エピローグ チートな回復魔法は永遠に――
結局天気も昼頃には回復した。そして晴れ晴れとした青空が広がるころには村の状況も一変していた。
「凄い! 川が、川が引かれている!」
「信じられないわ……」
「今までなんとか村に一つだけある井戸でやりくりしていたのに――」
村のみんなもキラキラした目で感嘆していた。ま、当然これも俺がジャガイモで上手くやった為だけどね
と、いってもそんなに難しい話じゃない。俺は種から作ったジャガイモを回復魔法ですり潰して、それで堤防を作っただけだ。
ジャガイモにはデンプンが豊富だけど、そのデンプンも時間を置くと固まるからね。その性質を利用したってわけ。勿論時間は回復魔法で短縮したけどね。
まあでもこのおかげで畑の水やりも相当楽になっただろうな。
教会の許可も得ず勝手に水を引いて大丈夫かな? なんて心配している村人もいたけど問題ないね。
何せこの水は川が氾濫した(実際はジャガイモで堰き止めはしたけどまあなりそうだった影響ってことで)為に勝手に村まで流れ着いた水だからね。ジャガイモをもとに作った堤防もたまたまそこに出来てただけだから問題ないさ。
そして俺のジャガイモ無双はまだまだ続いたよ。村の人の話だと畑を荒らす獣や魔物がいて困るって話でね。でもその為にギルドに頼むのも中々大変だってことだったからさ。
「じゃあ、はいこれ作ったから使ってね」
「え? これは一体?」
「これはジャガイモキャノンだよ。この筒にジャガイモを入れてこの引き金を引けば相手に向かってジャガイモが飛んで行くんだ。かなりの威力だからちょっとした魔物ぐらいなら余裕で倒せるよ」
そういった後、俺は村から離れた位置に見えた大岩に向けて実演してみせる。
するとジャガイモの弾丸で見事大岩が粉砕された。どよめきがおこったね。
ちなみにこのキャノンも原料はじゃがいもだから材料費はただみたいなもの。デンプンの性質を利用し固めて筒を作り、中に火薬がわりにあのメグミントを利用して引き金を引くことで内部で爆発させるようにした。
メグミントはたくさんあったし、それに回復魔法で量はいくらでも増やせたから暫く大丈夫な量を作っておいた。
勿論作り方もしっかり教えてあげたよ。回復魔法がなくても時間さえあれば筒型にして固められるしメグミントなら近くの森にも群生してるらしいからね。
そんなわけでジャガ村の防衛も完璧になったところで、改めて昼に祝いのために新しく生まれ変わったジャガイモを使った料理でちょっとした昼食会を開いた。
「うお! このジャガイモすげージューシーじゃん!」
「こっちの、豚の脂で煮込んだのはジャガイモの中から肉汁が溢れ出してくるよ~」
「うん、でも、なんでじゃがいもがこんなに美味しくなったのかしら?」
「それは川の水を堰き止めたジャガイモだからさ。ジャガイモは水を吸うからね。そのおかげでよりジューシーになって甘みもましたってわけ」
「むぅ、これは確かにこの村の名物になりそうですな。後は噂さえなんとかなれば」
「それも心配いらないよ」
俺がそう答えると、え、と村長が眉を広げ俺に説明を求めてくる。
「だってさ、このジャガイモは教会の聖なる水に浸ったおかげで美味しくなったし村も救ったんだぜ? そんなじゃがいもをよりにもよって教会が悪魔の芋なんていうわけないじゃないか。むしろこれを認めないと教会が管理している川が悪魔の川ってことになってしまうからね」
「な、なるほど! たしかにそう言われてみれば!」
「待てよ? じゃあおらの豚もこのジャガイモを食べさせて育てれば!」
「勿論もう不浄だなんて言われることはないよ」
村中から歓声が起きた。そして、流石ですヒール様! 村を救ってくれてありがとうございます! とジェイカプママに抱きつかれた。
いや~役得役得。
「ふ~もう、お腹一杯。でもそろそろ町に戻らないとね」
「そうだな。よく考えたらコボルトのことも報告してないし」
「教会の件とかもあるしね~」
言われてみればそうだな。と、いうわけで俺達は一旦町に戻ることにした。村の皆やジェイカプママやポインちゃんが寂しそうにしていたし、ボックも悪態をつきながらも、ま、またこいよな、なんてツンデレなこといってたけどね。
勿論落ち着いたらまた村に戻る約束をして俺達は町に戻ったわけだけど――
「グォオォオォオ……」
「ガ、ア、ッァァ、ア」
「ど、どうなってるんだよこれ!」
「な、なんで町中にアンデッドが?」
「ヒッ! こっちからも来てる~~!」
そう、俺達が町に戻ると、なんと! 町中の人間がアンデッドと化していた! なんだこれ? どうなってるの?
「ウァァア、ガァアアア」
「て、エクス!?」
ふと、近づいてきているアンデッドを見ると、なんとその顔はエクスだった。
「そ、そんな」
「あの魔導剣士のエクスさんまで……」
「ど、どうしよう……」
知り合いがアンデッドに化してたことで皆にも戸惑いが見えた。確かにこれは辛い。でも、でもそれでも!
「それでもやらないといけないんだ!」
「ひ、ヒールまさか!」
「回復魔法ーーーー!」
「待ってヒール殺すなんてだめ、て、へ?」
俺の魔法でエクスの身体が光りに包まれて、かと思えば――
「グガァア、て、あれ? 私どうしたのかしら?」
「「「戻ったーーーーーー!」」」
皆が驚嘆した。でも俺の回復魔法があればそりゃアンデッドから蘇生するぐらい楽勝さ。
「あ! そうだ思い出した! アンデッドを退治しにいって片付けたのはいいんだけど、仲間の一人が実はアンデッドに噛まれていてそこから感染が広がったんだったわ! 更に墓場から蘇ったアンデッドまでもが町に大挙してあれよあれよとこんなことに!」
「うん、詳しい説明ありがとう」
と、いうわけでわりとありがちな感じの内容だった。
「あ! ヒールあっちからもアンデッドが!」
「というか、あなた達ヒールに助けてもらった三人よね? なんで一緒に?」
「詳しい話は後、後、さぁ回復だ!」
と、いうわけで更に二人回復したわけだけどね。
「ウォオォオォオ、て、あれ? 俺どうしちまったんだ? て、おお! ヒール丁度よかった、ほらお前に頼まれてたナイフが出来たぞ」
「あれ? 私どうしたのかな? あ、ヒール! 頼まれてたローブ出来てるわよ」
回復したふたりは鍛冶士と服屋の子だった。どうやらアンデッドになりながらも出来上がった商品を渡そうと町を彷徨ってたみたいだな。商魂たくましい!
というわけで、ローブ代の残りも支払って着替えを済ます。
「この状況でのんきね……」
「クー……」
そう言われても折角買ったわけだしね。
「しかし、町中がアンデッドに溢れるとは……」
「これ、なんとかなるの?」
「俺に任せておけば大丈夫さ!」
と、いうわけで、町中を――回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復、回復ーーーーーー!
「あれ? ここはどこじゃ?」
「お爺ちゃん! どうして?」
「おお心の友よーーーー!」
「て、お前十年前に死んだ筈だろ!」
そんなわけで回復魔法でアンデッドを回復していったら、どうやら墓場で眠っててアンデッド化した遺体も百万人ほど蘇生してしまったらしい。
まあ、いいか。
「畜生、なんだって俺達がこんな……」
「教会の加護があるはずの俺達がなんでアンデッドになんて……」
うん? あ、あいつらハンターギルドの! 間違ってハンターも治しちゃったみたいだな。でも――
「ごめん間違えちゃった」
『ギャアアァアアァアアアァア!』
ハンターに関しては全員首を刎ねておいた。どうせアンデッドとして死ぬ予定だったんだし大人しく死んどけって話だね。
「へ? あれ? 私は一体、ギャァアアァア!」
あ、あと村に来てた商人もだな。なんかアンデッドになっててつい蘇生してしまってたけど、ついでだから処分しておいた。
と、いうわけでハンターと悪徳商人以外の町の人々は大体俺が蘇生したぜ!
「はっはっは! なるほど、確かに回復魔法というのは本当のようだな」
うん? 何か上空から声が聞こえてきたな。て! なんだあれ!? 骨の竜に黒ローブに包まれた誰かが乗ってるぞ!
「ちょ! 何よアレ!」
「だ、誰なのよ一体!」
「くっくっく――」
すると、竜に乗ってる黒ローブが目深にしてたフードを取った。
「そ、そんな、あれは、司教様!」
すると、フードに隠されていた顔を見た何人かの男女、格好からしたら教会の神官とかシスターかな? が奴を指さして声を上げた。
司教? あれがか! つまりこの様子からして諸悪の根源は司教だったというのか?
「違う! あれは私の偽物だ!」
と、思ったら人混みに紛れてた男の一人が叫びだした。そして人波をかき分けてあらわれたその男は白のローブに身を包まれていて、骨の竜に乗っている男と同じ顔をしていた。
「え? 双子?」
「違う! 奴はこの私を殺して私になりすましていた邪教の司祭だ!」
「え? 邪教というとヴィルス教の!?」
「だが、馬鹿な! ヴィルス教会は聖戦の際に殲滅されたはずだ!」
ふむ、どうやらヴィルス教とかいう邪教があって、でも本来ならもう殲滅されているということのようだな。
「つまり邪教はもう殲滅されているということですね?」
「ッ――!?」
「そ、その通りだ!」
ふむ、やはり俺の推理どおりか。まあ、それはそれとして。
「なんで滅亡した邪教がこんなところにいるんだよ!」
「ふん、確かにヴィルス教は聖戦などという大義名分を掲げた聖アスピア教会の手で滅ぼされたが、まだ生き残りがいたということさ!」
「なるほど、それで聖アスピア教会を貶める為に、この町の司教を殺しそしてまんまとなりすましたというわけか!」
「その通りだ。だが、まさか殺した司教まで回復魔法で蘇生されるとは思わなかったけどな。だが! そんなことはもうどうでもいい! この竜は骨とはいえ、元は聖竜だったもの! その強大な力を利用すれば、我らヴィルス教会が覇権を握るのも容易い!」
すると周囲から、馬鹿な、とか、聖竜の骨がアンデッドとしてなんて、やら不安そうな声が聞こえ始める。
どうやら聖竜とやらはそれほど厄介らしいな。
「でも、聖竜というのは元々はいい竜なんだろ?」
「そのとおりよヒール。でも今はきっとあの男の手でアンデッド化されることで操られているのね」
なるほど、でもそれなら話は早いね。
「だったらその聖竜を回復魔法でアンデッドから蘇生だ!」
「な、なんだとぉおおぉおおぉおお!」
偽司教が驚きの声を上げる。だけど、これだけの町の人々をアンデッドから見事蘇生してみせた俺ならそれぐらいたやす――
『グォ、グォオォオオオォオオオオォオオオオ!』
だが、その途端、空が一瞬にして闇に包まれた。とんでもない咆哮が響き渡り、衝撃がハンマーのように振り下ろされる。
その一鳴きだけで折角蘇生した町の人間も多くが死んだ。
これは、一体どうなってるんだ? それにあれが聖竜? 禍々しい黒色の巨体に邪悪としか言えない黒いオーラを纏った漆黒の竜、あれが?
「くくっ、が~っはっはっはっは! ご苦労だったヒール! 全くこうもうまくいくとは、笑いが止まらないぜ!」
な、なんだって? 何を言っているんだ?
「くくっ、マヌケな顔だなヒール。だったら教えてやる。この骨はな、聖竜なんかじゃない、元は邪竜インフルエンドの骨さ」
「な、じゃ、邪竜ですって!?」
「知っているのかエクス!」
「ええ、太古の昔、突如この世界に現れて人々を恐怖のどん底に叩き落した竜よ。一度鳴き声を上げれば億を超える生命が死に絶え、その邪悪な息吹はあらゆる生命を蝕み神さえも滅したと言うわ……」
「……つまり、ハゲが増えたというのか、許すまじだな!」
「その髪じゃないわよ!」
エクスの突っ込みが冴え渡るが、そんなことを言っている場合でもないか。
「その娘の言うとおりさ。尤も復活したばかりでまだ全盛期の力は戻っていないようだが、しかし! それでもこの町の連中を滅するぐらい容易い、そしてその絶望を糧に邪竜は全盛期の力を取り戻すであろう!」
「くっ、馬鹿な! 魂さえも封印された邪竜が復活するなんて……」
本物の司教が苦々しげに述べた。どうやら邪竜そのものは死後も復活しないよう教会の手で封印されていたようだな。
「その点ではそこのヒールという男に感謝しよう。何せ本来であれば各地に封印解除の法程式を密かに仕込んだ教会を建て、その力で邪竜を復活するつもりだったのだからな」
「!? そうか! それでお前はジャガの村に教会堂を建てようと!」
「そういうことだ。だが、それももう必要がない。何せヒール、お前が私の口車に見事乗せられ、邪竜を復活させてしまったのだからな!」
くっ、つまり全て俺のせいってことか。なんてこった――
「ふふっ、悔しそうだな? いいぞ! その顔が見たかった! お前たちの! 絶望が!」
「な~んちゃって!」
「……は?」
偽司教が怪訝そうに眉を顰める。だけどな俺には回復魔法があるのさ!
「だったら俺が改めて回復魔法で封印すればいいだけなのさ! さあ喰らえ邪竜! 回復魔法!」
――シィイイイィイイイイン。
「……へ? なんで?」
「かかっ! 馬鹿が! 邪竜はな全ての魔法を無効化するのさ! 回復魔法だろうがなんだろうが、一度復活すればもう通じはしない!」
「な! なんだよそれ! チートだろ! 卑怯だ!」
「いや、それヒールには言われたくないと思うけどね……」
呆れ眼でエクスに言われてしまった。でも、魔法が無効化じゃどうしようも、うん? 魔法が無効化?
「そうだ! だ、だれかこの町で一番高いところに俺を連れて行ってくれ!」
「は? なにそれ?」
「いいからはやく! 急いで!」
何せ既に邪竜は暴れ始めてブレスで何万って町の人間がやきころされてる。
「ならば教会堂の鐘のある場所が一番高いところになりますな。この司教が持つ魔法で送り届けましょう」
おお! 流石司教! 便利な魔法を持ってる!
「いきますぞ! 聖なる転移!」
うぉ! 司教の魔法で一瞬にして鐘のところまで移動できた。
よっし! ここならあの竜もよく見えるし町も一望できるぞ!
「ふん! 今更何をしたところで無駄よ。この邪竜インフルエンドに叶うものなどいないわ!」
「それは、どうかな? 回復魔法!」
「は? お前は馬鹿か? だからそれは無駄だと――」
『ギャオオォオォオオオォオオ!』
「な!? なんだと! 馬鹿ななぜ!」
偽司教が驚いてるな。だけどな、別に回復魔法は魔法攻撃だけ出来るってわけじゃない。
でもさすがだぜミスラン! 回復魔法でちょっと等級を三ツ星まであげたけど、このメスの切れ味は最高だ!
「はははっ! やっぱり魔法は無効に出来ても物理はむりだったようだな!」
「は? 物理? 馬鹿なこんなに離れていて届くわけが!」
「届くんだよ! 俺の回復魔法で空間を回復させて斬撃だけをその竜に届けるぐらいは余裕!」
「は? 何を言っているんだ? い、意味がわからんぞ!」
「意味なんてどうだっていいんだよ! そんなこまけぇこと気にしてる暇があるなら自分の心配してろや! いくぞ! もうひとつの翼も物理で切る! そして傷口を回復! 傷口の回復は魔法じゃない物理だ! だから傷口を広げてお前を地面に叩き落としてやる!」
「な、なにいいいぃいぃいいい!」
俺の回復魔法でインフルエンドが地面に落下した。するとエクスがこっちをむいて怒鳴り散らしてきた。
「ちょっとヒール! 何考えてるのよ! あんなの落として! 皆押しつぶされちゃったじゃない!」
「そんなの気にすんな!」
「気にするなって……」
「それよりも今がチャンスだ! そいつ魔法が聞かなくても物理攻撃は聞くぞ! だれでもいいから全員でかかって物量で押し切れ!」
「は? いや、だから竜の攻撃で殆ど死んでしまって」
「蘇生!」
「……は?」
町を一望できるおかげで俺の回復魔法の範囲も広がってるんだよ! さぁ一気に死んだ数千万の人々が生き返っていくぞ!
「な、うそ、これ、マジ?」
「あ! どさくさに紛れて死んだソードも生き返ったわ!」
「あ、ああ、ヒールはやっぱすげぇな……」
「感心してる場合か! いいから全員で掛かれ! 大丈夫だ死んでも俺の回復魔法で生き返る!」
「「「「「「…………」」」」」」
一瞬町中が静まり返った。でもその直後、鬨の声が上がり――
「うぉおおぉおぉお! こうなったらやけだ!」
「やるぜ俺はやってやるぜ!」
「あんたフライパンもってきな! これであの邪竜をぶっ叩いてやるわよ!」
「肉屋の意地みせてやるぜ!」
そして武器を片手に町中の人々が邪竜へと群がっていった。
「くっ! このゴミどもが! 焼き払え邪竜!」『グォオォオオォオオオ!』
黒い炎で次々と人々が焼き殺されていく。悲鳴が鳴り響くが関係ない!
「ほら、回復魔法だ! 蘇生したらすぐに行け!」
「くっ、なんだあいつは! 命をこんな粗末に扱うなど、あいつのほうがよっぽど邪悪じゃないか!」
「バカいえ! おれは回復してるからいいんだよ!」
「無茶苦茶なやつだ! だが、その魔力もいつまでも持つまい!」
「魔力を回復!」
「……はい?」
「魔力を回復したんだよ! 先入観で出来ないと思ってたけど、やってみたら出来た!」
「ふっ、ふざけるなぁあああぁあああぁあ!」
偽司教が吠えた。悔しがってる悔しがってる。さぁ! ここで勝てなくても物量で押せば、たった一匹の邪竜ぐらいなんとでもなるだろう!
邪竜の爪攻撃!
町人Aが死んだ! 町人Bが死んだ! 町人Cが死んだ! エクスが死んだ! ソードが死んだ! アローが死んだ! マリエルが死んだ! その他85万人が死んだ!
ヒールの回復魔法!
町人Aが蘇生! 町人Bが蘇生! 町人Cが蘇生! エクスが蘇生! ソードが蘇生! アローが蘇生! マリエルが蘇生! その他95万人が蘇生!
邪竜の尻尾攻撃!
町人Aが死んだ! 町人Bが死んだ! 町人Cが死んだ! エクスが死んだ! その他220万人が死んだ!
ヒールの回復魔法!
町人Aが蘇生! 町人Bが蘇生! 町人Cが蘇生! エクスが蘇生! その他250万人が蘇生!
邪竜のブレス!
町人Aが死んだ! 町人Bが死んだ! 町人Cが死んだ! 司教が死んだ! ギルド長が死んだ! キューティーが死んだ! エクスが死んだ! ソードが死んだ! アローが死んだ! マリエルが死んだ! その他666万人が死んだ!
ヒールの回復魔法!
町人Aが蘇生! 町人Bが蘇生! 町人Cが蘇生! 司教が蘇生! ギルド長が蘇生! キューティーが蘇生! エクスが蘇生! ソードが蘇生! アローが蘇生! マリエルが蘇生! その他777万人が蘇生!
「なんで蘇生の数の方が上回っているんだぁあああぁあぁああぁあ!」
「過去に死んだ人も一緒に蘇生してるからだよおぉおおおぉ!」
そう、この町で過去に死んだ人もついでに蘇生しておいた。人数多いほうが有利だしね。だがハンター! 貴様らはダメだ!
そして、そうこうしている内に、遂にその時がやってきた。
『グギャアァアァアアァアアア!』
「ば、馬鹿な、じゃ、邪竜が、あの最悪の邪竜と呼ばれた邪竜インフルエンドが、こんな連中に、倒されるとは!」
そう! 遂に邪竜が倒れた。断末魔の雄叫びを上げて、そして――そのまま傾倒して……。
「……へ?」
――プチッ。
項垂れていた偽司教の上に思いっきり倒れてしまいました。うん、まぁ自業自得とは言え哀れな最期だったな。
「お、おいこれってもしかして?」
「邪竜を、倒したのか? 俺達が?」
「私達が、あの、邪竜を――」
『ウ、ウォオォオォオオオオォオオォオオオオ!』
そして地鳴りのような勝鬨があがり、これも神様の思し召しです――と、涙を流して司教が締めの言葉を述べたことで……セイロンガンの町での死闘は無事幕をとじたのだった――
◇◆◇
あの後の話を少ししよう。いや~とにかくあの後は大変だったね。事後処理で俺は回復魔法で壊れた建物も全て回復。次々と死んだ人々も蘇生で無事。
ただ、本来死んでる人間まで回復魔法で蘇生したから、中々教会も大変だったようだ。戸籍も新たにつくりなおさないといけないとかでね。
でも、結果的に俺の回復魔法で町や教会が救われたのも事実だし。俺が回復魔法が使えることは結局皆にバレちゃったけど、その功績が認められて回復魔法について教会からとやかく言われることはなくなった。ハンターギルドやアクラツ商会は、成りすましていた司教との癒着が判明して、ハンターギルドは解体、商会も営業停止、結果的に俺が首を刎ねたハンターやボッタクリもアンデッド化して死亡ってことで片がついた。その代わり俺が所属していた魔導ギルドが大忙しになりそうだけどね。
で、何か大司教の位を与えるから教会に入らないか? とまで勧誘された。
ま、結局それは丁重にお断りしたけどね。
そしてならば、と教会から何かお礼をしたいと言われたわけだけどね。
だから俺は――
「えへへ~パパ~遊ぼ?」
「うん、仕事が終わってからね」
俺はそう言ってポインの頭を撫でた。ポインは俺に撫でられると嬉し擽たそうな顔を見せる。
「ク~ク~♪」
そして一緒にポインに抱えられてるクーも撫でてやった。クーもすっかりポインに懐いたね。
「貴方、私も何かお手伝いいたしましょうか?」
「あ、駄目だよお腹に触るから」
「ふふっ、楽しみだねお兄ちゃん! 弟かな~妹かな~」
うん、というわけで、あの一件も落ち着いた後、俺は結局ジャガ村に身を置くことにした。
そしてそれを決めてジャガ村に戻ったその日に、お礼という形でジェイカプママとベッドでインしたんだけど、その一発でなんと新たな命が宿ってしまった!
というわけで男たるもの責任はとる必要はあるしね。それにまあジェイカプママの事は気になってたしね。だから俺達は正式に夫婦になった。式はあの本物だった司教が上げてくれたよ。
「……どっちでもいいよ」
う~ん、でもボックは相変わらず素直じゃないね。
「おいおい、そんなことでどうするんだったボック、お前はこれから産まれてくる子供のお兄ちゃんになるんだぞ?」
「そうだよお兄ちゃん」
「う、うるさいやい!」
言って、ボックは背中を見せて駆け出した。だけど、そこで立ち止まり、
「……母ちゃんを泣かすなよ、と、父ちゃん」
と呟いて出ていった。全く本当に素直じゃないね~。
「あの、先生に治療してもらいたいんだけど大丈夫かな?」
「あ、私もお願いします。先生にお願いすると調子よくて」
「わしも腰がすっかりよくなってのう、またよろしく頼むわい」
おっと、そうこうしている内にまた患者がやってきたね。
そう、俺が教会にお礼として受け取ったのはこの治療院。ジャガ村には教会堂の代わりにこの治療院を建ててもらったってわけさ。
その結果、ジャガ村だけじゃなく周辺の村や噂が噂を呼んで王都からも治療をお願いしてくる患者がやってくるようになって、結構忙しい毎日を送っている。
「はい、判りました。それじゃあ順番にみていきますから診断させてくださいね~」
――何はともあれ俺は地球では結局叶えられなかった医者になるという夢を、この異世界で果たすことが出来た。
これからはこの村で人々の幸せのために尽力しよう。
そう、この異世界で唯一のチート回復魔法の力でね!
終わり
と、いうわけでこれにて『俺、異世界で唯一のチート回復魔法士になりました』は完結となります。ここまでお付き合い頂きありがとうございます!
読んでいただいた皆様に感謝!
またこちらは完結いたしましたが新連載も始めております。
『迷宮で目覚めたら、何故か進化の剣だった』
下記リンクより作品ページへいけます。
剣として目覚めた主人公の物語です。迷宮探索と剣としての成長系です。
もしよろしければちらりとでも覗いて頂けると嬉しく思いますm(_ _)m




