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0.白と黒


 ―――二つの人影があった。

 雨の中、街灯も民家の明かりも無い夜の郊外で、二人は何かを待っていた。

 


 一人は(しろ)―――全身を銀綾のローブで覆い、碧玉の如く輝くその眸の青以外、髪も肌も総てが純白の男だった。

 男はどこか中世的な顔立ちをし、骨格も華奢で頼りなげな体つきをしていたが、その手には、身の丈をはるかに越える巨大な凶器が握られていた。それは―――鎌。まるで生き物の如く蠢き、形状を変えていく生きた刃。

 男は一度生きた大鎌を撫でると微笑みながら飛び上がり、迫り来る波濤の陰を切り裂いた。

 耳を劈く奇声。そして墨汁のように淀んだ血がしぶく。

 その冷たい血の先には、また大きな暗闇があった。



 隣に佇むもう一人はその暗闇と同じ、いやもっと深い、(くろ)―――(しろ)の男とは対照的な青年だった。

 180cm弱ほどの背丈と、無駄なものだけが見事にそぎ落とされた戦闘員としての肉体。東洋人の血をうかがわせる、エキゾチックな風采。黒尽くめの服とは対照的に明るい肌の色。そして、狂気的な真紅の眸をした、さながら虎狼のような男であった。

 男は面倒くさそうに、降ってくる肉片を払いのけ、漆黒の和刀の柄に手をかけた。ただそれだけで背後の巨体が両断される。否、男を取り囲むようにしていた闇たちは、男が何もしていないにも拘らず、ことごとく肉塊になっていった。



 それは踊りであり祭であり宴の場であった。

 青年達は踊っていた。姿の見えない大きな影と。

 青年達は謡っていた。言葉無き叫びを持つモノたちと。

 青年達は愛しあっていた。自分達を殺しに来る意思あるものと。

 やがて――静寂が訪れる。

 隠れていた月が現れ、道を照らす。


 二人の狂者は、痕跡も残さず、既にそこから消え失せていた。



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