闘病履歴6
鬱病の女子大生が真華を逆恨みした。
若い女性は一度外に出ると、衆目に晒される。
とくに同性のチェックは厳しく、その視線の中には妬みや、恨みがましさ、言われなき憎悪といった陰性のものだけが含まれているのは間違いない事実と言えよう。
真華とて若い女性。
いつ、このような視線に晒されてもおかしくはないわけだ。
そして一人の鬱病を患った女子大生が真華に目を付けた。
その女子大生を仮にMとしよう。
彼女は服装も地味で、男にモテた試しは過去一切無い。
眼鏡を掛け、人目に付かないような行動様式を常とする陰性の女性。
ただ彼女には真華との共通点が一つだけある。
鬱病と兼ねて自己同一性障害を併発しているのだ。
彼女は真華と話しも交わさず、真華の自己同一性障害を見抜き、理由もなく、それを逆恨みしたのだ。
そしてMは真華を慎重に遠巻きにしながら観察し始めた。
そんな真華は同性にも好感を持たれる女性だ。
話しがざっくばらんで、サバサバしており、可愛い系の開放感溢れる真華には同性から見ても可愛らしさが窺え、文句なしに好かれている。
そして自分の持病たる自己同一性障害を議題に乗せ、面白おかしく脚色して話す才能も持ち合わせているわけだ。
その才能を細心の気配りを以って周囲に振り撒く真華は、人の恨みを買った試しはほとんどなく、そこに一つの油断があった。