闘病履歴54
それが今の狂った世の中なんだから仕方ないさと、拓郎君は言った。
真華が言う。
「その論理からすると、憑依のメカニズムは霊魂が人間の無意識を乗っ取るという事になるよね?」
拓郎君が頷く。
「そうだね。魂の本音という部分を乗っ取ってしまえば、潜在意識や表層意識は思いのままに制御出来るからね。逆に言えば、憑依して心を絶望に誘い、自殺させる事も簡単に出来ると思うんだ」
真華が言う。
「それじゃ例えば地縛霊が策略を弄して、いじめっ子に憑依して、標的を選び、その標的を虐め抜いて、その標的が絶望感に包まれたところで、その標的にも憑依すれば、容易く自殺させて、地縛霊は己の地縛を解くなんていう図式も成り立つわけよね?」
拓郎君が頷いた。
「そうだね」
真華が言う。
「それじゃ世の中の虐めや虐待、残忍な犯罪を犯しているのは、心霊的な存在という事に論理は展開して行くじゃない」
拓郎君が再度頷き言った。
「憑依という観点からすると、心霊的な心理学のメカニズムが大きな要因になっている事は間違いないよね」
真華が言う。
「人間は弱く簡単に憑依されるからね。でもそう考えると、人の生死とかも心霊心理学に操られている事になり何だか苛立つよね。今回の事のように生き霊を通して一人の人間を助命するならばともかく、地縛霊の都合で殺されたら、堪ったものじゃないよね」
拓郎君が言う。
「だからこうやって気功などを施し、無意識というかスピルチュアルな部分で生命力、胆力を上げて行くしかないんだよね。これもある種心の葛藤、心霊心理学のメカニズムとの戦いとなるわけだよ」
真華が言う。
「表層意識や潜在意識の心理学的メカニズムも複雑怪奇なのに、そこに心霊心理学なんていう突拍子もない奴が入って来たら収集つかなくなるじゃん?」
拓郎君が答えた。
「それが今の狂った世の中なんだから仕方ないさ」




