婚約破棄されたので仕返しに王族追放を言い渡してやった
拙い文章ですがお付き合いお願い致します。
「貴様との婚約を破棄する!」
食堂で食事をしていた所に突然、"元"婚約者であるこの国の第一王子が庇護欲を唆るご令嬢の肩を抱き寄せながら他の貴族の子息と我が弟と一緒に現われ婚約破棄発言をした。
何も言わぬ私に王子とその取り巻き達はニヤニヤと勝ち誇った笑みを浮かべ、食堂に居合わせた生徒達はハラハラとしながら此方を見守る。
私は目をパチパチと瞬かせた後、「で?それが?」と一言言って食事を再開した。
ーこのヤギ肉ソテー最高!ここのシェフ引き抜けないかな〜。
王子と取り巻き達が何か喚き散らしているがそんなのお構いなく食べていたら食事の手を(物理的)に止められた、愚弟に。愚弟も取り巻き達同様に喚いている。
アリシアの物を隠したとか、アリシアを突き落として怪我させたとか、要は私がアリシアという女性を虐めたらしい。
勿論、私はそんな事をした覚えはない。第一、最近とある事情により全然学園に来ていないのだ、解せぬ。
ふと、食堂にかけてある時計を見てみるとそろそろ学園を出なくてはいけない時間だった。
ーこのままだと完璧遅刻だ。
ため息を吐くと更に王子以下略達が喚く。事態を収拾させないと無駄な時間を浪費しそうだと思い、意を決して立ち上がり、ニコリと笑みを浮かべて言った。
「貴方方のせいで私の大切な時間を使う訳にはいかないのでこの茶番を早々に終わらせましょうか」
言葉はそれ程大きな声ではなかったが食堂に響き、先程までの騒音が嘘のように食堂が静まり、皆微かに頬を染めていた。
「私が…えーと、あぁ、そうそう!そのアリシアって方を虐めていて今までは傷害沙汰にはならなかったが昨日の放課後に私がその方を階段から突き落として怪我を負わせたのでそんな女と婚約者でいてたまるかと思い今日のこの行動に出た…と言う事ですよね?」
惚けていた王子が我に返り「ああ、そうだ」と頷いた。
「そして、アリシアという方と婚約するという事ですか」
「そうだ!」
「私たち愛し合っているの!」
ーあ、隣にいるご令嬢がそのアリシアだったんだ。
「では、お二人にお聞きしますがもしも、お二人が平民に堕ちたとしても結婚し、愛し続ける事が出来ますか?」
この女一体何言ったんだ?という目をしながら二人は頷いた。
「そうですか、そうですか…。それならこれを見せても問題ないですよね!」
従者から渡された紙を周りに見えるように掲げる。
その紙の内容を見た瞬間、周りはザワザワと困惑の表情を浮かべ、王子は顔を真っ赤に染め怒りでプルプルと震え、アリシアは顔を真っ青に染め恐怖でプルプルと震えていた。
その紙はただの紙ではなく、国王陛下が直々に下した命令を書かれた王命書。《第一王子とそこのご令嬢アリシアの結婚を認め、王子は王位継承権を剥奪した上に王族を追放。ご令嬢アリシアも家から追放し、二人を平民に堕とす》といった内容が書かれていた。
「あはは〜、どうしたんですか?そんなに震えてしまって…ハッ⁉︎まさか嬉しすぎて震えているのですか⁉︎いやはや震える程結婚するのが嬉し」
「巫山戯るな!!」
テーブルの上にあった皿が床へと落ちて音を立てて割れた。
ー挑発に乗るなんて…本当に…くふ。
「第一王子の俺が…第1位王位継承権を持っているこの俺がどうし」
「くふふ、あは、あははは!!!」
耐え切れず笑い出してしまい「何が可笑しい!!」と元王子に怒鳴られた。
「何が…ふふ、可笑しい…かって?くふ。第一王位継承権をも…ふ、持っている俺?あははは…昔から勉強は出来てもバカだバカだと思っていましたがここまで阿呆だったとは…はは」
「だから何が可笑しいんだ!!」
バカにされて今にも私を殺しそうに睨み付ける元王子。
ーあー、本当に笑えてくる。
「そんな事も分からないんですか?あー、そう言えばバカだから分からないんですね、ごめんなさい」
憐れみの目で見ると更に怒りで顔が真っ赤になる。
「あはっ!では仕方がないので教えて差し上げます。王位継承権についてですが順位はどうやって決まっていると思いますか?」
「………世襲制じゃないのか」
ー耐えてる、耐えてる〜。
「他国だったらその制度だったでしょうね〜。ですが、この国では違います。まず、王位継承権保持者は現王の4親等内の人間全てに与えられます。そして、順位は継承者自身の評価によって決められています。ちなみに評価内容は日常生活、人格、人間関係、功績等により順位は決められていたんですよ、知ってましたか?」
ニコニコとしながら言うと元王子は目を見開き、そんなバカなっ⁉︎と言いたげな表情をしていたがそんなの無視して話を続ける。
「貴方の場合は勉強や剣術といった事はとても優秀でしたが、人格は傲慢で〜我が儘で〜、私生活で大切な従者達を蔑ろにし、人間関係はあまり良い噂を聞かない人とばかりと交流を持ち、外交はダメダメ過ぎて他国からの評価も最悪!その上、そこのアリシアって方と出会ってから彼女の貢ぐせいで今の王家は火の車。その結果がこの状況って訳です」
「お分かりになりました?」と視線を送るが元王子は先程とは逆に顔を真っ青に染めブツブツと何かを言っていた。
ーこれ絶対途中から聞いてないわ。
心底面倒になってきたので「失礼します」と一言入れてから立ち去ろうとする。歩き出すと周りの方がさっと道を開けてくれるので有難い。
「あ、そうそう」
言わなければいけない事を思い出し一度振り返る。
「元王子の…正確にはそこの元ご令嬢の取り巻きの方々も愚弟もただじゃ済まないと思っていて下さいね?」
元王子に憐れみの目を向けていた取り巻き達と愚弟は何を言われたか分からなくて呆然と此方を見ていたが言葉の意味を理解し、元王子同様に顔を真っ青にした。
「後、聞いてないと思いますが婚約の件について貴方がそこの元ご令嬢と頻繁に会い始めた半年前から既に破棄されていましたので」
ーーー
「皆様、遅れてしまって申し訳御座いませんでした」
一つの丸テーブルを囲ってお茶を楽しんでいた青年四人に頭を下げた。
ここは王宮内のとあるサロン。集まっているのは5カ国平和条約を結んだ各国の第1位王位継承者達。
「構いません。ですが貴女が遅刻するなんて珍しい」
北の国、第一王子ノース。
「どーせ面倒事に巻き込まれたんだろ」
南の国、第一王子サウス。
「サウス君その言葉遣いは女性に対してどうかと思うんだけど」
東の国、第三王子イースト。
「別にいいじゃないかな?それに今はプライベートなんだからミュリーもいつも通りで」
西の国、第一王子ウェスト。
「あはは〜、なんかごめんなさ〜い。後、サウスの言う通り巻き込まれていました〜」
中央の国、公爵令嬢ミュリー。
「で、聞いて下さいよ〜」
椅子に座り、お茶を飲みながら笑顔で愚痴り出す。
「今日どうしても聞きたい講義があったんで久々に学園に行って次いでに昼食を食べていたら突然うちのバカ王子が婚約破棄発言されたんですよ。その上、昨日バカ王子の想い人を階段から突き落としたとか濡れ衣着せられてさ…昨日はずっと王宮で仕事塗れになっていたのにだよ?ふ・ざ・け・る・なって話。お陰で今回遅刻」
途中から昨日の仕事の量を思い出し何故か笑顔から無表情に変わっていた。
ーうん、本当にあの仕事量はないわ〜。
「でも、丁度良かったので例の王命書を漸く使えましたよ〜」
「あの時の顔ときたら…ふふ」と呟き悦に浸る。
私の様子に四人は戦慄が走る。
「女ってこえー」「いや、この場合はミュリーに限りだと思うが…寧ろ、そう願いたい」「そこがミュリーちゃんらしくていいと…思うよ、うん」「でも、ミュリーがドえ…こんな性格じゃなきゃ今頃平和条約なんて結べなかったと思うけど」「「「確かに」」」
とコソコソ話してるが無視しよう、無視。
ーあ、このクッキーおいし〜。
***
その後、元王子と元ご令嬢は王命書通り書類上は夫婦になっているはずだが一緒に暮らしているのかは誰も知らない。
ただ、あの二人には心を入れ替えてくれる事を切に願うーーー
公爵令嬢ミュリー(17)
・中央の国第1位王位継承者。趣味は人を挑発したりして反応を楽しむ事。ドS。
王との関係は叔父と異母兄弟の姪、王子とは従兄弟。
(裏話)令嬢なのに剣術や魔法等の戦闘関連や商売関連や医学関連等他にも様々な事に手を出している。本人曰く何事も完璧出なければ気が済まないらしいが。
10歳の時に大抵の知識を覚えたので未だ見ぬ世界を見る為に2・3年ぐらい旅(家出)し、その時に周りの国と平和条約を結んだり、商売の幅を広げたり、国に様々な貢献をした。
バカ王子(17)
・中央の国第一王子。王位は最下位から数えた方が早い。
バカでグズ後短気。
国民を奴隷か何かだと思っていた模様。
男爵令嬢アリシア(16)
・権力に目が眩んだ尻軽ヒロイン。
北の国第一王子ノース(18)
・眼鏡。常識人。
南の国第一王子サウス(18)
・バカで短気。口は悪いがいい奴。
東の国第三王子イースト(15)
・可愛らしい男の子。女の子大好き。
西の国第一王子ウェスト(21)
・皆のまとめ役。お兄ちゃん的存在。
最後までお読み頂きありがとうございました!
設定が全く活かせなかったです…。なので、もし続編書けたら次はファンタジー全開の戦闘物を書けたらなぁ…なんて(笑