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闘病履歴21
悲しみを拭う術をMは知らなかった。
Mは考える。
無神経でアクの強い人間は精神障害にならない。
それはそのまま生きる意味での生命力したたかさとなり、生への執着心を形作る。
強欲を生きるバネとしてずる賢く立ち回る存在にとっては、この世程住み心地が良い場所は無いだろう。
彼らは所謂普通の生活を営めない者を無意識に見下す。
当然障害者もその例から漏れるものではない。
彼らは障害者等を本音の部分で疎外し、普通の感覚を共有している周囲の者達とは競争原理に則って激しい階級闘争を展開している。
集団虐めや虐待を仕掛け、或は仕掛けられ、そのストレスの中で足掻き、苦しみながら生きている。
だが精神障害者はそんなストレス耐性さえ一切なく、直ぐに壊れてしまう。
弱肉強食の世の中。
自分もこっぴどく虐められ、精神障害となり、生きる道を削がれてしまった。
暗く己の殻に閉じこもり、悲しみに暮れ、涙するが、その悲しみを拭う術をMは知らなかった。




