闘病履歴35
自分を助ける為に本気で戦うんだよと、真華は言った。
真華が言う。
「自己同一性障害の人格の中にもう一人の人格が現れたと考えれば、それは私自身なのだから、助けるしか無いんだよね」
拓郎君が尋ねる。
「それはどういう意味?」
真華が答える。
「だから私のもう一人の分身が助けを求めているならば、それは私を助ける事になるのだから、助けるしかないじゃない」
拓郎君が首を傾げ言った。
「その論法からすると、世の中の人間は皆病んでいるし、その人達がやはり病んでいるマカロンに助けを求めて来たら、マカロンは自分の分身と見做し、苦悩を自分の事として、助けてやるという事になるじゃないか?」
真華が自嘲ぎみに微笑んでから言った。
「そんなのもうマザーテレサの域だけどさ。こういうケース、自分の苦悩だと解釈しないと、人間って本気になれないじゃない?」
拓郎君が頷いた。
「そうだよね。今回の事は他人の命の問題だけれども、運命的出会いで、自分の命が懸かっている局面に発展してしまっているし。正にこれは自分の事だよな。自分の命を助ける事が彼女の命を助ける事に結び付くしね。本気こくしかないものな」
真華が答える。
「そうそう。自分を助ける事が他人を助ける事に繋がるならば、私としても本望だしね」
拓郎君が言う。
「そうだよね。マザーテレサとかも、人を助けて己の心が豊かになり、それが己の魂の救済に繋がっていたのかもしれないしね。人を助けると言うのは己を助ける事なのかもしれないな…」
しばし沈黙した後真華が言う。
「まあいずれにしろ、今回のケースは私が生き霊に憑依されて、その生き霊の本体を説得して助ける形を取らないと、私が攻撃されて死んでしまうから、私自身を助ける為に、全力を注ぐしかないのだけれどもね」
拓郎君が尋ねる。
「まず自分を助ける事だから全力にならざるを得ないという事か?」
真華が頷いた。
「そうそう。だから何が何でもと言うか、理屈抜きに気合い入るんだよね。私死にたく無いしね」
「戦いだね。正に?」
真華が頷き答えた。
「自分とのね」




