闘病履歴46
親の愛情は深いと思うんだと、黒は言った。
黒が言う。
「君が幼い頃、君は例えば公園とかに行って、両親にブランコを漕いで貰ったりしたと思うんだよね。とても楽しい思い出の中で、例えば君が遊んでいて、危ない事もすれば、両親は注意したり、叱ったりしたと思うんだ。それが言うならば普通の親の感覚であると思うんだよ」
白が黒の話しを進展させる意味合いで、説得する。
「君の両親はそんな愛し方しか出来ない普通の両親なんだよ。君が心の病になった後、どこで褒めればいいのか、どこで叱ればいいのかの、そのタイミングも分からないから掴めず、ただおろおろするばかりで、対処法が分からず、笑ってごまかし、沈黙してしまう、そんな状態が続いていると思うんだ」
第三の目が言葉を引き継いで行く。
「心病んだ子供に対する対処法のマニュアル本や知識は巷に溢れてはいるが、結局人それぞれの心が全く違うものであるのと同じく、マニュアルは様々なケースに即応出来るものではないと思うんだ。マニュアル本のマニュアル通りに君に接し、逆に君の病気が悪化するケースも勿論あるだろうし、君の両親は明らかに専門家ではないんだよ」
白が補足する。
「そうそう、だから醜態晒して、おろおろするのは仕方ない事であり、君を愛していないという事ではないと思うんだ」
黒が言う。
「長年子供を育てた親の情愛は文句なしに深いと思うんだよ」
白が続く。
「そうそう。棄てたわけでは無いのだし、文句なしに深いと思うんだよ。それが親の愛情だよね。うん、うん」




