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第三十二話 回復魔導士と井戸

「本当にありがとうございました」

 

 ふたりの母親であるジェイカプさんが、三つ指突いて俺にお礼を言ってきた。 

 それにしても回復魔法の効果は絶大だな。病に侵されている時は栄養不足で凄いやせ細っていたのに、回復したらボンキュボンの見本みたいな体型にまで回復したよ。


 しかし、本当にこの人、ふたりも子供産んだのか? そうは思えないほど体型が崩れていない。

 

 おまけに美人だ。ここ重要、美人だ。髪は子供たちと一緒でブラウン。後ろで団子型に纏めていて、首元に僅かに残った髪がセクシーでもある。

 

 そしてタレ目がちな瞳がまたエロチックで、鼻筋も通り唇もふっくらとしたピンク色。血色もよくなったおかげで腹の白さも極まり、とにかく美しい。


 そして何より胸、そう、娘も七歳にして信じられないほどの大きさを誇っていたけど、母親は娘以上にすごい。流石Jカップ。いや名前から想像しただけなんだけど、それぐらいあってもおかしくはない。


 本当、ポインちゃんは間違いなくこの母親の遺伝子を受け継いているな。

 それにしても、その服ちょっと前が開けすぎじゃないですかね? いや本当、俺としてはもう全然ありなんだけど、なんというか、多分この人ノーブラ……だから生乳も覗けちゃうけど、先端のアレも見えそうな、それでいて見えないという微妙なもどかしさ! て、痛! スネ蹴られた!


「おま、何すんだよ!」

「うるさい! 母ちゃんをエロい目で見るな!」

「こらボック! あなたなんて事をするの!」


 眉を怒らせて俺を怒鳴ってくるボックだったけど、Jカップもといジェイカプママに窘められた。

 どうやらお母さんは俺の味方らしいな。治してよかった。


「で、でも、でもこいつ! 今エロい目で母ちゃんを!」

「何を言っているの! この御方は私の命の恩人なのですよ。それなのに蹴るなんて……本当ごめんなさいこの子が――」


 お母さんがボックの頭を押し付けて強引に頭を下げさせながら謝罪してくれた。その時にジェイカプさんも上体が下がるから、なんかもうやばいぐらいの深い谷間がチラチラ見えてヤバイな。眼福もいいところだ。


「……こ、これは凄い迫力だな」

「うん、ヒールが見てしまう気持ちも僕には判るよ」

「――ふたりとの関係考えようかな私……」


 なんか後ろから、マリエルにはマリエルの良さがあるんだって! みたいな機嫌を取り戻そうとしてる声が聞こえてくるな。


 まああの子そんなに大きくなさそうだしね。仕方ないね。


「それにしても、本当になんとお礼をいっていいか……もし私にできることがあればどんなことでもいたしますので」

「え? 本当ですか?」

「はい、なんでも言ってくださいね。私の……命の恩人ですし」


 ちょっと頬を紅くさせながらジェイカプさんがそんなことを言ってくれた。

 な、なんでもか、何か色々考えてしまいそうになる。


「なんでもといっても、お前変なこと母ちゃんにお願いするなよ、て痛っ!」

「いい加減になさい! 全くもう」


 ボックの後頭部にお母さんのげんこつが振り下ろされた。ちょっと涙目になってるな。

 うん、そうそう、少し反省したまえとね。


「お兄ちゃん、ママを助けてくれてありがとう! もし私にも何か出来ることがあれば、なんでもするからね!」


 ……これはこれで、いや、でも流石に七歳は不味いしな。うん、ここは気持ちだけという体で――


「ところでヒール、他にも色々治しに回らないといけないんじゃないか?」

「え? ああ、そっか。確かにそうだな。ごめんなさい、とりあえず一旦他の人の家までいって診てまわってきますので」

「そうですか? 判りました。確かに村の皆のことも大事ですからね……」


 そして名残惜しそうに俺はJカップママに見送られた。まあ、別にこれでお別れってわけじゃないしね!


 そして俺は次々と村中の家を回り回復魔法で奇病(実際は寄生蟲によるもの)を治していった。

 その度に拝まれたり、涙を流されて感謝されたりと結構大変だった。


 でも奇妙なことが一つあったな。村には当然子供もいるけど、子供は全く奇病に掛かってなかった。なんでだろ? なので結局俺についてきているボック(ポインはお母さんについている、ボックは怒られてバツが悪かったのだろう)に聞いてみた。


「そんなの俺にも判らないよ」

「う~ん、何か大人たちだけがやっていてボックみたいな子供がやってないことってある?」

「そんなこと言われても……う~ん……」

「そもそもこの病気の原因ってなんなんだろうな?」

「そうだね、それが判らないと治しても結局同じことが起きるんじゃないかな?」

「うん、ヒールもずっとこのまま村にいるわけにいかないだろうし、原因は見つけないとね」

「あ、それならもう大体判っているから大丈夫だよ」

「「「嘘、本当!?」」」


 三人が声を揃えて驚いたな。まあ診断でこの寄生蟲(正確には魔病蟲)が水を媒介にして広まったことは判ったしね。


 そして村の皆にも聞いたけど、この村には井戸が一つあって全員飲料水にはそれを利用していた。そうなると――というわけで俺は井戸に向かう。


 そして村で一つだけある井戸の前まで来たんだけど――


「うん? なんだこれ? 蓋が閉まってるな――」


 そして蓋は鎖でガッチリ固められて南京錠が掛けられていた。これじゃあ外せないな。いや、回復魔法使えば楽勝だけど流石に勝手には出来ないし。


「ああ、井戸は使ってない時はこうやって蓋が閉められてるんだ。夜には鍵も掛けられるんだけど、鍵の管理は村長がしているから閉めっぱなしだったんだと思う」


 なるほど、村長も倒れていたから鍵を開ける人がいなかったのか。


「でもこの井戸ってボック達も使ってた水だろ? 鍵がしまってる間水はどうしたんだ?」

「普通は基本溜めておいた瓶の水を飲むから、暫くは大丈夫だったんだ」


 そういえばどこの家の横にも瓶が置いてあったな。多分井戸で汲んだ水を瓶に溜めて普段はそれを飲水とか洗い物に使ってるんだろう。


「でも、瓶の水は井戸から汲んだ水で、大人たちも飲むよな?」

「うん、でも大人たちは瓶に水を溜める時に井戸から汲んだ水をそのまま飲んでたりもするね」

「!?」


 ……そうか、この瓶は結構大きいから一度溜めれば一週間ぐらいは持つ。つまり子供たちの飲んでいる瓶の水にはまだ寄生蟲が湧いていなかったってことになるのか?


「おい! お前たち何をやってるんだ!」


 色々と俺が思考をめぐらしていると、またややこしいやつの怒鳴る声が聞こえてきた。

 

「ドック! いい加減しないか! わしらの命の恩人だぞ!」


 するとその横には筋肉むっきむっきの村長もいたな。あ、でもこれはちょうどいいかもしれないや。

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