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第二十一話 回復魔法と教会の話

「は~い、お薬の依頼についての説明ですね! ……あ~だりぃ、エクス代わりにやっておいて」

「大丈夫か受付がこんなんで、このギルド?」

「うるせぇ、酒持って来い」

「だからチャーミー今仕事中……はぁ、もう仕方ないわね。でもあれだけ出しておいてよ」

「はい、頼んだ」


 エクスに言われてチャーミーがドカンっと分厚い本をカウンターに乗せた。

 

「なにこれ? 魔導書?」

「残念だけど違うわね。これから説明に使う本よ。でもヒール、正直薬の材料の採取は大変よ。別なのにしておいたら?」

「まあ、別なのも請けて一緒にこなすつもりではあるけど、でも薬の材料の調達なんかがそんなに大変なの?」


 正直、この手の依頼なんて初心者が最初にやる仕事ってイメージがあるけどな。ちょっと薬草を摘んでくるみたいな感覚だ。


「そうね、じゃあこの頁を先ず見てみて」

「うん? どれどれ?」


薬名:キレオトール

必要な材料

アロエルの葉……五枚

スズナ草……三束

ロズメルの蜜……小瓶一本分

etc



「……え、なにこれ? 薬一つにこんなに材料が必要なの?」

「そう、しかもその薬は一番必要な材料が少ないものよ。勿論その分報酬も安いけど」

「え~と、報酬はこっちのキレオトールで薬一つ分につき……五百オペ? は? なにこれ、手間の割に安すぎない?」

「そうね。しかも材料の判定基準が厳しくて、ちょっとでも質が悪いと教会が買い取ってはくれないの」

「……随分と割に合わない依頼だな~こっちの高めの報酬のは必要な材料が四十種って、しかもそれだけ集めて五千オペ? こんなの請ける人いるの?」

「一応何かのついでにって気持ちで請けて行く人は多いみたいだけどね」

「う~ぎもぢわる、それな、でも正直F級でもやりたがらないんだよ~参っちゃうよね~たく、おかげで教会の連中にも嫌味言われたりしてやってられないっての」


 なんかもう言動が色々滅茶苦茶だけど、気になるキーワードがあったな。


「教会から嫌味って、この依頼者のこと?」

「そう、一応教会からは月にこれぐらい集めるようにお願いされてるのよ。まあ、お願いと言っても半分強制みたいなものだけどね」

「それでお布施までしっかり回収していくんだから、ムカつく連中なの~」


 う~ん、なんか教会についてギルドはあまり良いイメージ持ってなさそうだな。


「だったらそんな依頼無視すればいいんじゃないの? 断るとか」

「それが出来れば苦労しないわ。でもね、薬の製造方法は教会だけが管理しているし、販売の権利だって教会が発行してるの。だから下手に教会を敵に回すと薬が手に入りにくくなったりしてね、仕方なしって感じかな」


 そういうことか。この世界には回復魔法がない。そうなると怪我を負った場合は治療には薬に頼らざるを得ない。


 でもその管理は教会が全て行っている。だから教会には下手に逆らえないってわけか。

 まあ、正直俺は薬なんていらないんだけど、でも他の人は違うだろうからね。


 でも、材料のノルマか……う~ん、だったら。


「じゃあとりあえずこの依頼は俺が全部受けていくよ。このコボルトのも西の大森林で何匹か見たし、ちょっと探ってみる」

「へ? これ全部? いや請けるのは構わないけど~F級でこの量は厳しいと思うよ~」


 チャーミーの口調が戻ってきたな。いや素があっちなら猫かぶってきたと言うべきか。

 まぁとにかく。


「まあ、任せておいてよ。特に薬の材料は結構自信あったりするからね」


 俺の言葉にふたりが顔を見合わせる。そしたらエクスがため息をついて、

「ま、仕方ないわね。成り行きではあるけど私もつきあ――」

「エクスさん、ちょっといいですか~?」


 エクスが俺の依頼について何か口にしたその時、隣の受付嬢が彼女を手招きする。


「うん? どうかした?」


 そしてエクスが話を聞きに行ったんだけど。


「え? アンデッドがまた!?」

「はい、それで駆除を出来れば――」


 何やら厄介事でも起きたのかな? とりあえず受付嬢にエクスが話を聞き、ふぅ、と息を吐いた後、俺の方へ戻ってきた。


「ごめん、ちょっと緊急依頼入っちゃって。そっちに向かわないといけなくなったの」

「そうなんだ、それはエクスだけで大丈夫なの?」

「うん、まあ何度か請けてるし、そもそも私、貴方より級は上なんだからむしろ心配なのは私の方よ。そっちは大丈夫?」

「う~ん、まあ西の大森林は俺も暫く篭ってたしね。問題ないと思う」

「そう、まあヒールは自分の身ぐらいは守れそうだしね。でもクーちゃんは狙われやすいから気をつけてね」

「ク~?」


 クーが肩の上に移動して小首をかしげた。どうもクーは自分の希少性をいまいち理解していないようだ。


 ただ、いちいち動作が愛らしいからエクスがモフりたさそうにムズムズしてる。

 別に触りたいなら構わないけど、クーが触らしてくれるかって問題はあるよね~。


「と、とにかくあまり無茶はしないで、特に森の奥は危険だからね。後コボルトの依頼は集落を見つけたら無理せず戻ってきて報告! ドン・コボルトなんかがいたらかなり厄介だから絶対に一人でなんとかしようとしちゃ駄目だからね!」

「う~ん、でもコボルトなんかは倒しちゃうかもしれないけど、その場合どうするの?」


 と、いうかドン・コボルトってなんだ?


「その時は討伐証明もってくればいいわよ。証明リストもそこの本棚にあるけど――」

 

 エクスが指をさした壁際の本棚に確かにそれっぽいのがあるな。


「まあ、コボルトなら証明は牙ね。どのコボルトでも特に尖った牙が二本あるから、それをセットで回収してくると討伐報酬が貰えるから」


 なるほどね。ちなみにデリシャスボアも同じく牙が討伐部位なんだとか。


「ところでドン・コボルトって?」

「コボルトのボスよ。滅多に現れないけどいたら他のコボルトよりも圧倒的に強いしCランク魔導士がいるパーティーぐらいでないと太刀打ち出来ないわ。だからもしいたら絶対に手は出さないでね」

「そうなんだ……判った肝に銘じておくよ」


 コボルトにもボスがいるんだな。で、そこまで話した後、エクスは自分の依頼を請けてギルドを後にした。どうやら他に依頼を請けた魔導師士と合流して目的地へ向かうらしい。


 さてと、それじゃあ俺も森へ行って、ちゃっちゃと依頼をこなしてこようかなっと。






◇◆◇

 

「ブモォオォオォオォオオ!」


 はい、斬撃トラップで十匹目のデリシャスボアもゲットと。こいつらすぐ突っ込んでくるから楽勝だよな~。


 で、今の俺のステータスはっと。



ステータス

名前:ヒール イシイ

性別:♂

年齢:18

ジョブ:スーパーヒーラー

レベル:8

HP:85/85

MP:3510/3870

腕力:38

体力:35

敏捷:42

魔導:3250


魔導スキル

□究極の回復魔法


物理スキル

□言語理解□診断□ナイフ投げ□ミートスライサー□隠蔽□短剣術□診断□疾風


称号

□完璧な回復師□中級短剣使い


装備品

□コボルトのナイフ

コボルトから手に入れたナイフ。元は冒険者が所持していたもの。切れ味は並。

□白衣

ヒールが地球で着ていた白衣。ただの白衣。防御力は皆無に近いが抗菌性が高い。

□体力向上の指輪(効果:小)

体力値が10%上乗せされる。

□敏捷向上の指輪(効果:小)

敏捷値が10%上乗せされる

□防壁の腕輪(効果:小)

正面に物理防御の障壁を展開。多少の攻撃は防いでくれる。


 


 こんな感じだな。相変わらずMPと魔導がよく伸びるけど、疾風という新スキルも覚えた。これがあると行動が速くなるようだね。


 そしてレベルアップした時の敏捷値の伸びも良くなった気がするよ。

 スキルだけじゃなくナイフを扱うようになったのも大きいのかもな~。


 よし、後はデリシャスボアを回復魔法とナイフで解体してっと。


 さて、問題はこれをどう持ち帰るかだけどね。一応薬の材料を採取するための簡易な袋はギルドが進呈してくれたけど、キュート曰く、狩りもするなら魔導のバッグか袋ぐらい持っておいたほうがいいとのこと。


 どうやらその手のは見た目以上の容量が入るタイプの魔導具らしく、ある程度依頼をこなせるようになった魔導士は、性能の差はあれど何かしら持ち歩くらしい。


 で~も、実はそれは俺には必要が無いんだよね~。何故か? その秘密は回復魔法にあり!


 さて、先ずはギルドから受け取った袋を広げます。

 そしてそこに解体した部位を入れます。回復魔法を掛けてお肉を分子レベルにまで回復します。

 はいこれで完了。これぞ回復魔法流収納術!


 ちなみに取り出す時はもとに戻る形で回復すればいい。楽勝だね。

 ちなみに分子レベルへの回復は別に袋の中でなくても出来るんだけど、外でやっちゃうと袋への回収ができないから持ち運べないんだよね~。


 だから袋の中に入れてから魔法を利用するってわけ。


 さてデリシャスボアを狩った後は、次は薬の材料だけど――これも本来なら似たような草花があったりして初心者どころか慣れた人でも間違うことがあるぐらいらしいんだけど――それも問題なし! だって俺には診断があるからね。


 そんなわけで、おっとこれは気付け薬に役立つ材料のメグミントだな。容量を間違うと爆発する危険があるちょっと怖いミントらしいけど、診断で見ても本物だし質もばっちり。

 

 よっし! これを採取して――回復魔法!

 はい、これで採取した直後からメグミントが回復。もうちょっとした養殖気分だね。これでギルドが教会に求められているノルマ分を全て採取っと。


 そう、俺が薬の材料集めを請けたのはずばりこの回復魔法があるからに他ならない。後は診断ね。診断は生物限定だけど、草花は生きているから問題なし。そして一度見つければ回復魔法でいくらでも再生可能だから量的にも問題なし!


 おかげでかなりの薬の材料が手に入ったんだぜ!


「よっし! 必要な分はこれで全てゲットだぜ!」

「クー♪ クー♪」

 

 うん、俺の成功をクーもたたえてくれてるよ。本当クーは俺の癒やしだなぁ。


 さてっと、これでデリシャスボアの依頼と薬の材料の調達は大体完了っと。後はコボルトの調査だけど――


「ち、畜生! この化け物、こっちに来るんじゃねぇよ!」


 うん? 何か森の奥の方から子供のものらしき声が聞こえてきたな――

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