闘病履歴24
実社会は障害者の心の美よりも劣っているか?
真華が言う。
「でもとりあえず社会生活を営める事が出来ている精神障害の人は、自分が社会の落伍者だと思っている人が大半じゃない。そんな人達に、あなたは己の心の美しさに自信を持つべきだと啓発するのは無理があるんじゃない」
拓郎君が間を置き答えを引き出す。
「それは社会の美しいとされている価値観を絶対のものとして盲信しているからこその劣等感から来る落伍者意識だと思うんだ。でもここで唱えている事柄は、社会の美しく機能的だとされているあらゆる価値観が全て汚いという断定をしている上に成り立っているんだ」
真華が首を傾げ質問する。
「捉らえ所の無い障害者の持つ美しい心よりも、実社会のあらゆる価値観が汚れていて劣っているという事?」
拓郎君が頷き言った。
「その通りだと思うんだ。強欲に則って、謀を策し、人が人の金を合法的に騙し取る事が物質的な栄華成功を得る処方箋となり、富を得る為ならば、美しい愛や友情、信頼関係は解釈を捩曲げられ、犠牲になっても仕方ないというしたたかさの盲信は、絶対的に無理があり、本能としてある心の美に反しているし、醜いという断定をここでは成しているんだよ」
真華が言う。
「障害者の持つ心の美しさは本来的に恥じるべきものではなく、理屈抜きに自信を持っていいという論法ね?」
拓郎君が頷いた。
「本来的な美しい愛や友情、信頼関係等を金銭絡み利害関係等で捩曲げた解釈をする社会は、障害者の持つシンプルで美しい心よりも遥かに汚れているという対比を紐解いているんだよ」




