闘病履歴44
体力勝負だからねと、拓郎君が言った。
拓郎君が言う。
「親の愛情にはぐれてしまった子供の心の傷は、簡単には癒えないんだよね」
真華が頷く。
「そこに親の愛情を再認識させるのは、本当に至難の業だよね」
拓郎君が腕を組み、言った。
「でも、世間体、精神病の子供を厄介払いしたいという葛藤や、卑劣卑怯とも言える現実逃避の姿勢などが確実に有っても、子を見放してしない親の愛というのは、それが金づくであろうとも、絶対にあるんだよ。助かる道はそれを再認識するしかないんだよ。絶対にね」
真華が言う。
「親の愛情を再認識して、そこからようやく世の中を客観的に見れる目が養えるからね。私もそうだったし」
拓郎君が頷き言った。
「だから、世の中の醜さを論う事よりも、ここでは何が何でもひたすら親の愛情を再認識させるしかないんだよ。絶対にね」
真華がしきりと頷き答えた。
「いつパニくるか分からないジェットコースターに乗りながら説得するようなものだよね。あの落下は慣れるものじゃないよね。死ぬ程怖いよ、本当に」
拓郎君が真華を見詰め言った。
「でも後遺症と言うか、病気になって倒れたりはしなくなったじゃないか?」
真華が頷いた。
「それが唯一救いだよね」
拓郎君が微笑み言った。
「体力勝負だからね」
真華が頷いた。
「そうだよね」




