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第三十話 回復魔導士と奇病の村

「ボック! ポヨン! お前たちどこに行っていたんだ! 君たちのお母さんだって心配していたんだぞ!」

「ご、ごめんなさいドックさん……」

「……謝る必要なんてないぞポイン! こいつが動かないから俺達がやるしかなかったんだし!」

「な!? なんだとこいつ! 甘い顔してれば付け上がりやがって!」

「はいはい、ストップストップ」


 なんかふたりに案内されて半日ぐらいあるいて村まで来たけど、着いた途端中年のおっさんが駆け寄ってきて険悪な雰囲気になった。


 勝手にふたりで村を出て怒る気持ちもわかると言えば判るけど、拳握って殴りそうな雰囲気だったしな。だから俺が間に入った。


「な、なんだお前は! よそ者が何のようだ!」

「彼はヒール、俺達と一緒でセイロンガーンで活動している魔導士さ」


 俺の代わりにソードが前に出て、熱くなってる彼に事情を説明してくれた。俺が話しても良かったんだけど、アローの話だと俺の見た目はかなり若く見えて説得力がないんだそうだ。酷いな!


「……そうか、そんなことが、くそ! だから教会堂に反対するなてやめろって散々親父に言ってきたのに!」

「教会堂? 親父? そもそも貴方は?」


 気になったので俺は彼に尋ねる。すると訝しげに俺を見つつ、答えてくれた。


「俺はこの村の村長の息子だよ。今は……親父も倒れてるからな、俺が村長代理をやってるんだ」


 なるほど……みたところ決して大きな村ではないし、多くて百とか二百世帯ぐらいの村って感じだけど、かといって全く人の姿が見えないのはおかしいしな。


 村長も倒れたってことだし、奇病とやらがかなり蔓延しているのかもしれない。


「それじゃあ、その倒れている村長に先ず会わせてもらっていいかな?」

「は? 何だ藪から棒に。魔導士だかなんだか知らないが、いきなり会わせろと言われてはいそうですかといくか」


 う~ん、言ってることは判らなくもないんだけど、なんかけんもほろろというか随分と否定的な人だな。


「そんな言い方無いだろ! 兄ちゃんは村の皆助けに来たのに!」

「何、助けに?」


 ボックも偉い掌返しな気もするけど、俺とこいつを天秤に掛けたら俺の方に向いたって感じか。

 このふたりあまり仲良さそうに見えないしな。それにこのドックはドックで眉を顰めてあきらかに不快といった表情。


「バカいえ、薬でも手に入ったとでも言うつもりか? だがな、この奇病に効く薬なんて無いはずだぞ」

「……効く薬がない? この子達からは薬が手にはいらないと聞いたんだけど?」

「だ、だから効かないんだから薬なんて手に入るわけないだろ!」


 ……な~んか言動が怪しい気もするなこいつ。


「とにかく村長さんにあわせて貰えませんか? 彼は回復ま、いや、こうみえて病について詳しいのですよ」

「このソードも彼に助けて貰ったんですよ」

「信頼できる御方ですのでどうか」

「ドックさん、ママも、ママも助かるかもしれないんです。だから、お願いします!」


 俺以外の三人にも願い出られ、ポインにも頭を下げられ、ドックも困り顔を見せたが、流石に無下にも出来なかったのか、

「少しだけだぞ!」

と言って村長の家まで案内してくれた。


 俺としてはこのふたりの母親も気になるところだけど、村って閉塞的なイメージだし、ちゃんと話は通しておかないと後がややこしそうだしね。


 かといって村長代理を名乗ってるこいつはどうも妙な感じだし、だから先ずは村長にあって話を聞くことにする。

 




「ゴホゴホ、こんな格好で申し訳ないのぉ……」


 村長の家に行くと、村長はベッドで寝かされていた。ちなみに建物は藁葺き屋根の建物で壁は木製、ベッドも木製だ。


 ちなみにこの村の建物は全て藁葺き屋根だな。何もなければ風情を感じたかもしれない。


「それで、わしにようというのは何かのう?」

「親父は病で大分弱ってるんだ。手短に頼むぞ」


 ドックが睨むような目を向けながら言ってきた。なんか感じわるいよな。


「この子供たちから村で奇病が流行ってると聞いたのですが」

「うむ、症状に差はあれど、既に息子と子供達以外は全員症状にかかってしまっておる……」

「そうだ、大変なときなんだよ。全く病を治すとか簡単に言ってくれるが、そんな上手くいくわけないだろ。な、親父、そこのが、いや、ジェイカプさんの子供もハンター協会に頼みにいくとか無茶やらかしてんだよ」

 

 ちなみに森でのことは言っていない。薬の材料を無断で採取するのは禁止されてるらしいし、子供たちも村の為を思ったことだから、それで責められるのも可哀想と思ったからだ。


「そうか、子供だけでそんなことを、ゴホッ、ゴホッ!」

「お、おい! あ~やっぱ無茶だぜ。これはやはり教会堂を建てるのを承諾するしか無いって。な? そうしようぜ」


 確かに村長さんは大分苦しそうだな。ちょっと診断してみるか。



ステータス

名前:ソン・チョウ

性別:♂

年齢:61

ジョブ:村長

レベル:3

HP:2/10

MP:1/5

腕力:4

体力:2

敏捷:1

魔導:6

状態異常:寄生状態(魔病蟲)


魔導スキル

□火魔法


物理スキル

□昔は凄かったという思い出話


称号

□ジャガ村の村長



 こ、この爺さん魔法が使えるのか――と、言ってる場合じゃないな。とりあえず名前とかスキルとか突っ込みたいところは結構あるけど、重要なのは状態異常だ。魔病蟲? しかも寄生状態? これについて詳しく知りたいな。


・寄生状態

なんらかの形で体内に何かが寄生した状態。寄生された生物に悪影響を及ぼす場合が多い。


・魔病蟲

 寄生タイプの魔物。産まれた時は小さな殻状の卵に包まれた状態で、孵化すると視認できない程微小な魔物として獲物を求め始める。卵は水の中で孵化しその水を飲んだ相手を宿主とする。寄生後の潜伏期は一~二日。その間に宿主から栄養を奪い、後に体内で瘴気をばらまくようになる。一度瘴気が発生すると宿主は酷い倦怠感に襲われ後に立っているのもやっとになり更に症状が進むと激しい咳、嘔吐と下痢を繰り返し酷い高熱にも悩まされる。食欲も減退し瘴気の影響で体力も徐々に奪われ、発症から十日以内に対処しなければ確実に死に至る。


 かつてこの魔物の存在を知られていない時は大陸中の川に卵が溢れ、数百億人が犠牲になるという痛ましい大惨事に見舞われた。しかし魔物の類であると知れると研究が進み教会が開発した蟲下しの効果で一気に駆除され、今では大陸には僅か残っていないとされており大きな被害も出ていない。


 

 ……なるほど。とりあえず放っておくと不味いってのは判ったけど――なんで駆除された寄生蟲が今になって現れてるんだ?

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