闘病履歴206
嫌だと言ったらと、生き霊が言った。
生き霊がのそりと入って来て反論する。
「皆病などを抱え…大変な思い…をして生きているのだし…人類という種が…自殺に向かっているとは…思えない…皆苦しみを分かち合い…愛を交換しながら生きて…いるじゃないか…違うのか?」
子供の霊魂が答える。
「そうだよ。僕がこうして助けて上げたから、君は助かり、遠吠えを以ってレミング自殺行に再び寄与する事が出来るじゃないか。それは正しく愛だと僕は思うよ」
生き霊が答える。
「我々は大勢の人間を殺す為に…遠吠えを成した…のではない…彼女とマカロンを助ける為に…成したのだ」
子供の霊魂が笑い言った。
「だからそれが人間の愛とやらの限界じゃないか。一方に愛を傾ければ、一方には愛はなくなる。その代表格が僕じゃないか。僕は親がちょっと目を離した隙に誘拐され虐殺されたのだから、親の愛なんてお粗末なものさ。所詮ね」
生き霊が否定する。
「不完全だからこそ…皆が互いを補う…それが愛ではないか…人間の優しさ…ではないか…愚かしくても皆懸命に生きようとして…いるんだ…だから…私は…彼女にも…マカロンにも死んで欲しくは……ないのだよ」
子供の霊魂が嘲笑い言った。
「意見の一致は永遠に見ないね。平行線のままだ。それよりも君はまた僕の助けた愛に応えて遠吠えをして貰うよ、いいね?」
生き霊が答える。
「嫌だと…言ったら?」




