声。

そういえば、アイシテルとかいうコイツ専用の紛い物の愛の言葉。



「悪魔か。」


でも封印したはず。

封印後どうなった?もしかしてもしかするの?

プリズ〇ブレイクしたの?


「ヒカリさん!!デュークさん!!」


ガチャ。


「大丈夫!?」


呼んだ瞬間、いや。若干食い気味にヒカリさんが入って駆け寄ってきた。


「ヒカリさん。すぐに確認してほしいことがある。」


「なに?」




「悪魔の封印って解けてないよね?」





俺のこの発言からまたしてもギルド内で大騒ぎ。

アイテム屋さんと屋台2軒が怖いからしばらく休むと言って去っていった…


悪魔との戦いは犠牲があまりにも多かったし、死に方も酷いしまあ逃げる事を責めれるはずがないよね。



ヒカリさんが言うには、悪魔を封印した魔法鏡を正しい方法で間違いなく消滅させたから封印が解けることはないはず…らしい。



「……悪魔のやつ…実は封印効かない説とかない?」


「ナナミ様に聞く必要があるわね。ナギ君ここで待っていられる?」


「ムーヴ・ウルトラしちゃう感じか。…5分だけ甘えてもいい?」


「大丈夫よ。じゃあ少しベッド詰めて?」


軽く言ってみたけどまさか通るとは!!



「悪魔に何か言われた?」


「思い出せない…その時全身が痛かったし…」


優しく頭を撫でられながら…絶対人に見られたくない。


「ナギ君…負けないでね。」


「うん。」


フラグはバッチリ。後は回収するだけってばかやろう!


「それじゃあそろそろ行ってくるわね。すぐ戻るから。」


「うん。」


「ふふ。そんな寂しい顔しないの。」


((ムーヴ・ウルトラ))



「…負けないで、か。」


ヒカリさんもそこそこRPGゲームを経験してるし、勇者物のお話も知ってる。

だからこそ、何か感じての"負けないで"だよな。

間違いなく悪魔がまた関わってくる。


嫌だわー。



………………………………………。






「よーし。今日もノルマ達成。何事もコツコツ確実に。」


ガチャ。


「トモたーん!ただいまー!」


……………………。



「は?お迎え無し?怒らせるようなことしてないんだけど…」


「トモたーん?」


「……………………。」


「トモたん。居たんじゃん。なに?怒ってるの?」


「………。」


「後ろ向いてないでさ、ほら!勇者ジミーの帰還だよ!」


「そうか。お前が勇者か。」


「……………あ、ちょっと人違いです…ね。」


「心配するな。永遠に苦しむ、ただそれだけだ。」


「遠慮しま…すっ!!」

カチッ…シュルルルルル…ヒュン!!


「なっ…消えただと…今のは一体…。」




………………………。


ヒュン!


「ヤバいヤバいヤバいヤバい。トモたんじゃなかった。見た目はトモたんだったけど。こないだ強がって心霊番組8時間ぶっ通しで見せたのがよくなかったのかな…取り憑かれたのかな…」


「……でも取り憑いた奴が理解あるお化けだったら…ちょっと服脱いでもらったり…うひ。」


「いやいや。ダメダメ。とりあえずムーヴスイッチもしばらく使えないし…そうだなぁ、ナギに会いに行こう。力借りてトモたんを元に戻さなきゃ。」



……………………………。




「そんなはずねえよ!聖者が書いた書物だぞ…!!」


「でも、ナギ君に書かれた血文字は、記録の悪魔の血文字と同じでした。」


「……なら…ほら、持ってけ。」


ドン!


「これはたった1人しかなれなかった聖者の残した聖本。ホーリーブックだ。ホーリー系の魔法が唯一記されてる。お前なら少しは扱えるはずだ。失くすなよ?」


「ありがとうございます。」


「…ヒカリ、待て。」


「はい。」


「お前…何と契約した?」


「………炎の神です。」


「……そうか。アレが自分から人を選ぶとはな。両手に契約印が出てるから、相性も良いのか。」


「少しヤキモチ妬く神様なので、口外は出来ませんけど。」


「っは。"本物"の勇者に炎の神と契約した魔導師か。」


「急ぐのでこれで失礼します。」


「おう。」


((ムーヴ・ウルトラ))



「フェニックスか……ハルの次はヒカリ。あのクソ神らしいな。」



…………………………………………。




「んぐ。待て…ペース早いって。」


「そんな事ないにゃ!男の子はガツガツ食べるにゃ!」


「あっ…もご!もごごご!」


「にゃははは!お口いっぱいハムスターにゃ!」


忍び込んで来たルナに心配されてなぜかご飯を食べさせられてる。


マグロステーキ、マグロ丼、鉄火巻き、マグロの燻製?


マグロの集中攻撃。

こんだけマグロ食べたらマグロに恨まれるわ!

てかマグロがゲシュタルト崩壊してきた。


マグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロマグロ…


ヒュン!


「ナギ君!」


「ぶふっ!」


「にゃー!盛大に吹いたにゃ!」


「ゴホッゴホッ!」


「ルナちゃん、もういいわ。下がってて。」


「にゃー。」


「はい、お水。」


「ゴホッゴホッ…りがと…」


むせた。


マグロの恨み早速来たわ。



「ナナミ様にホーリーブックを頂いたわ。少し待ってね…」


「…ぷはぁ…ふぅ。ホーリーブックって?」


「悪魔の封印方法が載ってた書物よ。聖者が書き残した貴重な魔術書なの。」


「聖者?」


「治療師が役割昇格した先の…伝説の役割ね。書庫にも少しだけ記録があるけど、当時の人間の方が詳しいわ。」


上位職のさらに上…エンドコンテンツで得られるジョブみたいなものか。



「………ナギ君、悪魔の声が聞こえた?」


「うん。」


「あったわ。…悪魔の誘惑。誘惑に負けた人間は悪魔の生贄となる。私の目の前で死を恐れた戦士が悪魔に救いを求め、その体を血に染めた。封印したはずの悪魔は真の姿を現し、私は過去最凶の戦いに身を晒すこととなった。」


「…まずいな。」


「誘惑に負けたの!?」


「いいや。でも、悪魔は復活を諦めてないんだろ?しかも、俺にターゲット絞ってるみたいだし。」


そういえば、悪魔との遭遇のあたりから俺だけ声が聞こえたりしてたもんな。

最初から悪魔に目をつけられてたってことか。



「それもあったわ。悪魔の選別。…書いてある通りならナギ君しか悪魔の声が聞こえないみたい。」



でも引っかかるな。


「悪魔の誘惑…夢の中で選ばされたんだよ。護りし力か勇ましき力。悪魔が提案するなら…不死の力とかそういう…ダークな感じじゃないの?イメージで決めつけてるだけ?」



「………よし。」


「ヒカリさん?」



「光よ、この者に安らぎを!」


((ホーリー・


ガチャ!


「ナギー!」


「…なに、お前いつから空気読めないキャラになったの?」


ジミーの乱入。



「終わるまで外で待ってて。」


「すいません…」


ヒカリさんなんかトーン低い!なんだ!何かあったのか!?



「ナギ君、もう一回。いい?」


「何か分からないけど、うん。お願い。」


「光よ、この者に安らぎを!」


((ホーリー・ギフト))



スゥゥゥゥゥゥ…



「うお…」


白…若干黄色も含んでる…濃いめのバニラアイス的な色合い。


そんな色合いのオーラに体が包まれてく。



「あ、気持ちいいかも。」


「心も体も癒してくれるわ。空気が魔法で変わってるから勇者にも効くみたいね。」


「へぇ。ヒカリさんも光ってるよ。」


「そうね。私も気持ちいいわ。」


「なんか眠くなっちゃうね。」


「一緒に寝る?」


「………ダメだ、外にKYジミーさんが待ってる。」


「…そうだったわね。」



……………………………………………。



「それで?空気読めない、雰囲気ぶち壊しキャラになりつつあるジミーさんが何の用なの?」


「ナギ、それは酷い。」


「分かったよ。んで、どうしたの?」


「トモたんが何かに取り憑かれたみたいなんだ。」


「は?」


「怖がってたのに心霊番組見せたのがよくなかったのかな!?」


「取り憑かれたって…」


悪魔?でも俺がターゲットでしょ?



「部屋で無言で居てさ。勇者の帰還だぞー!って言ったら勇者って言葉に反応してさ。」


「ジミー。勇者に反応するヤバいやつって相当限られると思うんだけど。」


「え?」


あ、ジミーはまだ知らないのか。



「魔王スパーン。昔から何回も殺されてるのに復活してきた魔王。魂の交換だかなんだか知らないけど、人間とかに宿って復活してたんじゃねえの?って最近予想がついたとこ。」


「詳しいんだね…」


「一回戦って勝ってるからな。でも魂だけで逃げてったみたいだから…もしかしたら。」


「だとしたら…トモたんは?どうなる?一回倒せばいいの?」


「分かんない。元の宿主だったタロウ…あ、東南の勇者な。そいつは抜け殻みたいになってる。生きてはいるけど。」


「ヤバい…それはヤバい。救えないの?」


「いや、俺達も分からない事だらけなんだよ。魔王側の特別な技術なんだろ多分。」


「ナギ、体調良くなったら一緒に来てくれない?」



突然ヒカリさんが耳打ち。


(魔王だと確信が持てるまでダメよ…)


(ヒカリさん、ジミーと何かあったの?)


(個人的な問題じゃないわ。信じて。)



「ナギ?」


「悪いけどすぐには行けない。中央エリアは今トラブルが集合し過ぎててさ。俺も今危うい状態ではある。」


「そっか…」


「魔王スパーンの報告書、デュークさんに見せてもらって。少しでも情報揃えて対策練れば勝てない相手じゃないと思う。」


「ありがとう。じゃあこれ。」


ポイッ。


「おわっとっと…何この…」


消しゴムぐらいの大きさの…ボタンが1つ付いてるだけの箱?


「ムーヴスイッチだよ。勇者用に作った魔道具。」


「…名前からしてその効果って」


「ウルトラ程じゃないけどね。ショートとウルトラの間…のショート寄り。」


「何言ってんのか分からない。」


「ウルトラを10としたら3〜4ぐらいの距離ってことよ。」


「ヒカリさん分かりやすい。え?でもどうやってこんなの…」


「元々は救援物資とかをギルドから瞬時に送れないかなって作ったんだけどさ、物が飛ばせるなら勇者も出来ないかなーって。そのスイッチを押すと魔法に感電するみたいな作りにしたんだ。ちょっとピリッとするけど。」


「微弱な雷魔法の付加効果がムーヴってことか。なんかやっぱり勇者体質ってそんなでもない能力かもな。」


「改良してウルトラに近づけるとこだから、完成したらまたあげるね。それじゃ。」




「ジミーの話が予想通りなら大変だ。魔王スパーン…」


「魔王もだけど、今ナギ君は悪魔にも狙われてるかもしれないのよ?」


「人手不足…いや、勇者不足だね。」


「そうね…少し、休みましょう。」


「なんか強引。」


「……。」


ヒカリさんはベッドに入ろうとしてピタッと止まった。


「どうしたの?」


「ここだとまた邪魔されるかもしれないわ。」


「へ?」


「お家に帰りましょう。」


「マジか。」


「嫌なの?」


「すぐに帰ろう。最優先事項。うん。」



すまんなジミー。

ほら、体は大事だ。

健康だからこそ戦えるんだから、な?



…………………………………………。




「デュークさんどこだろ。」


「にゃにゃ?」


「あ!猫ちゃん!」


「にゃ。」


「覚えてない?東エリアの勇者、ジミーだよ!」


「にゃー…ジミーにゃん!」


「忘れてたな…」


「どうかしたにゃ?迷子にゃ?」


「資料を見せてもらうためにデュークさんに会いたいんだけど…」


「にゃ!おまかせにゃ!にゃーがあんにゃいするにゃ!」


「お!分かってるねー。ありがと!お願いするね。」



…………。



「なんですと!!それは…なるほど…ではナナミ様にも報告を…」


「にゃぁーー!」


「ルナ様!…いえ、ではかけ直します。」


「ごめんなさいにゃ。勇者にゃんの案内をしてたにゃ。」


「ギルドマスターの部屋…思いつかなかった。」


「あなたは…ジミー様。」


「うん。ナギにデュークさんから魔王スパーンの報告書を見せてもらえって。」


「分かりました。お持ちします。では会議室へ案内します。」


「うん。ルナちゃん、ありがとう。」


「にゃ!ばいばいにゃー。」



………。



「にゃー。暇にゃ。夜中だけど眠れないにゃ。…ちょっと探検ごっこするにゃ。」




コンコン…コンコン…


「壁にある隠し扉は違う音がするにゃ。にゃにゃにゃ…」



コンコン…カンカン…


「にゃ!?ギルドマスターの部屋に隠し扉にゃ!これは秘密の匂いにゃあ!」


ガサゴソ…


「にゃにゃー。美味しいマグロのレシピ集かにゃ?美味しい秘密がいいにゃあ。」


ガガガ…



「あったにゃ!隠し通路にゃ?入るにゃ。」



………ガガガガ…


「にゃ!?待つにゃ閉まるにゃ!にゃーああああああ!!!」


ズゥン…





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