闘病履歴39
戸惑い苦悩するM。
Mは思う。
自分の部屋だけが雄一自分に許された居場所、空間なのだ。
乱雑に積まれた書籍の間は細やかに掃除が行き届いている。
掃除もハウスクリーニングに依頼してなされているのだ。
つまり全て金づく、そこに両親の愛情の片鱗は無い。
愛憎一筋という言葉もMは知ってはいる。
世間には可愛さ余って憎さ百倍で、子供を叩く親がいる事もMは知っている。
だがそんな熱さ、自分の両親には望むべくもない。
病を発症して以来、叱られた事すら無い。
腫れ物を触るごとく異様な物を見る目付きをして、おどおどし、金だけ渡して、そそくさと逃げて行く事しかしない両親。
世間体に凝り固まった父親などは、仕事に託けて、逃げてばかりいる。
やはり信じられない。
自分は世間に於いても、家庭に於いても厄介者、ゴミ以下の存在なのだ。
生きる価値すら無いとつくづく思う。
それならば死ねばよいのだが、その決心も揺らいでしまった。
自分に最も相応しい無様な死に方は、投身自殺だとMは決めていたのだが、母親が悲しむ悪夢を見てその目論みが揺らいでしまったのだ。
母親の悲しむ意外な姿に、Mはひたすら戸惑い、苦悩している。




