第九話 回復魔法と受付嬢
「魔導ギルドへようこそ! お見かけしないお顔ですが、初登録ですか? それとも他の町での登録魔導士ですか?」
とりあえずエクスの案内でギルドのカウンターに並び、少し待って俺の番がきたわけだが、対応してくれた受付嬢はピンク色の髪の見た目が幼い女の子だった。髪はツインテールで、そしてなんと胸がでかい。ロリ巨乳だ。しかも誰の趣味か知らないけど受付嬢の制服が露出度高くてえっちぃっす。谷間凄いっす。
「……ヒール、そこあんまり谷間をガン見しない」
「し、してねーし!」
「どうだか」
「クー……」
エクスの目が冷たいな。そしてクーも呆れたような目を向けてきた。なんだよ、男の子なんだから仕方ないだろ。
「きゃっ! カーバンクルですよね~珍しいし可愛らしいですぅ~」
すると顔の前で両腕を合わせて受付嬢がはしゃいだ。
それにしても、う~んもしかしてちょっとぶりっ子入ってるのかなこの子?
「このカーバンクルね、ハンターに狙われていたらしいの。それを彼が助けて懐いたみたい」
「はぁ? ハンターだぁ! あのボンクラ共まだそんな性根の腐った連中がいやがるのか! マジで一度焼き入れないとわかんねぇんだなあのダボ共が!」
「…………」
え? あれ? 何今の? なんかこの子突然豹変したような――
「いや~ん、ごめんなちゃい、てへっ、今のは冗談ですよ~」
自分の頭をこつんっと叩いて元の態度に戻った。にこにことした人懐っこい笑顔も見せてるけど、え、何、何なのこの受付嬢?
「ヒール、冗談じゃなくて今のが素ね。あと受付嬢ではあるけど彼女も列記とした登録魔導士でこれでもB級だから怒らせないほうがいいわよ」
え? え? マジで?
「え~ひっど~い、私そんなに怖くないし~」
「そういいながら、ちょっとしつこく言い寄ってきた新人を再起不能に追い込んだの誰だったかしら」
「そんな子いたかな~? チャーミーわかんな~い」
……うん、とりあえず診断してみようかな。
ステータス
名前:イヤース・チャーミー
性別:♀
年齢:26
ジョブ:絶対破壊の魔導受付嬢
レベル:36
HP:524/524
MP:687/687
腕力:186
体力:178
敏捷:205
魔導:136
魔導スキル
□拳闘魔法□詠唱破棄□魔力増強□魔法破壊
物理スキル
□巨人の豪腕□拳闘術□拳速上昇□華麗なるフットワーク□覗き見禁止
称号
□巨人の血統□上級魔拳士
スリーサイズB99W57H90
こ、これは――すみません全面的にエクスの言っていることを信じます。
それにしても年齢二十六歳か~スリーサイズは見事なものだけど、見た目ロリなのに年は結構いって――
「おい、テメェ今覗いただろ?」
へ?
「お前バレてないとでも思ってんのか? あんまふざけたことやりやがると――砕いて潰すぞ?」
何を! 何でこの人俺の股間見ながら言ってるの!? 怖い、予想以上に怖い子だよ!
「ご、ごめんなさい……」
とりあえずやばそうだから五体投地で謝っておいた。逆らったらヤバイ子だよこれ!
「わかればいいの~今度から気をつけてね」
表情が緩んで、凄い豹変ぶりだな……いきなり心が折れそうなんですが。それにしても何でバレたんだ? と思ったけど、よく見たらスキルに覗き見禁止ってあるな、これか。
う~ん、やっぱりステータスを勝手に見るのは失礼にあたるのかな、今後は気をつけよう。
でもあまり詳しく見れなかったけど、この子凄いステータスだったな。そもそも巨人の血統ってなんだよって話だ。それ魔導士といっていいのか? 巨人の豪腕とか凄いのもちらほら見えたし。
「それにしてもステータスを見たって、貴方鑑定スキルも持っていたの?」
「うん、まあ似たようなものかな」
エクスに聞かれたから適当に話を合わせた。実際は診断だけどそんなに鑑定と変わらないしね。
「そうなんだね~でも特に女の子は勝手にステータスを覗かれるのは嫌がるから気をつけるんだぞ」
キュルン、という効果音でもついてきそうないい笑顔と舌ぺろで言ってきた。可愛いけど年齢はいい年だけどね。でもスリーサイズは本当に最高だけど。
「それで、彼魔法が使えるからこのギルドに登録したらって私が進めたんだけどね、その魔法が凄いのよ! なんと回復魔法なのよ!」
「回復魔法?」
興奮気味に話すエクスに向けて、コテンっと首を傾げてチャーミーが聞き返す。言っている意味がわからないとか、そんな雰囲気だね。
「そう、回復魔法。それで薬がなくてもこの子、怪我とか治療出来るのよ!」
「へ~すっご~い、そんな力が本当にあったら夢のようだね~」
……いや、凄い棒読みなんだけど。これ、間違いなく信用して貰ってないよね?
「いや、あのねチャーミー、本当なんだけど。私も切れた腕くっつけてもらったし」
「は~い、じゃあとりあえずギルドに登録ということで、これに基本情報書いてもらっていいかな~?」
ダメだこりゃ。エクスの話には全く耳を貸すことなく、登録の話進めちゃったよ。
もう! て、エクスもむくれちゃってるし。
でも、まぁいいか。俺としては登録できればそれでいいし。
なので、受付嬢が出してくれた用紙に基本情報を埋めていく、得意魔法は当然回復魔法だねっと。
「出来たよ~」
「は~い、どれどれ~……おい! テメェここに嘘は記載するなって書いてるだろ! 読めねぇのかこら! 得意魔法が回復魔法ってふざけてんじゃねぇぞ!」
また豹変したよ。結構沸点低いなこの受付嬢。
「いや、エクスも言ってたと思うけど、本当に回復魔法が得意なんだけど」
「ふざけんな! こっちは冗談に付き合ってるほど暇じゃねぇんだよ! いいか? 回復魔法なんてものはこの世に存在しねぇんだよ!」
うわ~なんか凄い切れてるし。エクスも、だから本当だって、と説明しようとしてくれてるけど全く信用する気配ないし。
どうしよう? また腕切ってからくっつけようか――
「お、おい! 誰か、誰か薬を分けてくれ! 仲間が、仲間が大変なんだ!」
そんなことを考えていたら、ギルドの入り口が勢いよく開いて、息せき切って三人の男女が飛び込んできた――
ここまでお読み頂きありがとうございます。気に入っていただけたならブックマークや評価、感想などをいただけると嬉しく思います。