第六話 回復魔法、え? 本当に無いの?
なんとか誤解がとけた後は、俺達は遅めの昼食を摂ることにした。すっかり忘れそうになってたけどクーを助ける前にデリシャスボアを狩ってたんだよね。
で、折角なんか魔法みたいのが使える剣士と知り合いになれたわけだしってことで、ボアの調理を手伝ってもらった。
何で私が――と、ちょっとブツブツ言ってたけど、理由も聞かずに斬りかかってきたわけだし、それぐらいはやってくれてもいいと思うんだけど、と告げたら喉をつまらせながら渋々と協力してくれたわけだねこれが。
まあそんなわけで一応お互い名前も知らないしということで飯を食べながら自己紹介しあう。
「俺の名前はヒールって言うんだ。ちょっと色々あってこの森で暫く暮らしてた。宜しくね」
一応嘘ではないからね。暫くと言っても数日とかだけど。
「そう……まあ別に詮索する気はないからいいけどね。私はエクスよ宜しくね」
なるほど、エクスね。まあ診断でステータスは既に把握してるんだけどさ。
ステータス
名前:エクス・ドクターノ
性別:♀
年齢:18
ジョブ:魔法剣導士
レベル:24
HP:158/158
MP:205/205
腕力:80
体力:76
敏捷:90
魔導:88
魔導スキル
□魔法剣□詠唱破棄□魔法切り□炎強化
物理スキル
□剣の友□剣術□俊敏
称号
□灼熱の魔法剣導士□上級剣士
スリーサイズB89W58H88
これが彼女のステータスね。うんレベルはやっぱ高いな~。なんか魔法剣とか強そうに見えたもんね。
後スリーサイズは知りたいな~と思ったら反映された。流石診断、便利だね。これってもしかしたら健康状態も教えてくれるのかな? と思ったらしっかり判ったしね。ちなみに良好だって。問題ないね元気一杯。
「ところで、あのクーを襲っていた連中は誰か判る?」
俺は誤解が溶けた後、実際にクーを狙っていた連中の死体を指差して事の顛末を話した。
それもあって俺の潔白は確実に証明されたわけだけどね。ただこの襲ってた連中が何者かはなんとなく気になったからエクスに聞いてみた。
「あれはハンターギルドの連中よ。荷物の中にカードがあったでしょ? あれハンターギルドの証明証だから間違いないわ」
「ハンターギルドって何?」
「は? 貴方ハンターギルド知らないの? 一体どこの田舎から出てきたのよ……」
そう言いながらもエクスはちゃんとハンターについて教えてくれた。どうやら人々の生活を脅かす魔物を狩ったり洞窟を探索してお宝をゲットしたりするのが主な仕事らしい。
「え? じゃあ、このクーも狩りの為に狙われてたの? もしかして俺ギルドに喧嘩売っちゃった?」
「それはないわ。だからあの連中は裏の仕事にも手を出してる下衆なハンターよ。間違いないわね。本来なら幻獣は保護の対象だから寧ろ狩ったりしたら処罰の対象よ。間違いなくハンターの資格を剥奪されるし、悪質なら手配書が回って静粛されるわ。尤も最近は結構勝手な真似するハンターも多くて、ギルド側も管理が雑だったりと困ったことも多いけどね」
う~ん、何だろ? 聞いてるとハンターギルドにあまりいい感情を抱いてないように見えるな。
でもこの子もハンターじゃないのかな? ギルド内でも色々あるのかね。
「とにかく、貴方は命まで狙われてるんだから殺したところで相手の自業自得よ。その幻獣を捕まえようとしていたのは事実みたいだし、寧ろ証明書持っていけば報奨金貰えるかもしれないわよ」
おっと、マジでか。それはいいこと聞いたな。正直俺こっちの世界のお金持ってなかったし。
「あと、はいこれ。連中の持っていたお金と戦利品よ。革の袋に宝石なんかも入ってるわね。他には大したもの持ってなかったけど、貴方が倒したならこれは貴方のものに出来るわ」
これは嬉しい! やっぱ持ち合わせがないと不便だしね。
と、言うわけでよこされた革袋を上げて中を見てみるけど、え~と、銅貨に銀貨に金貨と、あと銅やら金やらの板が入ってた。
うん、やばいね。そういえば俺全く貨幣の価値知らないや。
「ごめん、実は俺本当に田舎から来てて、実は貨幣のことよく知らないんだ。教えてもらっていい?」
「はい? ちょっと貴方本当にどっから出てきたのよ……こんな魔物が多い森で暮らしてたって言うし、よくわからない人ね……」
そういいながらも結構詳しく教えてくれた。何この子ツンデレ?
まあそれはそうとお金に関しては共通単位でオペが使われている。そして――
・銅貨:一オペ
・銀貨:十オペ
・金貨:百オペ
・白金貨:五百オペ
・銅札:千オペ
・銀札:五千オペ
・金札:一万オペ
・白金札:十万オペ
こんな感じで価値が分かれてるようだ。というかよく見ると硬貨や札(と言っても板みたいなもんだけど)に価値が刻まれてるな。
感覚的には地球とも似てるから判りやすいっちゃ判りやすいかな、うん。
ちなみにリンゴは一個平均二百オペぐらいだって話だから貨幣の価値も地球と同じぐらいだね。
そしてあの殺したふたりが持っていたのは全部で五万六千オペだった。安い宿が食事付きで一泊四千オペぐらいらしいから十日間は暮らせる計算だね。
「それにしても本当よくカーバンクルが懐いたわね。一体どうやったの?」
「うん? あぁ、最初はクーが罠に掛かっていたのを俺が助けてやったのがきっかけかな。そしたら懐いちゃってさ」
「へぇ……て、罠!? 罠に掛かってたのその子!」
「そうだけど、言ってなかった?」
「聞いてないわよ……あの連中そんなものまで仕掛けていたのね。でも見たところ怪我はなさそうだけど?」
「うん? あぁそれは俺が回復魔法を掛けたからだよ。それで治した」
「……はい?」
俺がボアの肉を味わいながらも説明すると、目を丸くさせて再度質問してきた。うん? 何だ俺別に滑舌悪くないつもりなんだけど。
「いや、だから、回・復・魔・法。俺も一応それぐらいの魔法は使えるからね。それで治療したんだってば」
それぐらいといっても内容的には規格外なんだけどね。
「――ごめん、言ってる意味がさっぱりわからないわ。確かに魔法にも色々あるけど、それでも回復する魔法なんて言うのはこの世にはないのよ。冗談にしても面白くないわね」
――はい?