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闘病履歴210
無惨な夢幻のごとく白日夢を見ながら、あくことのない死闘は繰り広げられて行く。
回り込み、少しずつ来た道程を戻る戦術を取る生き霊。
真華の領域に一旦死闘を誘い、それを分身達に見せる戦術を取りながら、ふと生き霊は感知した。
子供の死に神の遠吠えの拡がる先に、無数の死体がまるでリアルな映像のように見えるのだ。
それは無惨に横一列に並べられた無数の子供達の遺体であり、どの遺体も全身生傷だらけで黒ずんでおり、中には五体がバラバラになった遺体もある。
その死臭がまるで臭うかのような残忍な光景がダイレクトに脳裡に浮かぶ。
いたたまれない思いが涙をそそり、その涙目掛けて猫の霊魂が鋭利な爪の攻撃を仕掛け、激痛の後、生き霊たる犬は吹き飛び倒れ込んだが、悶絶する事は免れた。
のそりと生き霊は立ち上がり、何故このような白日夢のような光景が見えたのを考えるが、分からない。
夢幻とも言える不条理な、客観的でまるで他人事のような悲しみの思念が起爆剤となり、それがめくるめく憤怒に変わるのを生き霊は自覚し、猫の霊魂目掛けて全力で突進した。




